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三十二話

無血戦争。Non NAMEの絶対優位のおかげで悲劇の日以来、Non NAMEとエレクトの戦争において血が流れることは決してなかった。

爆発の収まったその場所に立っているエレクト隊員は皆無。自らの刃でほぼ壊滅した。大勢に守られるように囲まれていたはずの六義の姿を拓と凛が捉えられる。

両者の間にあるのは、まさに血の海。転がるエレクト隊員は命を失い、人の形を留めていない。形容するならば、それは肉塊。

広がっている光景に六義たち残ったエレクトは何も出来ずにただ呆然とその場に存在していた。

「……桜井さん。友理奈さん。今回の戦闘映像はリアルタイムで一般部隊に公開されていますか?」

こんな状況の中、拓は多くの常人ならば考えないであろうことを考えていた。

亡くなったエレクト隊員の事ではなく、ただ見ていただけのNon NAMEの一般部隊の人達の事を。

「……ああ。だが、エレクトが爆発に巻き込まれる映像は一般には流れていない。お前らが謎の武器を弾いた所で友理奈がこの可能性を予想して止める事が出来た。ただ……」

「ただ、何ですか。何があったんですか?」

インカムが沈黙する。

「答えて下さい、桜井さん。」

「ああ、すまない。後方部隊と実行部隊が見ている作戦司令室のモニターは切る訳にはいかなかったからな。俺と友理奈さん、仁、染やん、御坂は全く問題なかったんだが、他が……。流石にミンチはキツかったみたいだ。」

再びインカムが沈黙する。

「申し訳ありませんでした。」

遥が謝罪の言葉を口にする。

四人は自らが犯した過ちを認め、ただただ謝る事しか出来ない。その謝罪は一体誰に向けられているものなのか。聞いている者達はもちろん、口にしている本人たちも分からなかった。

Non NAMEの四人が無表情でうつむいていると、上空高くから感じた事のないほどの殺気を感じた。

「諸君が謝罪するようなことは何も無い。全ては政府、いや十氏家と皇国神皇の責任だ。」

インカムからの声の主、兼憲はいつの間にか六義たちエレクトと拓たちNon NAMEの間に立っていた。

「おい!十氏家。どうせ見ているのだろ?私は十氏家の一角、八重だ。答えろ!」

風の音しか聞こえなかった地に兼憲の声が響く。しばらくの静けさの後、機械のような冷たい声が聞こえてきた。

「これはこれは、八重家。久しいですね。」

「二三か。二度と声を聞きたくなかったよ…。質問に答えろ。回答次第ではこちらも行動せざるを得なくなる。十氏家は今回の戦闘で何をした?」

「おほほ。くわばらくわばら。あなたのその高貴な名に免じて仕方なく答えて差し上げましょう。十氏家は見ていただけ。エレクトの新兵器実験ですよ。」

やはりあれは新兵器だったのか。拓と凛は納得した。

二人がエレクトの武器を全て把握していないのは至極当然のことではあり、今回のように対応に失敗することがあってもおかしく無い。

しかし、副リーダーである遥や古参である結衣が既存の武器に対して、揃って対応を誤るとは考えにくい。

それがいくら混乱した現場だったとしても。

未知のもの相手ならば、遥や結衣がとっさの判断を誤ってしまってしまうこともあるかもしれない。分からないのだから。

政府の十氏家と兼憲のやり取りは続く。

「新兵器がどれほどの威力なのか、もちろん把握していた訳だよな。今回のこの状況も想定内だったという事だな?」

「愚問。当たり前のことをわざわざ聞かないでくださいよ。時速千メートルを超える速さで飛んでくる、五センチほどのものを目を閉じたまま切ってしまうようなあなた方が未確認の武器を切って処理することなく、打ち返してくることだって想定内ですよ。それでエレクト共が死のうが・・・だからどうした、といった感じですよ。」

最後に冷たく言い放たれた言葉が、今まで感情を抑えていた兼憲の理性のたがを外した。

「十氏家!楽に気絶いけると思うなよ・・・。遥!」

次の瞬間、Non NAMEは血の海広がる地から消えていた。

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