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四十話

まずは遥が戦っていた場所へと二人は向かった。

手遅れだと分かっていながら辿り着いた戦場は静まりかえっていた。

「兼憲。遥は一体、どこへ行ったのでしょうか」

薄々分かっている。だが、目の前の状況を受け入れたくがない為の言葉だ。

それは兼憲も同様であり、拓の問いに答える事はない。

「次……行くぞ」

次に兼憲の命令を無視して戦い続けた仁と結衣の戦場へと向かったが、戦いの痕跡が残っているだけで、二人の姿はない。

「仁と結衣までエレクトに敗北して連行されたというのですか?」

「……これが現実だ」

二人はその場で立ち尽くすことしかできなかった。

そんな二人を我に返らせたのは、本部からの通信だった。

「兼憲!拓!エレクトから通信だ。すぐに戻ってこい!」

「……了解」「……了解です」

 本部の作戦司令室に戻ると、スクリーンに皇国神皇、衛藤守が映し出されていた。

「おぉ。金と拓くん。お帰りなさい。これで全員揃ったかな」

桜井、友理奈、凛、御坂、悠、七瀬、九鬼。そして、医務室で処置を受けていたミサ。全員が口を固く結んで、スクリーンを睨みつけていた。

「それでは。今回の件についてお話しよう。この度、エレクトは民衆指導の任務従事中に妨害を行なったNon NAME四名を逮捕、エレクト本部に連行した」

四名。おかしい。

戦闘で連れ去られたのは遥、仁、そして結衣の三人。

作戦司令室にいた皆がここで初めて染やんがいない事に気がついた。

「おい!染やんはどこへ行った?桜井」

「済まねぇ、分からねぇ。ずっと作戦司令室にいたはずだが……いつの間にか」

「友理奈さんは?」

「ごめん、私も分からない」

兼憲の慌てる様子を守はスクリーンの向こう側で嘲笑っていた。

「詳細を教えて進ぜよう。雅称『遥』こと本名『齋藤遥香』、雅称『仁』こと本名『宇野仁』、雅称『結衣』こと本名『藤城結衣』。以上三名はエレクトとの戦闘の末、敗北し娯楽禁止令違反により逮捕。雅称『染やん』こと本名『染谷健介』。上一名は無条件降伏により投降という形で身柄確保。同令違反で一時逮捕したが、即時釈放した」

誰もが驚きの表情で守の言葉を聞いていた。

「裏切り……だとぉ?……どうしてだ、染やん!」

静まりかえった作戦司令室に兼憲の怒りの叫びが響く。

その問いの答えを知っているのは、スクリーンの向こう、守の背後で微笑んでいる染やんだけだ。

「続けよう。現在、勾留中の三名は今後尋問の末、裁判にかけられる。内乱罪が適用されるだろうから極刑は免れない。行われる裁判は、刑執行の形をどうするか決める為の茶番だろうさ。」

極刑。その言葉を聞いて兼憲は膝から崩れ落ちた。

言葉の重みからそれが重大であることは拓たちにも容易に理解できたが、具体的にどの様なものなのかは分からなかった。

「以上だ。判決が決まり次第、再び連絡する。お前たちに出来ることはただ待つのみだ」

不敵な笑みと共に通信が切れ、スクリーンが暗転する。

「極刑……とは一体……」

かつての拓ならば、黙っていることしかできなかっただろう。しかし、黙っていても囚われたNon NAMEメンバーを救えるわけではない。

今は少しでも疑問を解消して、前進することが重要だ。

「日本皇国政府及び四條家が定めている極刑とは、つまり死刑だ。執行法としては安楽なものから残虐なものまで様々。だが、私たちNon NAME実行部隊にとってはどのような形であれ終身拷問刑と同義だ……っ」

兼憲が何を言っているのか、拓たち新参五人は理解できなかった。

「兼憲。今更隠しても仕方がない。……私から説明するわ」

兼憲に代わって友理奈がした説明は、とてもではないがすぐに受け入れられることではない、と同時に受け入れなくてはならない事だった。

「私たち神の加護を受けたNon NAME実行部隊は、不老不死なの。銃弾や斬撃で傷つき、痛みを感じる事はあっても決して死ぬ事は叶わない。極刑、死ぬまで刑を執行されることは即ち……」

その事実には同じく神の加護を受けている七瀬と九鬼も驚いた。

「そんな制約があったとは……」

「とても信じられぬ」

ここで初めて兼憲の言っていた事、Non NAME実行部隊にとって極刑は終身拷問刑という意味を理解した。

「死刑になれば……」

「死の痛みを、苦しみを幾度となく受け続ける事になる……」

拓たちはしばらく黙っていることしかできなかった。

そこに真実を伝えられていなかった事に対する怒りは皆無であり、皆エレクトに囚われている三人のことを思っていた。

「助けに……行きましょう!」

しばらくして拓が沈黙を破った。

誰もが言いたくて、それでもいうことが叶わなかったことを代弁した。

「……あぁ。言われなくともそのつもりだ……」

影が差していた兼憲の瞳に光が宿る。

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