四十二話
エレクト本部に現れたNon NAMEを出迎えたのは尋常ではない数のエレクト隊員だった。「数は未知数。自力で道を切り開け!」
兼憲の怒鳴り声を合図に一同、人の壁へ突進する。待ちかまえる鬼の力をまとったエレクト隊員。Non NAMEは止まる事なく刃を交える。
次々と倒れていくエレクト隊員。
Non NAMEは人を踏み越えて進んでいく。
しかし、倒した傍からエレクト隊員は起き上がる。
あっという間にNon NAMEはエレクト隊員に包囲されてしまった。
状況はどう見ても絶望的。そんななかでもNon NAMEは微笑んでいた。
絶望したからではない。楽しいからでもない。自然と微笑んでいるのだ。
「少し本気を出させてもらうわ」
車イスではなく、二足歩行をするように少し浮遊しながら進んでいた友理奈が、高く飛び上がり、エレクトとNon NAMEの上空で停止する。
「咲き誇れ」
大声で告げると同時に、持っていたペンを地上に向かって投げる。
放たれたペンは形を変えていき、槍の形となって地面に突き刺さった。
刹那。
辺りに満ちていた鬼の殺気が一瞬にして消え、エレクトとNon NAMEの足元に白百合が幾輪も咲き誇っていた。
「・・・きれい」
「何と美しい白百合・・・」
ミサと七瀬の口から感嘆の声が漏れる。
何かに操られている様子だったエレクト隊員たちも我に返って、口々に感動の声を上げている。
そして、目をキラキラと輝かせながら次々と気絶していった。
間もなく、Non NAMEを包囲していたエレクト隊員たちは全員地面に倒れこんだ。
それを上空から確認すると、友理奈は地上へと降りてきた。
「友理奈さん、今のは?」
兼憲と九鬼を除く全員が拓と同じ疑問を抱いて友理奈を見つめていた。
「あれは『神性力』という力を用いた技よ」
聞き覚えのない力だった。
今までに兼憲たちも使っていたのかもしれないが、少なくとも今の拓たちには使用できない力であろう。
「かつてNon NAMEが最強を誇っていた時代以前、Non NAMEの武器は単なる神の加護を得た道具だけじゃなかったの。目、手、声、人間が元々持っているあらゆるモノに神の力を乗せて人知を超えた力を行使することが出来たの。さっき使ったのは声に神の力を乗せて放つ『神声力』。まぁ、昔の力の残り火よ」
白百合によって視界にいる全てのエレクトが制圧された。
「・・・先に進むぞ」
兼憲の合図でNon NAMEは再び前進する。
行く先々にもゾンビのようなエレクトが待ち構えていたが、拓たちが気絶させて足を止め、とどめを兼憲と友理奈でさす。
「仮説通りね。『神性力』なら鬼の力を打ち消せる」
幾人ものエレクトの壁を乗り越えて、Non NAMEは遂にエレクト本部の中枢たる大扉の前に辿り着いた。




