表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DEAD MAN´S EVOLUTION  作者: 江上 那智
異世界修行編
2/22

成長の壁

森 2日目 朝


ゴブリン退治でスキル改善を目指そうと決めた至人だったが、さすがに夜の森をうろうろする気にはならずその場で夜を明かした。


(なんかゾンビって常に飢えてるイメージがあったけど、お腹もすかないし眠くもなんなかったんだよなぁ)


種族特性なのか眠る必要がないとわかった至人は夜の間にこれからの事を考えていたが、そんな折に偶然だが一つ気付いた事があった。

ステータスは戦闘を行わなくても増える。

これに気付いたのは、暇をもて余してウインドウを眺めながら石積みをしていた時だった。

関節硬化と筋硬縮によって素早く精密な動きが困難ではあったが、積んでは崩し積んでは崩しと意味もなく繰り返していると器用さが1増えたのだ。

魔石から何かを吸収して上昇するのは昨日の戦闘で理解していたが、トレーニングも効果があるのは嬉しい情報だ。

そこで1つあることを思い付いた。


(これって意図的に狙ったパラメーターを多く増やせるんじゃないか?)


例えばモンスターの攻撃を多く身体に受けてから倒し、魔石吸収すれば耐久が大幅に上昇するかもしれない。

と、仮説を立てたのだ。

ならば実験してみよう。そう考え、ゴブリン探しにでかけた。


――――――――――――――――――――――


探してみるとなかなか見つからないのはどうやら地球と同じらしい。

いや、正確には『条件にあった』ゴブリンを見つけられない状態に至人は困っていた。


(うーん……昨日のははぐれゴブリンだったのか斥候だったのか……)


至人は戦士を生業にしてはいない、企業戦士(サラリーマン)ではあるが。

つまり、条件にあうゴブリンは『周囲に仲間のいないやつ』

二体一緒だったり、一体かと思ったら少し離れた位置にもう一体いるという状況のは見つかるのだ。

完全に一体というのがいない。

一対一ならば昨日のように勝算はあるのだが、一対二以上となると蹂躙されるイメージしかわかない。


(なんとも上手くいかないもんだね……っと、いた)


奇しくも昨日と同じような時間帯に差し掛かり始めたときにようやく条件に合うゴブリンを発見した。

昨日はうっかり奇襲をくらったが、今日は奇襲を仕掛ける番だ。

足音に気を付けながらゆっくりと(急いでもゆっくりだが)近づく。

幸いにして気づかれることなく無傷で倒すことができた。

魔石吸収をして即座にステータスを確認する。


(上がり幅は昨日と対して変わらないか……しかし、人型生物を相手にしているのに忌避感がないな)


これも種族特性なのかな?と考えつつ次を探す。

大して時間もかからずにもう一体見つかる。


(この時間帯になると数が変わるのは何か理由があるのかな?)


不思議に思いつつ今度はわざと攻撃を受けてみようと目の前に躍り出る。

HP表記が無いことと痛覚鈍化を過信するつもりはないが、10発程度の攻撃を身体で受け止めて倒す。

――――――――――――――――――――――


ステータス


赤羽 至人(あかばねしびと)


種族:不死族・ゾンビ

職業:なし

魔力:1482

攻:50

耐:38

体:error

器:18

速:15

運:3


パッシブスキル

声帯破損 筋硬縮 関節硬化 痛覚鈍化Lv3

再生Lv1


――――――――――――――――――――――


(やっぱり大幅に増えてる!)


無傷や1~2発の攻撃だと耐久値5前後の上昇に対して、10発の攻撃を受けて魔石吸収した場合10前後の上昇があることが確認できた。


(あ、腐敗が消えてる)


行動によってパラメータの上昇率が変わることが証明できたついでにパラメータによってデメリットを解消できることもわかった。


(どうやら腐敗は耐久のパラメータが影響あったみたいだ、だとしたら器用さが関節硬化で速度が筋硬縮かな?)


声帯破損はどうすれば治るかはわからないが、筋硬縮と関節硬化が無くなれば動きは格段に違ってくるのは明白である。

どれほど数値を上げれば解消されるかは不明だが、この二つは確実に無くすことができそうだ。


(でも、完全に日が落ちたから今日はこれくらいにしよう)


二体しか倒せなかったが確実に成果はでた、耐久も増えたので明日は二体同時に相手してみようかな。

と考えながら至人は夜のトレーニングに精を出し始めた。


――――――――――――――――――――――


森 10日目


あれから大分たった。

二体同時に相手取れるようになり、日中のゴブ狩りもこなせるようになったため、昼は狩りで夜はトレーニングを繰り返した。

寝なくても大丈夫というのはスゴイことだが流石に飽きてくる。

器用さと速度は80を超えたが一向にデメリットが消える気配はない。

攻撃と耐久に至っては100を超えている。

ゴールがあるのはわかっているのに一向にそのゴールが見えない状態は少し気分が良くないが、収穫もあった。

アイテムボックスだ。

今までなんとなく回収していた魔石だが、数が増えてくると持ち切れるものではない。

仕方なく一か所に集めて積んでは崩し積んでは崩ししていたのだが、なんとなく、そう…本当になんとなく手に持った魔石に収納!と念じたのだ。

すると魔石は手の中から消えてなくなった。

一瞬なにが起きたのかわからなかったが、すぐにステータスを開くとアイテムボックスの項目が増えていた。

即座にアイテムボックスと念じると表示が切り替わり『ゴブリンの魔石×1』とでた。

取り出すように念じると手の中に再び魔石が収まり、アイテムボックスの項目が無くなった。

どうやらこの機能(技能?)は最初から使えたらしいが、中身が空だと項目すら表示されないというこの不親切設計に至人が苛立ちを覚えたのは仕方のないことだった。


(どうしたもんかなぁ……)


異世界の森で目を覚ましてから10日、もはやゴブリンは至人の相手にすらならなかった。

さらに言えばゴブリンだとパラメータの上りがほとんどなくなっていた。

一応少しは増えるが雀の涙だ。

故に至人は悩んでいた。

狩場を変えるか、このまま続けるか。

狩場を変えればモンスターも変わる、それはわかる。

森の出口はすでに把握していた。

森を抜けると平野に続いていたのだが、見晴らしが良すぎた。

見た目こそ腐った部分が無くなり人間と変わらないが、万が一この世界の冒険者に出会い、何かの拍子でゾンビとばれたらきっと討伐されてしまう。

そう考えるとデメリットスキルを残したまま森を抜けるのがとてつもなく恐ろしくなったのだ。

あれこれ思考を堂々巡りさせながら至人は森の中心付近に差し掛かった時、不意に足が大地を踏む感触が無くなる。


(へ? うおおぉぉぉぉ!?)






ぐしゃっ!





盛大に地面に叩きつけられ倒れこむ。

足から行った為、骨は砕けて肉は飛び散り、ついた手は曲がってはいけない方向に曲がり、それでも勢いを殺しきれずに打ち付けた頭部からは脳漿をまき散らした。


(コレ……不死族でも死んだんじゃね……?)


至人の意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ