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追憶の天使  作者: 小河 太郎
【二章】『よしと≒死神』
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38.「イヴ」


それじゃあ、答え合わせ。と、もはや、死神少女は口癖のように言うと


「死神の中で、裏切り者が現れたの。」


「裏切り者、ですか」


「それって赤芽じゃねぇのかよ?」


赤芽以外にも裏切り者と呼ぶべき死神がいると言うのか。


「死神番号にして三番目の死神。先代と共に行方不明だった。ミカエル様達は貴方達には伏せてはいたけれど、私の独断でこの場に置いて、話をさせて貰っている。」


独断かよ。いいのか。


「大丈夫、その為に元ラビエル様が居ない時を望んだわけだし。」


心を読みやがった。そんな能力はないだろ。


「それで、心優莉を、か。でもそんな心配いらねぇだろうぜ。今のあいつには、ラビエルの面影なんかこれっぽっちもねぇだろうから。」


幽界の時に感じたあの雰囲気がラビエルのものだったならば、今は皆無。ただの明るい無邪気な女子高生だ。


「立場上は同じ死神である先代と、その息子である貴方、優木 好翔に知られると面倒だと思ったから、ミカエル様はあの時に知らせなかっんだと思う。」


俺も含めてなのかよ。面倒なことなんてなに一つ起こるわけがないし。赤芽は地獄行きだし、俺には関係ないし。ミカエルさんも考え過ぎた。何を考えたのかは分からないが、考え過ぎた。


「三番目が裏切ったとは、一体どういうことなんですか?」


「言葉の意味そのまま。先代が死神としての役目を放棄したのが、今から二十年くらい前のことなのは、知っているかな。」


「あぁ、赤芽と始めて対面した時に、自分語りをし出した時に聞いたような気はするな。」


絆愛は、新鮮そうに訊いていた。

赤芽の話は俺から間接的に伝えたくらいだったからな。


「三番目が同じく死神としての役目を放棄してしまったのが、その五年ほど後、今から十五年前くらいだったかな。」


これまた、そこそこな年月だ。


「何だってまた。赤芽が唯一じゃなかったのかよ?」


「それはそうだけれど、死神としての役目を放棄して、()()()()()()()()()のが唯一先代のみだったけれど、三番目は違う。」


「違う?理由が違くとも赤芽だってあれは、死神に対しての、天使や神に対しての裏切り行為だろ?」


「それも否定はしないけれど、三番目の理由は、先代とは死神の役目をしなくなった理由が違う。」


死神少女は相変わらずの無機質な趣きで言う。


「死神三番目は、裏切った理由がない。——それが理由。」


理由がないのが、理由?

それは、言葉としてどうなんだろうか。

物事に、理由がないことなんか、あるのだろうか。


「死神三番目は、先代が()()()()()()感情を抱き、霊界から立ち去ったのならば、全くの反対。」


全くの反対。それが意味すること。


「喜怒哀楽以前に、それ以前に、感情そのものを失った。」


死神九番目、後の優木 赤芽が喜怒哀楽以上の感情を持ち、人間味を持ち合わせたのなら

死神三番目、そいつは、喜怒哀楽以前に死神にでも少なからずあった感情すら失くした、そういうことなのだとか。


「感情がない、それって、例えばどんな感じになってしまうのですか?」


「感情がない、それは何に対しても、何の感情も抱かなくなる。綺麗な花を見ても、綺麗なんて感じないし、足の小指をタンスの角にぶつけても痛いなんて思いわないし、人を殺しても、何とも思わない。」


機械のような。正にそんなナリだと言う。


「お前は、感情があるにはあるんだよな?表に出さねぇだけで」


「あるよ。さっきも言った通り。神様が設定した以上の感情は待ち合わせることは出来ないけれど。善悪の区別くらい付くし。」


「いまいち、死神のそれが分からねぇんだ。お前が今、どんな心境でいるのかが。」


表情にこそ現れないその微かな感情を読み取ることなんか、メンタリストでも至難の技、或いは、不可能だろう。


「死神に関しては、タンスの角に小指ぶつけたくらいじゃ痛くもないのだけど。単なる例え。」


そこは、説明されなくともわかるわ。察せるわ。


「好翔先輩!でしたらこの死神ちゃんに何か感情に関する質問をしてみてはいかがでしょうか?」


死神ちゃんって……。

感情に関する質問か。警察やらカウンセラーでもないが、まぁ質問して損はないか。


「じゃあ、簡単なのから。俺と絆愛を見て、第一印象として、どう感じた。とかか?」


「目付きの悪い、髪がボサボサの黒い人と、背丈が小さい、髪がクルクルのピンクの人。」


容姿まんまかい!

まぁ、第一印象だし。赤紫のパーカー着てた頃だったら、赤紫の人になるし、絆愛もカーディガンかセーターの色がもしも黒だったら黒い人だったんだろう。


横で、小さくないです。髪の毛はそういうヘアアレンジなんです。とボソボソと呟く絆愛がいた。

これに関しては本当、誰にでも反論したがるのな。

(事実、小さい。事実、天然のくせ毛。)


「んじゃぁ〜、目の前に急病で倒れている人がいたら?」


「どうしました?死にそうなの?大丈夫、私がしっかりとあの世に送ってあげるから。安心して」


助けて差し上げろ。せめて救急車を呼んで差し上げろ。


こればかりは、文化の違い、か。(文化なのか?)

ただ、人を気にかけてやることくらいは出来るよう、だ?


「さっき、俺と戦ってみて、どう感じた?」


「最初から手、凍らされちゃってるのに、完全に劣勢なのに、防御頑張ってるな、と。」


結果的に思いやりのかけらもなかった!


「きっと、死神さんって言うのは、皆さん人並みに感情はあっても、多分、それを上手く伝えることの出来ないような方達なのではないでしょうか?」


「成る程な。内心、そういう風に思ってはいても、それを上手く表現出来なければ、それを自分でも上手くその感情を把握出来ていないと言うのか。クラスに一人はいるよな。」


絆愛の考察は一理あるかもしれなかった。

初対面時に食べていたレモン氷についても、死神少女は美味しい、とは言っていた。

けれど、食リポをする芸能人のように口達者には表現しなかった。

自分以外の事柄、三番目の事情についてや、赤芽については語ることが出来ても、自分自身、自分語りは、上手く表現することが出来ないのだろう。


それを引っくるめて、死神は必要以上に感情を持たない、と。赤芽や心優莉や、それこそ死神少女自身、そう述べていたのかもしれない。


「死神は天使と違い、死人の魂をただ霊界に送るという役割しかないために、私情は持たせるだけ仕事に支障であり死神には、そこが欠けている、と前にどこかの天使様が仰っていた。」


「大体、納得。にしても、たった十人しかいない死神から合わせて二人も感受性豊かな奴と動く人形みたいな奴が出てきたんだから、神も、結構、適当に作りやがったんじゃねぇのか……?」


「神様って、そういうお方だったからね。人間と天使の成り立ち、世界の成り立ちを創造して、死神もってなった時に再優先順位として、死神は最後に創造されたようで、大分手抜きになったそう。」


……おい。神。最後の最後に手を抜くなよ。

創造主っつっても、元凶ももはや、神だよな。


「男性型にするか女性型にするか、大人びているか、子供っぽいか、声は高いか低いか、とかは天使も死神もクジ引きで決めてたらしいし。」


適当すぎだろ!まじか。


「子供って入れる必要あったのか?天使とか死神って生み出された時の姿から一生成長しねぇんだろ?だったら絶対に大人だけでいい気がするのだが。」


「人間に接触する場合、子供の方がすんなり受け入れられる、というメリットを考慮してのことらしい。第五、第六階級の天使は、よく人間に混じっていたりもするし、死神だって必ずしも、姿を見られない訳もないわけだし。」


天使やら、死神の伝承がある程だしな。

まぁ、それなら納得、か……。

赤芽が、赤芽として完成しなければ、俺も生まれなかったとは言え、天使らも苦労はしなかっただろうな。


「それで今のお前の容姿、ってわけだな。」


「うん。容姿が男の人でも結局中身に何ら変わりはないのだから、姿なんて、中の黄身がこぼれ落ちないための殻でしかない。」


「その殻が割れちまって中身が飛び出しちまったのが、赤芽だったんだな。」


「死神三番目は、殻が割れたのではなくて、中身だけが、腐乱した卵。そう考えると分かりやすいのかな。」


中身だけが腐って、そして失くなった。


「どうしてそんなことになってしまったんですか?」


「生まれたばかりの私には、知るよしもない話。三番目の印象なんて、どの死神に訊いても帰ってくる言葉は、()()()()()()としか。」


ただでさえ変わっている死神に変わっている。そう言われる程なのだから、それ程だったのだろう。


「なぁ、お前、誕生日いつだ?生まれたばかりって言ったろ?」


「好翔先輩、これまた唐突ですね」


「確か、十二月二十四日だっかな。」


生まれて、約九ヶ月か。一歳にも満たないとは。


「よし、したらお前、イヴな。クリスマスイヴに生まれたから。」


「イヴ?それって」


無表情でも、明らかに頭に?を浮かべているような、そんな感じだった。


「お前の名前だよ。これから呼んで行くのに不便だろ?赤芽も三番目もいるんだ。赤芽含めて全部合わせりゃ十一もいるんだろ?」


「なんて、安易な名前の付け方なんですか……!可愛いですけれど。」


十二月二十四日とか、名付けやすい誕生日で良かった。

雪を操れるのも、それ関連なのだろうか。

まぁ、いずれ、答え合わせをしてくれるだろう。


「ラビエル・セラニエム様並みのネーミングセンスだね。」


俺の母さんをディスりやがった。そして、慕っているはずの先代を、またしてもディスりやがった。


「シンプルですよね!」


「お前も、言うの?」


「わかった。それじゃあ、私は今日からイヴ。イヴちゃんって呼んでね。」


何故か満更でもなさそうに。

しかも、ちゃん呼び希望かよ。


「イヴちゃんですね!」


流石にもう、敵、という判断の方が無いよな。

気を楽にしても良さそうだ。


「それで、イヴ。俺達の力を試した理由については、まだ訊いてないのだけど」


「イヴちゃんって呼んで。」


「い、イヴ、ちゃん。」


何故、ちゃん呼びにこだわる。


「貴方達にも、三番目の捜索と、回収に協力して欲しい。」


居場所すら掴めていないのか。


「俺達が何か出来るのか? そんなもん、天使に任せとけきゃ良いだろう。」


「天使様達も忙しいからね。そこまで手が回らないの。」


責任者、とかいうものがないのかよ。天使らは。


「三番目は、先代と違って、天使に全く関係性のない、人間でさえ殺し歩いているの。そして最近、日本に渡ったという。これ以上被害が深刻にならないうちに、連れ戻さないといけないわけで、日本には好翔と絆愛がいる、から。」


感情がない故に、無慈悲な惨殺。正に死神。


尚更だろ天使……‼︎ さっさと回収しろ‼︎

しかも、ちゃっかり呼び捨てだし。


「わかった。やってやるよ。三番目を何とか出来た時は、何か礼でも出るんだろうな。」


「イヴとお揃いの黒いマフラーをプレゼントする。」


いらねぇ……。

てか、一人称変わってやがる。


「もしくは、イヴとお揃いの耳あてでも手袋でも可。」


いや、いらねぇ……。



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