十七話
首都圏上空。ビルがいくつか立ち並ぶ、なかなかの都会。
街の灯りしかないはずなのにだいぶ明るくて、すぐに黒ずくめのエレクトを見つけられた。
エレクトは何やら一般人と思われる人々の集団を囲って、銃を向けている。
「さっさと片付けるよ。私が撤退促すから、応じないようだったらすぐに斬りつけて構わない。いいでしょ?桜井さん。」
「あぁ。構わない。」
「早くやりましょ、遥副長。」
遥も結衣もいつもと様子が全然違う。
「あの。一つ質問良いですか?」
「何?良いわよ。」
「何でこんなに皆さんテンション高いんですか?ここに何かあるんですか?」
何故拓がそんな質問をしたのか、遥には一瞬分からなかったが、すぐに悟った。
「そうか。拓、凛、御坂はライブ見るのもやるの初めてなのか。」
三人は頷く。ライブという言葉も知っているし、それがどういうものなのかもイメージ出来ている。
その為、この一件を片付けた後にこの場で自分が何をやるのかも理解している。
しかし、それは他のNon NAMEからしてみれば理解していないも同然だった。
「そうねぇ。ライブの楽しさ知らないんじゃ、私たちが高揚している理由は分からないかな。今日のライブが終わっても同じ疑問を持ってたらもう一回質問してごらんよ。絶対にありえないけどね。それじゃあ行くよ。」
遥と結衣が全力降下する。少し遅れて拓、凛、御坂も続くように降下する。
エレクトの背後に着地した。今回の着地も降下スピードからは想像できないほど見事な舞い降り方だった。
「我々はNon NAME。退きなさい。退かないね。じゃあ斬ります。」
遥と結衣の斬撃は拓たちでさえ捉えるのがやっとだった。
おそらくエレクトは誰が立ちはだかったのか、何を言われたのか、何をされたのか全く理解していない。
そんなことを考えている間に、エレクトの姿は消えていた。
その時間。舞い降りてからわずか0.2,3秒。歯向かう隙を与えぬ、まさに閃光の如し。
次の瞬間、エレクトが取り囲んで銃を向けていた集団の上空にNon NAMEの待機部隊が出現した。
「拓、凛、御坂。合流するよ。」
遥に言われ、五人は合流する為に浮上する。
「あれは…Non NAMEだ!」
「Non NAMEが我々を助けてくれたんだ!」
「Non NAME!Non NAME!Non NAME!」
一般人集団100人弱の歓声は拓がしていた想像よりもずっと迫力があった。
「みんな〜、会いに来たぞー!」
兼憲の挨拶を合図に、Non NAMEの軍服がキラキラと光ると、ライブ衣装仕様に変化した。
金色の飾りが各所に現れて華やかさが増し、女子の軍服は膝下ワンピースの様な形になった。
Non NAMEは全員一か所に集まると、いよいよライブが始まった。
ライブは夢の時間だった。
歌う事、踊る事、話をする事。全てが楽しかった。こんなに楽しいなんて、拓、凛、御坂は思っていなかった。
さらに驚いたのが、ライブを見ていた一般人、Non NAMEのファンが拓たちの事を知っていたのだ。
来たこともなく、Non NAMEに入るまで聞いたこともなかった場所の人々に名前を呼ばれるのは不思議な気持ちだったが、とても嬉しかった。
3時間弱、計25曲披露したNon NAMEは、最後に浮遊したまま一列に並んで、手を繋ぎ、ライブを見てくれていたファンの方々に深々とお辞儀をすると、一瞬で消えてしまった。




