十四話
Non NAME六人は上空100メートルほどのところに浮遊していた。軍服に身を包み、手にはペンを手にしている。地上を見ると黒い川のようなものが見える。エレクトだ。黒い川の向かう先には、栄えていると見受けられる街が広がっている。
「今日は一段と気合が入ってらっしゃる。拓、凜、御坂。まずは剣を出現させずに撤退を促して来い。指揮官をわざわざ呼ばなくても、先頭の隊員に促せば良い。言う事を聞かずに攻撃して来たら全力で、殺さない程度に殲滅してもらって構わない。攻撃されるのを怖がるなよ。撃たれても全く効かないから。ただし、油断だけは絶対にするな。何かあったら私たちもすぐに助けに行く。」
拓たち三人は今からやるべき事を咀嚼した。この時には既に初出撃の緊張が人々を助けられる喜びへと変わっていた。
「よし。頑張って行って来い!」
兼憲の合図で拓、凜、御坂は地上のエレクトへと急降下した。抵抗してくる風が心地良い。地上はすぐ近くだった。エレクト隊の進行方向前方に道を塞ぐように拓、凜、御坂は舞い降りた。
「分かっていると思いますが、Non NAMEです。ここから先への進軍は我々が許しません。今すぐ撤退しなさい。従ってくれないようなら全力で抵抗します。」
突然降臨した敵に、エレクト隊員は装備している武器を向けた。こんなに近くで銃口を向けられたのは御坂の家以来久しぶりだ。あの頃とは違い、銃口に対する恐怖は全くない。
「わ…我々は皇国神皇ならびに十氏家の命により行動している。故にこの先への進軍を許されているんだ。今すぐ我々の邪魔を辞めなければ、こちらの全力を持って処刑してやる。」
震える声で言われたところで辞める気にもならない。そもそも最初から進軍の邪魔を辞める気が無いのだから。
「了解しました。ならば全力で抵抗致します。」
拓に代わり、凜がエレクトの開戦宣言を受諾した。すぐにエレクトによる一斉射撃がNon NAMEを襲う。だがしかし、Non NAME側は痛くもかゆくも無い。全ての弾丸をペンから現界した剣で切り裂く。一発も当たる気配がしない。
「兼憲、反撃に転じて良いですか?」
弾を切りながら、拓は兼憲に確認をとった。
「攻撃を許可する。殲滅しろ。」
懐かしい兼憲の殺気を帯びた声が聞こえた。苦笑いしながら三人は反撃に転じた。エレクト隊員たちはまるでボーリングのピンのようにどんどん倒されていく。拓たちは特に何も感じていなかった。エレクト隊を倒す喜びも、エレクト隊に対する同情も。しかし、三人の目に入ってしまった。Non NAMEである三人を、まるで悪魔を見るかのような目で見つめてくるエレクト隊の恐怖の表情が。その瞬間、三人は冷静さを失った。Non NAMEに正義はない。どちらかといえば悪である。理屈では分かっていたことだったが、実際にその事実を突きつけられるような光景を目にしてしまったら、どうしたら良いのか分からなくなってしまった。今のエレクト隊を斬り倒しているこの行為を誰が正当化してくれるのか。いや、誰も正当化なんてしてくれない。そんな絶望とも言える疑問が怒りに近い感情となり、三人はその感情をエレクト隊にぶつけていった。行動と感情が矛盾している。その様子は既に人ではない。まるで『ケダモノ』だ。心の中、微かに存在する冷静な自分が、狂っている自分を止めようとする。止めようとするが止められない。誰か止めてくれ…。止めてください…。助けてください……




