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こんなに素早い芋が芋のはずがない  作者: クファンジャル_CF
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第13話

犯罪組織が取り扱う品目は多岐に渡る。

武器。違法薬物。マネーロンダリングを専門とする業者もいるし、人身売買すら珍しくはない。今は戦争を終えたばかりの混乱期であり、世間を覆い尽くす不安が解消された事で、むしろ治安が悪化していく側面すらあった。それらが回復するまでは長い時間がかかる事だろう。

だが、さしあたって取り扱い件数の伸びが著しい品目がある。

医療用AIだ。

高度な技術の集合体であるこの知財は必需品であり、サイバネティクス連結体や物質合成システムと併用することで、辺境の開拓星でも十分な医療を提供することを可能にする。当然、単独で長期航行する船舶などでも重宝されていた。

このAIは法令で配備を定められているという以上に現場から必要と認められている資材であったが、同時に大変高価なものでもあった。莫大な研究費用が注ぎ込まれているからであり、正規品は厳重に知財として管理されている。

故に、指名手配された宇宙海賊、費用を捻出できない中小企業、時に財政基盤の貧弱な地方自治体すらも、正規品を入手できないという事態が起こりえた。

そんな彼らが手を出すものこそ、非合法の医療用AIである。

原則的に銀河諸種族連合でのAIはスタンドアローンで稼働する。技術的理由でサーバーとの安定的な接続を保証できないからだった。プロテクトさえ解除すれば複製可能なこれらAIは、犯罪組織の手で不正に模造・改造され、正規品を入手できない層へ安価に販売された。それは同時に、非正規品によるトラブルの多発や、開発元の収益減少と言った多々の問題を引き起こしている。

知財保護こそが、銀河諸種族連合の重要な課題と言えた。


「商品の用意は?」

「へい。滞りありませんぜ」

サメ人間の問いに、タラップを上がって来たネズミ男は下卑た笑いを浮かべた。

そこは宇宙船、『鋼鉄のあぎと』号のコックピット。

ネズミ男は、たった今船腹の見回りを終えて戻って来たのだった。

その船腹―――密輸品を収蔵する貨物室に収まっているのは、無数のコンピュータチップを収めた幾つものコンテナである。

宇宙は広大だ。データと言えどもその取引は物理的手段を取った方が露見しにくい。また、AIはそのデータの膨大さから、回線経由ではポリスに発見されやすいという危険もあった。

彼らは宇宙レースの参加者であったし、勝利にかける情熱も真摯なものはあった。だが、同時に宇宙レース参加者としての立場を利用して不法行為を行う宇宙海賊、シャーク船長とその一味であり、勝利のためならば非合法な手段を選ぶ側面もある。

宇宙レース参加者としての身分はイルド管轄区が発行した正規のものであり、ポリスの取り締まりを受けにくい。彼らはそれを密輸に利用していた。

本番ではレース用に情報処理システムを増設する船腹へ思いをやり、サメ人間の船長は感慨深げに言った。

「聞いたか?今回は俺たちを勝たせる方針でシンジケートと話がまとまったってよ」

「へい。

また死体が増えるんですかねえ」

「ま、楽に勝てるならそれに越したこたあねえ」

彼らはその凶悪な面相に似合わぬ知能犯罪者だった。得意分野はコンピュータ関連、特に知財関連の犯罪である。そもそも宇宙レースに参加しだしたのも、参加者への取り締まりが緩いという事に気付いたからだ。

そこは凍えるような寒さの惑星。液化窒素の海が眼下に広がる中、海賊船『鋼鉄のあぎと』号は飛翔を続ける。

海面ギリギリまで降下した船は、船腹を解放。積み荷を投下すると速やかに上昇する。

「さあ、帰ったらレースの準備をするぞ」

「了解、親分」

光圧が、海賊船を加速していく。

全てを押しのけて。

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