十五話
拓、凜、御坂を『人』に戻してくれたのはNon NAMEだった。三人の肩にNon NAMEが優しく手を置く。
「落ち着きな。戻ってこい。」
「何も自分を責めることはないわ。」
「君たちは間違えていない。」
拓たち三人は引き戻そうとしてくれた兼憲、遥、仁さえ斬り倒そうとした。しかし、その手に握られていたのは現界した剣ではなく、ただのペンだった。ペン先を仲間であるはずのNon NAMEに向けていることに気づいて、ようやく三人は我に返った。
「お疲れ様。後は我々に任せてゆっくり休みな。」
何事もなかったかのように兼憲に心配されたのがとても不甲斐なかった。しかし、そんな気持ちとは裏腹に、拓たち三人は立ち続けることが出来なくて、いつの間にか地面に崩れ落ちていた。脚に力が入らない。その理由が疲れからなのか、絶望からなのか分からない。三人は後処理をする兼憲たちをただ見ていることしか出来なかった。
大量にいたエレクト隊が全員消えると、そこは平和な平地だった。ようやく立てるようになったが、空ろな様子の拓たち三人は、兼憲たちと共に本部へと帰還した。本部に到著して、桜井と友理奈に声をかけられても三人は上の空だった。
「これはNon NAMEの洗礼を受けた感じかな。何度見ても面白いなぁ。」
この場において、たった一人だけ所謂『Non NAMEの洗礼』を受けていない桜井が冷やかすが、その他『Non NAMEの洗礼』を受けた面々が殺気を帯びた目で一斉に桜井を睨みつけたので、さすがの桜井も萎縮した。三人の今後にも関わるこの絶望を和らげることが出来るのは、たった一人しかいなかった。
「忘れなさい!…なんて言いません。エレクトからしてみれば君たちは悪魔のようなものです。当たり前です。どれだけ倒そうとしても倒せない者たちを悪魔と形容せずに何と言う。だから……全てを背負いなさい。君たちは大きな事を成し遂げようとしている。何の代償もなく叶えられる願いじゃないはずよ。背負いなさい。そうすれば、いつの日か君たちを悪魔のような目で見ている人たちでさえ救えるのだから。」
友理奈が細い声で叫ぶように訴えた。その声に迫力はなくとも、間違えなく拓、凜、御坂の心に響いた。
「返事をしなさい。古賀拓也。川後凜。御坂崇史。」
『…はい。』
三人の返事は友理奈の声より大きかった。しかし、その声は普段の声よりずっと弱々しいものだった。
「声が小さい。もっと声出して!」
『はい!』
「それでよろしい。今日はもう寝なさい。」
自室に戻った三人はベッドに着くとすぐに眠りに落ちた。それは世界から逃げるように。もしくは自らの行為を全て背負うように。




