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二十六話

本部の作戦司令室には任務を終えた兼憲たちが帰って来ていた。

「もう一方の任務はどうなりました?」

兼憲が少し疲れた様子で背伸びをしながら桜井と友理奈に尋ねた。

「さっき連絡があった。無事に片付いたみたいだぜ。安心しな。お土産持って、もうすぐ帰ってくるよ。」

一息ついていた桜井がスクリーンに背を向けて答えたが、ずっとスクリーンと向き合っていた友理奈が桜井の言葉を訂正した。

「まだ終わってないわ。エレクトの奇襲よ。」

桜井と兼憲は慌ててスクリーンを凝視する。そこに映し出されていたのは拓たち三人を表す点がエレクト隊員を表す多くの点にかこまれている様子だった。

「これは…まずいかもしれない。兼憲、急いで準備しろ。疲れたなんて言ってる場合じゃねえ。」

兼憲は返事をするのも惜しんで出撃準備に取り掛かる。いつもは常に出撃出来るような態勢が整っているが、任務終了直後の為、いつもよりも出撃に時間がかかる。

「拓、凛、御坂応答して。聞こえる?応答して。」友理奈が必死に連絡を取ろうとするが、インカムが繋がらない。ノイズがかっていてそもそも声が届いていないような感じだった。友理奈は一度だけ似た経験をしたことがある。まだNon NAME実行部隊副隊長だった頃、あの悲劇の日の戦いでの事だ。メンバー間や本部の職員たちとインカムでの連絡が出来なかったのだ。インカムにどれだけ呼びかけても聞こえるのはノイズだけ。その時の状況によく似ている。当時は冷静な判断が出来なかった友理奈だったが、今はあの頃と違う。

「八百万の神に畏み畏み申すっ……!」

友理奈は胸の前で合掌して、懇願するように祝詞を上げた。


四面楚歌の状況である拓たちは剣を携え、六義と向き合っていた。自分たちだけならどうにかこの状況を脱する事が可能かもしれないが、後ろにいる実彩と悠輝を守りながら戦うのは不可能だ。かといって本部に瞬間移動しようとすれば間違いなく攻撃されて五人とも助からない。

「本部、本部、応答願う。桜井さん、友理奈さん。」

インカムに向かって小声で呼びかけるがノイズが聞こえるだけで応答の気配すらない。援軍の望みはまずない。兼憲たちも任務を終えたばかりだからたとえ本部が気づいたとしてもすぐには駆けつけられない。そもそも本部と連絡が取れない。そして戦っても勝ち目はない。逃げようとしても恐らく助からない。今は状況がこれ以上悪くならないよう時間稼ぎするしかない。

「六義家のお方がこんな遠方まで御足労ありがとうございます。私共もこの土地のものではないので十二分におもてなしする事が出来ませんが、何か御要望ございましたら何なりと。ここにいるNon NAME実行部隊の古賀拓也、川後凛、御坂崇史が対応させていただきます。」

真意を悟られぬよう、冷静さを装って皮肉交じりの挨拶をする。しかし、相手はこちらの浅はかな考えなど最初から見透かしていた。

「今この状況から逃げるのは不可能。一般人の身を守りきれるとは思えないからなぁ。戦うのも不可能だ。前者と同じ理由でな。ならば今出来る事を時間稼ぎ。バカバカしい。我々がそんな手に乗るとでも?賎民ごときが名を名乗り、エレクトの前に立つとは恥を知れ!一般人ごと処刑してやる。楽に逝けると思うなよ。」

六義が周りのエレクトたちに合図する為に右手を挙げる。見たこともない恐ろしい武器が五人に向けられる。拓たちが全力で防いだとしても防ぎきれないかも知れない。それでもこうなってしまった以上、守りに専念するしかない。

『八百万の神に畏み畏み申す。』

『豊国の神々に畏み畏み申す。』

三人は同時に祝詞を唱える。次第に五人を障壁のようなものが包み込んでいく。未だかつてこんなに立派な障壁を三人は作った事がなかった。同時に未だかつてこんなにも頼りない障壁でエレクトの攻撃を受けた事はない。六義は障壁が現れようと全く表情を変えない。そもそも見えていない。

「無駄な抵抗を…。結果は変わらぬというのに。」

重機のような武器たちの放つ殺気が拓たちを襲う。六義の振り下ろされる右手がゆっくりと動いているように見える。拓たちは最悪を考えた。しかし、神はエレクトではなくNon NAMEに味方する。六義の合図と同時にエレクトは攻撃を開始したが、攻撃する為の武器がまるで分解されたかのように壊れ崩れていた。

「何事だぁ!何が起こった?説明しろ!」

六義は一瞬にして冷静さを失った。怒鳴り散らして状況報告を求めるが、エレクトの誰一人として一体何が起こったのか理解していなかった。それはNon NAMEも同様だった。

「おい、御坂。何をやった?」

「いや、私じゃない。あんな事は流石に出来ない。拓と凛がやったんじゃなかったのか?」

「俺も何もやってない。その様子だと拓もやってないんだろ。」

三人の誰もやってないとなると、拓たちに考えられた答えは一つだった。

「実彩さん、悠輝さん。何かやりました?」

拓の問いに二人は全力で首を横に振る。

「……ですよね。」

指揮が乱れると隊全体が乱れるのが普通であり、その混乱が落ち着くには時間がかかる。しかし、六義は未だパニック状態なのに、エレクト先鋭部隊は驚異的な速さで落ち着きを取り戻した。結局、拓たちの危機的状況は打開されなかった。ようやく落ち着いた六義が再び空間を支配しようと口を開きかけた瞬間、上空から四つの影がエレクト先鋭部隊とNon NAMEの間に舞い降りた。

「『結果は変わらぬ』だって?どんな結末を迎えるかなんて、物語が終わるまで神にも分からんよ、六義さんよぉ。」


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