二十九話
日本のある場所。円卓の部屋に十人の老若男女あり。前回の円卓会議とは違い、三栖家、六義家を除く各家に従者がいない。
「臨時円卓会議にお集まりいただき誠にありがとうございます。今回の臨時会議では三栖様と六義家から急ぎの話があるそうです。それでは開会します。」
二三の言葉を合図に部屋を拍手が包み込む。拍手が収まると三栖と六義が起立した。
「今回の会議は、エレクトが開発した新兵器の実戦実験許可を頂く為、その説明の為に召集致した。新兵器の細かい説明は六義よりある。」
「はい。政府軍エレクト大将の六義が三栖様に代わり説明させて頂きます。今回開発した新兵器は簡単に言うと爆弾です。今までエレクトの白兵武器は銃だけでしたが、敵であるNon NAMEの武器で銃弾は簡単に防がれてしまいます。そこでNon NAMEを圧倒する武器が必要だと我々は考えました。過去の戦闘記録を考察して、Non NAMEは爆発系の攻撃に弱いという仮説を立て、隊員が全員所持出来る上、簡単に扱え、かつ十二分な威力を持つ爆弾の開発に取り組みました。そして、遂に理想を全て実現した爆弾が完成しました。」
円卓の部屋に無機質な拍手の音が聞こえる。一と二三は無表情のまま微動だにせず。七瀬、九鬼は六義を睨みつけている。六義は構わず続けた。
「爆弾の重さは約五百グラム。事前実験だと有効範囲は半径五メートル。有効範囲のもの全てを灰に帰すほどの威力です。これが実用されれば間違いなくNon NAME根絶に大きく役立ちます。実戦実験許可を。」
六義は深々と頭を下げると席に着いた。
「六義どの、ありがとうございました。各家質問ありますか。」
真っ先に手を挙げたのは丸々太った中年男性だった。
「五明さま、どうぞ。」
「その新兵器とやら、一つあたりの製造費はいくらだ?エレクト全員に装備させたらいくらかかかる。」
五明の質問には六義ではなく三栖が答えた。後ろに立っている従者に耳打ちされ、微笑んで軽く頷くと立ち上がった。
「私から答えよう。爆弾は非常に安価で製造できる。仮にエレクト全員に十個ずつ装備させたとしても五明さまの一度の食事の費用に満たないでしょう。」
五明の食費はその体格からも想像出来るように非常に高い。師家特権のほぼ全てを食に投じている。自らの食費より安いと言われてしまっては何も言い返せない。
「実際に装備させようと考えている数は一人三つ。コスト面に一切問題ないでしょう。」
そう締めくくって三栖は席に着いた。
「五明さまはよろしいですね。他に質問のある方はいらっしゃいますか。」
師家が挙手しないことを確認してから七瀬が手を挙げた。
「七瀬家。何でしょうか。」
「先ほど『有効範囲のもの全てを灰に帰すほどの威力』と申していたが、それほどの物をいくつも用いてこの地に穴を開けようというのか。確かに威力がなければNon NAMEに対抗出来ないのは理解している。しかし、危険な物をエレクト全隊員に持たせる必要はないのでは。十分に扱える者たちのみが扱えば良いのでは。」
透き通った声が円卓の部屋に響く。
「……巫女風情がまた邪魔しようというのか。」
六義が小声で呟いた一言は七瀬には届いたものの、他の者には聞こえていなかったので、前回のような事は起こらなかった。
「確かに危険な武器を扱えぬ者に持たせるのは良くない。今後検討する必要もあるだろう。ただ、現段階では誰でも扱える危険ではないものと考えられている。確かめる為にも実戦実験許可を。」
六義と七瀬の間に微妙な雰囲気が流れる中、六義に代わり三栖が答えた。
「七瀬家、よろしいでしょうか。他に質問は。」
沈黙が広がる。誰も手を挙げない。
「皇国神皇。何かございますか。」
一二三の問いに一は片手を挙げて答えた。
「それでは決議を行います。エレクト開発の新兵器の実戦実験に反対のものは挙手を。」
静かな空間に手が挙がる事はなかった。
「満場一致で円卓会議は新兵器の実戦実験を許可します。」
三栖と六義は再び立ち上がると、深々と礼をした。
「実験実施日は次回の円卓会議の日。場所は首都圏から離れた場所とする。よろしくお願い致す。」
頭を下げたまま三栖が言うのを、最後まで聞くと一は部屋から足早に出ていった。




