表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

《3》なに?

 

 ウォン


 声の主は、動揺していなかった。


「ねぇ、克己、私、死んだの?」


 両手で彼の頬を、撫でながら。


(あれっ? だったら、克己がここにいるのも……)


「克己、私、おかしくなったの?」


 両手で彼の耳を、撫でながら。


(でも、さっきの人、普通だよね……)


「克己、ココ、どこ?」


 彼のトレードマークをなぞりながら、答えを、求めた。



「あら、珍しい犬ね。犬種は何?」


 左を向くと、傍に大人の女性の顔が。その人は、克己を見ていた。


「あ、はい、甲斐犬かいいぬです」


飼い犬(かいいぬ)?! 変わった種類ね」


 初めて目が合った。

 透明感のある焦げ茶目が輝き、吸い込まれそう。肌は色白く、鼻筋も綺麗。黒髪のポニーテールで、清楚感バッチシ。


(きれぇ〜)


 唖然としている私に、女性は目を細め、笑顔を見せてくれた。その時に現れた片笑窪が、とっても可愛い。


(日本人、っぽくない)


 なんというか、彫りも多少深く、ハーフって感じ。


(でも日本語しゃべってる……)


 ただ見つめていた。20歳後半くらいのその彼女に、いつの間にか彼は正面を向けていた。顎の下を撫で撫でされている。


「あら、素敵なお名前。カツミって呼ばれてるのぉ」


「ぇ? (何で知ってるの?)」


 すぐに反応してしまった。


「え?」


 彼女もなぜか驚きの、表情と目を私に。再び克己に視線を戻した。目で会話するように。


「そう、そういうことねぇ」


 眼差しが、私に……。


「嬢ちゃん、”あっち”から来たばかりのようね」


(あっち?)


「お名前は?」


「か、奏笑かなえ、です」


「カナエちゃんね。素敵なお名前だわ。私はエミールよ。よろしくね」


「え、えみーる、さん。はい、よろしくお願いします」


 何がよろしく、なのかは不明だった。でも笑窪アピールに、釣られた。

 彼女はすぐに手首の装飾品を見た。ブレスレットっぽいけど、腕時計らしいモノ。


「そうねぇ〜……少し待っててもらえる」


 立ち上がり。それを指で触れ始め、そして話し出した。


「おはよう。朝早く、ゴメン。……少し急用ができて、1時間ほど遅れるけど、いいかなぁ……うん、わかった。……ありがとう、それじゃ後で」


(電話!? どこで話してるんだろう?)


 耳や口元にそれを近づけたわけでもなく、耳に専用装備をしているわけでも、ない。


「今の、お電話、ですか?」


 先ほどの姿勢に、戻った彼女に訊くしかない。


「オデンワ? 何それ?」


「(へっ?) え、えっと、そのぉ〜……離れている人と、お話ができる、機械?」


「何で疑問形なの、フフフっ。分かったわ、通信装置のことを言ってるのね」


「は、はい。あっ、確か……」


 ポケットに持っていた携帯電話スマートフォンを、見せた。物珍しそうな彼女の目つきが、それに近づく。だから、ディスプレイをオンにして……だけど“圏外”の文字に気付いた。操作しても、当然通信不可、より酷い。自宅に電話したけど、プープー音もなし。


「当然、よね、フフっ」


「はぁあ」


 その“当然”、の意味が不明だった。


「コチラでは、テレ・フォンと呼ぶの」


「……テレホン、とも言います」


「”あっち”のテレフォンとは、かなり違うんじゃないかなぁ〜」


 首を傾げていた。


「ゴメン、説明したいけど、今は時間ないんだ。でも安心して。コチラに来たカナエちゃんを連れて行く義務があるから。一緒に来てちょうだい」


「(ふぇっ)どこに?」


「カナエちゃんが、コチラでも活動できるように登録する所よ」


「……あのぉ〜、ココってどこですか?」


「そぉね〜……どう説明したら……んんん……分かりやすく言うと、カナエちゃんの住んでいる惑星と同じってことね」


「はぁあ」


 馬鹿にされているのか、揶揄からかわれているのか。とにかく何が起きているのか、少しでも把握しておきたい。今はただ、親切な彼女に頼るしか、なかった。


(バス? 電車、かなぁ……)


 違った。

 数十メートル歩いただけ。中腰になった彼女は、手首装飾物ブレスレットを歩道へ向けた。なにやら、長方形の光沢あるモノ、発見。定期券より、小さい。


「すぐに来るから」


(なに、が?)



 

お読み頂き、心より感謝致します。

未来設定ではなく、もし始祖のエデン追放がなかったら!という世界観を表現したいのですが……


頑張りたいと思いますので、応援のほど宜しくお願い致します。


ご感想など頂戴できると、励みになります。また、誤字脱字など、お気づきの点ございましたら、ご教示ください。


では、続きをお楽しみに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ