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非日常的な日常を  作者: 一八重
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初めましての挨拶を

あまりにも簡単にオーケーをだしたからか、口を開いてぽかんとした表情でその場に立ち尽くす。

まあ、そりゃあ驚くよな。面接もしてねえし、それ以前に名前も聞いてすらいない。


「え、いいんですか?」

「かまわねえよ。断る理由もねえし、丁度人手も欲しかったからな」


そう、ほんとに欲しかったのだ。たまに複数客が来たときとか対処しきれないからな。

俺がサボりたいとかそんなことはないぞ?ほんとだよ?トドロキウソツカナイ。


「り、履歴書とか……」

「そういうのめんどくせえからパス」


履歴書を見たからってそいつの事が全部わかる訳じゃない。

頭のいいと有名な学校に通ってるからってそいつがちゃんと仕事をしてくれるかというとそうでもないし、不良が多いことで有名な学校に通ってるからってそいつが全然働かないかというとこれまたそうでもない。

結局のところ本人のやる気と性格の問題なのだ。

だから見ない。見ないったら見ない。


大体、バイトの志望動機なんて金が稼ぎたいから以外にないだろ。

高校生がバイト先選ぶのだってそこの時給が高かったからとかそんなもんだ。

たまに「店員さんの接客を見て素晴らしいと思ったからです」とか抜かす奴がいるが、俺が面接官だったら即行で落とす。なんなら面接とかお構いなしにそいつの顔ぶん殴るレベル。

そういう人になりたいならともかく、素晴らしいってお前何様だよって言いたくなる。

思ってもない言葉を並べられるよりははっきりと金を稼ぎたいからって言ってくれたほうがまだ好感持てるわ。


「め、めんどくさいって……」


若干引き気味に苦笑いされる。

というより愛想笑いなんだろうな、これ。


「別にめんどくさいってのが全部って訳じゃねえよ。履歴書見たってお前の性格とか働きぶりなんてわかんねえだろ?ダメだったらダメでクビ切ればいいし、お前がこの店気に食わないってんならやめればいいし」

「それは、…………そうかもしれませんけど……」

「これは俺の偏見だが、面接で自分の本音を言う奴なんて居ないと思ってるからな。こっちを気遣ってんのかゴマすってんのか知らんけど、そういうの疲れるだけだし、はっきり言ってムカつくんだよ」


顔色を伺い、思ってもない事を言い、ゴマをすり、媚びへつらう。

それはきっと、自分の将来の為なのだろう。生き残る為の術なのだろう。親からそうするように教えられたのだろう。

だけど気に食わない。外面ばかりを見せられている気がして腹が立つ。

ああ、考えてたら段々苛々してきた。


苛立ちが表情に出てしまっていたのか、それとも先程の台詞のせいなのか、どこか怯えた様子で彼女は口を開く。


「機嫌を損なわせてしまったのならすいません……。でも、私は機嫌をとろうとか、そういうつもりは無いんです……」

「あー、…………俺の方こそすまん。お前に対して怒ってるとか、そういうわけじゃないんだ」


怖がらせてしまっただろうか。と、申し訳ない顔になる。

気が付けばお互いにそんな顔をして見合っていた。


「ふふっ」


まるで睨めっこでもしていたようにどちらからともなく笑い出す。

なんかこっ恥ずかしいな、これは。


「それじゃあ自己紹介だな。俺は轟。五十嵐(いがらし)轟だ」

「私は不知火凪(しらぬいなぎ)って言います。これからよろしくお願いします」



微笑みながらそう言って、とても丁寧にお辞儀をしてくる。

うんうん、いまどきにしては礼儀正しい良い子じゃないか。


「あ、でも言わなきゃいけないことがあるんだよな」

「はい?なんでしょうか」

「俺、狗神っていう妖怪だから」



「……………………はい?」


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