プロローグ
あたりは一面石ころだらけ。真っ暗な夜空に星がきらきらと輝くその中に、真っ青なお月様を背景にしてその工場は建っていました。
この小さな工場で働いているのは、小さな女の子が一人。毎日届く『設計図』の通りに、丸くてふわふわと浮く『商品』を作るのが女の子の仕事です。女の子は完成した『商品』を毎日青いお月様に向けてふわふわと飛ばしますが、この『商品』がいったいどういうものなのかということは、何も知りませんでした。
女の子は一人でした。
そんなある日のことでした。いつも『商品』は二つで一つ、対になっているのですが、何故だか片方の『設計図』が見あたらないのです。
こんなことは初めてです。女の子はとまどいましたが出来ている分だけでもお月様に届けることに決めて、完成している『商品』を抱えて工場の外に出ました。
大きくて真っ青なお月様。毎日のように見ていても、その度に綺麗だなと思うのです。
そっと手を離しました。『商品』たちはいつも通りに青いお月様に吸い込まれていきます。
その時でした。
開いたままだった工場の扉から、あの片方しかない『商品』がふわふわと出てきて他の『商品』に続こうとしたのです。完成していないものを送り出すわけにはいきません、女の子はあわててその『商品』から伸びる紐に飛びつきました。しかし、『商品』は女の子の重さをものともせず、ぐんぐんとお月様に近づいていきます。小さな工場は女の子の足下でどんどん小さくなっていくようです。
女の子は怖くなりました。しかし同時に、すこしわくわくしていることに気がつきました。女の子はずっと、この小さくて石ころだらけの星しか知らなかったのです。このまま青いお月様にいけるかもしれない、と思うと、自然と胸が高鳴るのを感じました。
不安や希望、恐怖と好奇心。いろいろな思いで胸をいっぱいにしながら、女の子は高く高く昇って行きました。




