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十九話

翌朝。三人はベッドで苦しんでいた。

起き上がれないのだ。意識はある。声も出る。それなのに全身に力が入らない。

「凛、御坂。起きてるか?助けてくれ。起き上がれない。」

「拓。起きてるんだけど、俺も起き上がれない。」

「……。」

「御坂は起きてないみたいだねぇ。」

二人は苦しみの声を上げながら、起き上がる努力をする。しかし、一向に起き上がれない。そんな二人のインカムから声が聞こえた。

「おはよう、諸君。」

桜井だ。まさか任務か?

もしそうだとしたら、起き上がれないなんて理由で作戦司令室に集まらない訳にはいかない。だが、拓が懸念は幸運にもハズレだった。

「起き上がれないであろう諸君に援軍を送って差し上げよう。感謝するが良い。」

次の瞬間、三人の寝室の扉が勢いよく開いた。現れたのは仁と染やんだった。

「おはよう。拓、凛、御坂。救世主、仁と染やんが今、助けてやる。」

二人の手を借りて起き上がった拓と凛はどうにかベッドから脱出した。

立てるか不安だったが、起き上がってしまえば、もう行動を制限されることはなかった。

「御坂はもう少し寝かせておこうか。まだまだ全然起きなくて大丈夫な時間だし。」

御坂の熟睡する様子に苦笑いしている仁と染やんに拓が質問した。

「あのぉ…僕らに何があったんですか?」

拓たちの身に何が起こったのか、仁が説明した。

「ライブは想像以上に疲れるんだ。無意識のうちに神の加護を使うし、歌ったり、踊ったりしてる訳だからね。やってる最中や終わった直後は興奮で疲れを感じにくいけど、しばらくすると全身を疲労が襲う。その結果がさっきの状態だ。言ってみれば『神の呪い』だ。」

「他のNon NAMEの皆さんも毎回なるんですか?」

凛の質問に、仁は首を横に振る。

「いや。最初は毎回なっていたが、最近は少し疲労を感じるくらいでならなくなった。慣れだと思われる。」

そんな話を三人がしている間、染やんは寝ている御坂を突いたり、頬を引っ張ってみたりして遊んでいた。起きる気配のなかった御坂だったが、さすがに目を覚ました。

「おぉ、おはよう。御坂。」

本来この部屋にいるはずのない仁と染やんに驚きながら挨拶を返す。

何事もないように起き上がって。そのあっさりさにその場にいた一同驚いた。

「え?御坂、起き上がれたのか?」

「身体に力入るの?」

仁と染やんの口から驚きの声が漏れる。

先ほどまで苦しんでいた拓と凛は何も言えなかった。御坂は突然よく分からない質問をされた事に戸惑った。

「はい。普通に起き上がれましたけど。身体に力も入りますよ。疲れも残ってなくて、よく寝たなぁって感じです。…あの、仁と染やんは何故ここに?」

御坂の平然と答える様子に呆然としてしまった仁と染やんは、御坂の質問を危うく受け流してしまうところだった。拓と凛にした説明と同じ説明をして、御坂も状況を理解した。

「ありがとうございました。本当に助かりました。」

「あぁ。今日も頑張れよ。」

「おう。お疲れ。」

仁と染やんか退出してから、三人の寝室では御坂がすんなり起き上がれた理由についての話になった。

冗談で昨日のライブで手を抜いたなんて話も挙がったが、三人とも最初から答えは見えていた。

御坂が神道の血筋だから。つまり、「神の呪い」を受けてしまった拓と凛はまだまだ力不足という事だ。

「もっと頑張らないとなぁ。」

「そうだなぁ。」

「三人で頑張ろうよ。」

話がひと段落つくと、三人は朝食を食べに食堂へ向かった。

朝のちょうど良い時間帯。食堂は混雑していた。

もちろん、一般部隊の人々もたくさんいる。

この間まで一般部隊の事を恐れていた三人だったが、今は全くそんなことはない。

もう大丈夫。直接話す事で仲良くなれたし、何よりライブでファンの暖かさを知った。

Non NAMEの一般部隊も言い方を変えればNon NAMEの大ファンなのだ。応援されている側として、ファンをぞんざいに扱うなんて事、出来るはずがない。

自然と集まって来てくれた一般部隊の人達と、昨日のライブの話をしながら朝食を食べた。

その時に一般部隊の人々がライブの映像を見せてくれたが、残念ながら拓たち三人はその映像を微笑んで見ることが出来なかった。

 ライブ以降の拓、凛、御坂の訓練の雰囲気は以前までと全く違った。

以前までは訓練も楽しくやっているところがあったが、今は違う。

戦闘訓練の時はまるでお互い殺しあう勢いで組手をやる。歌唱レッスンではとりあえず満足するまで歌って踊る。何故三人は変わったのか。

それはライブ映像を見た時に感じたからだ。自分たちとNon NAMEの違いを。

確かに拓たちもNon NAMEである。それは紛れもない事実だ。

しかし、実状は違う。輝きが違うのだ。とても同じ立ち位置に立っていない。足元にも及ばないのだ。

ライブで自らの実力不足を感じた拓たちはとにかく練習する事にした。

努力は必ず報われる。その言葉を信じて……。

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