四十一話
希望はない。絶望の壁が幾重にも目の前にある状況。
それでも、その壁を壊して前に進むという一つの意志を持ち、団結することが今は最も重要である。
「Non NAMEとエレクトの力バランスは完全に逆転した。今まではNon NAMEが神の加護を盾にして絶対的優位を保っていたが、数でいえば圧倒的劣勢だった。エレクトが神の加護と同等以上の力を身につけた今、圧倒的大多数にこの少数で挑むのはあまりにも無謀。勝利は絶望的だ」
「状況を分析したところで勝機は見えないでしょう」
「現状把握は確かに重要ですが、今この状況ではすればするほど・・・」
精神論という言葉がある。
確かに「想い」を武器にするNon NAMEにとって、気持ち次第というのは的を射ている。
だが、「想い」が強ければ解決するなんてことも無い。一つの意志で団結したとしても、次の一手がとなる妙案が浮かぶことなく議論は続く。
そんなNon NAME実行部隊たちに助け舟を出したのは、かつて副長として第一線で活躍していた友理奈だった。
「守がNon NAMEのリーダーだった頃。たった三人だけだったNon NAME実行部隊は、いわば最強最弱だった。なんでだと思う?」
突然の問いに、拓たちはこの絶望的な現状と何か関係があるのか疑問に思った。
「最強……最弱……?」
「そう、最強最弱。ヒント。そうだなぁ……。『悪魔がいて、天使がいる。同様に天使がいて、悪魔がいる』ってところかな」
ヒントにより一同、友理奈が何を伝えようとしているのか分かった。
「かつてのリーダー、守の力は鬼の力。闇を持っていたから最弱だった。事実、エレクトに堕ちた訳だし。でも、守は紛れもなくNon NAMEのリーダー、光の象徴だった。心の内に存在した闇を支配するほどの光がNon NAMEにあった。故に最強」
「そう。そして、忘れちゃいけないのが最強の三柱のうち二柱が今のNon NAMEにある。それだけじゃなく、三人を支えていた桜井さんや新しく加入してくれたNon NAMEメンバーもいる」
作戦司令室、全員の眼差しの先で友理奈は続けた。
「兼憲は真面目すぎ。あの頃を思い出して、久々にやりましょ。突撃というものを」
友理奈の言葉を合図に、作戦司令室を優しくも鋭い輝きが包み込む。
一堂がその眩しさに目を閉じる。
輝きが落ち着くと、そこにはかつて最強のNon NAMEを率いた副長軍服を身に纏った友理奈がいた。
「……私も付き合うわ!」
拓は凛としたその姿に見惚れてしまった。
「正気か、白百合」
「ええ、正気よ。金」
兼憲と友理奈が同時に微笑む。それだけで作戦司令室の雰囲気は一気に明るくなった。
「私たちも同行しよう。邪悪な闇にこの国を任せることは出来ん」
兼憲は七瀬と九鬼に頷くと、作戦司令室に響き渡るよう一拍、柏手を打った。
「私は一生するまいと思っていた命令を、いま下そう。」
深呼吸。
「拓、凛、御坂。悠。白百合。七瀬、九鬼。ただ前に進むことだけを考えよ。他は何も考えるな。進め。」
「エレクト本部。皇国神皇衛藤守の元へ、突撃!」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
高らかな応答と共に、Non NAMEは作戦司令室から姿を消した。




