十三話
訓練を始めてから三ヶ月ほど。拓たちはすっかり一人前になっていた。戦闘訓練では現在のNon NAME最強と言われている兼憲と三人でなら互角で戦い、時には勝てるようになった。作文においては一冊しっかりとした本を書き上げた。歌は十分人々を魅了出来るくらいまで上達した。兵学でも臨機応変に、あらゆる状況において素早く対策案がいくつか浮かぶようになった。
「これなら実戦に出ても活躍できるな。次の任務から参加してもらおう!」
Non NAME実行部隊の隊長、兼憲に認められた三人はNon NAMEとして人々を手助けできようになった事を喜んだ。しかし、それを嬉しいと思えていたのは、人々を背にエレクトと向き合うまでだった。
任務は大体隔日である。一日に二度以上ある事もあるし、毎日ある時もあれば、一週間ない時もある。全てはエレクト次第なところがある。その日の訓練を終えた拓は自室でゆっくりしていると、インカムに声が流れた。
「Non NAME諸君!任務だ。」
作戦司令室に続々とメンバーが集まる。
「全員集まったな。よし、任務の概要を説明する。」
桜井が話し始めると、もともと緊張感漂っていた作戦司令室の雰囲気が鋭くなる。
「今日はある街で再教育があるようだ。少し前に我々Non NAMEも訪れた街、って説明だと新米三人には分からないか。まぁ、この前Non NAMEがライブをやった街だ。せっかく幸せな気持ちになった人々を再び不幸にする訳にはいかない。頼むぜ。」
桜井による作戦概要説明が終わると、兼憲が任務に出るメンバーと本部に残るメンバーに分ける。理由は二つある。一つは任務中に新たな任務が発生しても対応出来るように、もう一つは本部が何者かに襲撃された時に対応出来るように。主たる理由は前者であり、後者が起こり得ることなど万に一つもない。
「今回は新米三人の初出撃だからね。拓、凛、御坂。あとは私と遥、仁。基本、古参組は後衛サポートに徹する。前衛は三人に任せる感じで行くぞ。」
『はい!』
元気の良い返事ではあったが、拓たち三人の返事は明らかに緊張している声音だった。
「大丈夫よ、訓練通りやれば危険は一切ないわ。」
「相手は何千と集まっても兼憲一人に勝てないような輩だ。心配する事は何もない。」
遥と仁の励ましにも頷くのが精一杯だった。
「今回は各自で瞬間移動するように。練習も兼ねてな。あっ、遥は私もよろしく頼む。それでは仁!カウント。」
「いきますよ。三、二、一……」




