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非日常的な日常を  作者: 一八重
6/7

最後はしっかり戸締まりを

「それでは、そろそろ遅くなりますので、また明日」

「あ、ああ、……明日からよろしくさん」


日も沈み、薄暗くなり始めた頃。俺達は別れの挨拶を交わし、不知火凪は帰路へと向かった。

しかし……まさかあんな簡単に了承するとはなぁ……。

はい、気になるやつのために先程の事を振り返ってみましょう。


「俺、狗神っていう妖怪だから」

「………………はい?」

「人間じゃなくて妖怪なんだよ、俺」

「はぁ、…………そうですか」


そして冒頭に戻る。


以上、振り返り終了。

先に言っとくが省略なんてしてないからな?マジで。

それなりに色々覚悟してカミングアウトしたんだけどなぁ。


相手のあまりに薄い反応に若干ショックを受けた!轟は10の精神的ダメージを負った!

轟は瀕死状態になった!

なんなら俺の勇気を返せって逆ギレするレベル。いや冗談だけど。


いくら自分が冗談を言っても相手の反応が冗談になるわけも無く、俺はただただ、店に一人取り残されていた。もともと自分の店なのだからどこに行くこともないだろうけれど、それでもやはり、取り残されたという言葉がしっくりくる。それと同時に、ぽつん。という擬音がとても似合いそうな状況である。


あれー……、なんで俺が驚かされてんの?普通逆じゃね?

少し間を置き、無理矢理落ち着かせた頭では、その一言しか出てこなかった。


「…………店閉めるか」


考えていても仕方が無いので、入り口に掛かっている『営業中』の板を『閉店』へと引っくり返す。

もう何年も雨風に晒していたせいか文字が読みにくくなっている。


「この板もそろそろ手入れしないとな……」


どうせ明日も暇だろうし、店番をやりながらでもいいだろう。

不知火も服装は学校の制服だったようだし、昼辺りから始めれば充分間に合うな。


先程は文句を言ってたかもしれないが、俺は彼女を気に入っている。

それに気にしていた人手不足の問題も早く解消された。明日になって彼女が「やっぱりやめる」なんて言わなければの話だが、今のところは大丈夫だろうと思っている。そういうことにしている。


入り口の鍵を閉めると机のある場所に戻り、ノートを懐から取り出す。

名前の無い、ただの古びたノート。

それを開き、昨日の日付の下に一行空けて今日の日付を記す。そして日記のように店での出来事を纏め、最後に来客数を書き足し、一息吐く。


「本日の業務、これにて終了」


俺はそう呟き、ノートを閉じた。


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