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追憶の天使  作者: 小河 太郎
【一章】『プロローグ』
1/47

00.「何れ菖蒲か杜若」*

小説初投稿作品になります!

ご指摘やアドバイス等々、感想を頂ければ今後の小説活動の参考になりますので、一言でも添えて頂ければれば、幸いです!

ちなみに、*このマークが、タイトル横にありましたら、挿絵ありの内容となっておりますので、よろしくお願いします。


「ねぇ、好翔(よしと)。神様っていると思う?」


「何だよ唐突に」


「質問の答え!」



——00.◆



俺の隣にいる彼女は、唐突に、突然にそんな突拍子もないことを口にした。


「俺は神とか、そういう類は信じねぇタチだからな」


俺の返答に彼女は、つまらないなぁと、息をするように言った。

先程から彼女、とは言ってはいるが、この場合の彼女とは、三人称視点での彼女なわけで、誤解しないでもらいたい。

単なる幼馴染だ。


「心優莉は信じてんのかよ?」


深鈴(みすず) 心優莉(みゆり)、それが彼女の名前だ。

一見すれば、清楚な名前だが、清楚とは無縁である。

かと言って、不潔というわけでもなく、(一応女子なわけだし)やたら前向きで、明るいような能天気な奴、というわけだ。


「私はいて欲しいな〜って感じかな?

いないって決めつけちゃう方が面白くないじゃない」


「ただの願望じゃんかよ」


「結論はね」


こんな、悩みとか苦悩とか、全く皆無であろう心優莉に、神様にも縋りたいような、そんなことでもあるのだろうか?

俺は問う。


「別に、神様に助けて欲しいってわけじゃないのだけれど、いないよりは、いて欲しいでしょ」


「本当に願望でしかないのな」


まぁね、と、心優莉は無邪気な笑みを浮かべると、俺のほんの少し先を行き、歩道と河川敷を仕切る、膝くらいまでの低いコンクリート塀をバランスよく歩き出した。

どこかの体操選手、曲芸師にでもなるのか、コイツは。


「臆病の神降ろしって言葉があるでしょう?人々は、誰だって神様に縋りたいようなこともあるってことだよ!」


「お前からそんな言葉を聞くとは思わなかっな」


それと、と、心優莉はボソッと言うと、その足を止め、俺が追いつくのを待っているように、狭い塀の上で、爪先を器用に揃え、後ろで手を組み、背を向けていた。


俺は、追いつき、そして追い越した。

今度は俺の背後にいる心優莉が言った。


「——それじゃあさ、天使って信じる?」


俺は、立ち止まり、首から上だけを振り向かせた。


「神も信じてねぇような俺だぜ?

答えはさっきと変わらねぇよ。神がいない以上、天使の在否なんか雀の涙くらいの可能性だろ。」


川辺に咲く、菖蒲(しょうじ)の花を揺らすように、風が優しく吹きつけると、彼女の長い髪をそっと(なび)かせた。

——どことなく

今日、この時ばかりの心優莉は、少しばかり雰囲気が違うような、そんな気がした。


「ふふ、そっか」


それもそうだね、と、塀から飛び降り、両足で地面に着地すると、再び心優莉は俺の横に並んだ。


楽しそうな笑顔を浮かべていた。


「普通は、男の人が道路側に立つものだよ?」


「お前が、自分から回り込んだんだろ。」


「それもそうだ!」


本当、彼女はいつも楽しそうにしている。

こんな、いつもといつまでも変わらないはずの日常の中を、毎日が初めて見る光景かのように、彼女は、心優莉は、とても楽しそうにしている。


五月初旬にしては、やや肌寒い帰り道。

段々と長くなりつつある日も、この時間になると、殆ど沈みかけている。雲に隠れ、この世界の裏側へと、沈んでいく、昇っていく。

俺と心優莉は、今日も変わらずにその道を歩いているのだ。

学校に行く時、家に帰る時、飽きるほどに慣れ親しんだこんな道を、

俺は当然のように何にも思わない。

心優莉は、何を思っているのだろうか。

少なくとも、何か楽しいことを考えているのだろうな。


この月、五月のちょうど下旬に差し掛かるくらいだろうか。

俺は、俺達のこんな日常は、終わり始まることになるのは、そんな頃だっただろうか。


しかし、そんなことを、俺は勿論、心優莉もまだ、知らなかったし、知るよしはなかった。


それは、俺の生涯にも渡り、未来永劫、引き剥がされることはない、業。

一難去ってもまた一難と、容赦なく、俺達の前に立ちはだかることになる。


神がいるならば、呪ってやろう。

天使がいるのならば、憎んでやろう。

こんな俺の、優木(ゆうき)好翔(よしと)の、どうしようもなく、どうしようもない、そんな運命を与えた奴らを。


「——ねぇ、好翔」


心優莉のその笑顔が、そんな笑い声が、そんな優しい声が、俺にとっては唯一無二の、——そんな存在だったのだ。


★表紙↓

挿絵(By みてみん)

一章プロローグ、読んで頂き誠にありがとうございます。まだまだ文法や表現の仕方など未熟であり勉強中の者ですが、温かい目で見てもらえれば嬉しいです!

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