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ちょっと待ってってなんなんですか、なんで待たないといけないんですか。殺しますよ

「いよいよだね……」




家で軽く朝飯を食って、俺の部屋で軽くネタ合わせをした後、俺たちは予定よりは数本早い電車に乗って会場に向かうことにしました。俺の隣で令和に舞い降りた、アルティメットデストロイサイケデリックエンジェルこと結衣が、興奮と不安が入り混じった表情をして自分に話しかけてきます。



「やることはやってきましたから、後は結衣を信じてます」



乗り合わせた男の乗客の羨望と嫉みの視線を一心に集めながら、俺は結衣に柔らかく笑いかけます。あぁあああああああああああ自尊心が気も気も気持ちィヒィイイイイヒヒヒヒッッッッんっはぁああああああああ!! 横の女は俺の相方以上恋人未満じゃぁあああい!! ヒャッホォォォォォォオオオオオ!! 祐亜くんの××が崩壊寸前でぇええええええええすぅぅぅ!! 


そんな顔と気持ちが一致していない俺を見て、結衣は照れくさそうに笑い、頬を少し赤く染めてくれます。



「わ、わ……私も祐亜のこと信じてるよ!」

 


せわしなく髪をいじって、視線を外すその結衣の姿に僕は、二人の恋が完全に走り出していることを確信してしまうのです。誰か!!?? 誰かぁあああああああ!!!!!!誰かお赤飯のご用意を!!!!!! 





と、少しの緊張と無量大数の悶々とした気持ちを胸に、俺たちは隣町にある決戦の舞台に到着しました。あまり来たことはありませんが、名前だけはよく聞いていたホール会場で、普段はプロの歌手やらオーケストラやらレスラーやらがてんやわんやしている、ちゃんとしたでかい会場。

今からここで大勢の人の前で、自分たちが考えたネタを披露するのだと思うと、もしかしたらこれ終わったら結衣ちゃんともう付き合えちゃったりニャンニャンしちゃったりするんじゃないかなっていう、そういう邪な気持ちが無量大数から恒河沙ぐらいには減ってしまいます。会場の外にはちらほらと、今日の参加者じゃないかなっていう方々がいらっしゃりまして、どいつもこいつも殺気を飛ばしております。



「流石に緊張しますね」



俺がそう聞くと、結衣は腕を組んで不敵な笑みを浮かべております。



「いよいよここから私たちの伝説が始めるんだよ」



「勝つ気まんまんすねぇ……」



「戦う前から負けること考える奴なんていないでしょ?」



「かっこいいィ……」



そんな感じで会場が開く前から、二人で露骨な程の別格オーラ的なものを演出していると、知らないお兄さんに声をかけられました。



「こんにちは、Y2さん」



一瞬何を言われているのか意味が分からなかったんですが、どうやらそのY2という呼称は俺たちのコンビ名でした。なんでだろう、5、6年振りぐらいに聞いたような感じがするなぁ……。全くしっくり来ていない。



「何か御用ですか?」



結衣が初めて俺と会った時みたいな、興味なさ気で適当な笑みを張り付けて対応すると、男の方は性格の悪さが滲みでている笑みを浮かべました。背格好的になんか大学生感あるなぁ……。すぐ後ろに眼鏡かけた気弱なお兄さんが、気まずそうに立っています。相方かな? その気まずそうな相方とは対照的に、俺たちに話しかけてきた茶髪のチャラついた男はぐいぐいきます。



「いやぁー、君本当可愛いね。相方くんもかっこいいし。君たちは顔で選ばれたのかなー?」



適当な笑みを張り付けた結衣の眉が、ぴくっと動きました。すごい……ナンパかと思ったら煽りに来たのかよ。ガチ感がでてきました。俺はどちらかと言うと、ちょっとした感動があったんですが、結衣の方は大分癪に障ったようです。



「……はぁ? どういう意味でしょうか?」



「いやー、今日来た人たちのネタを一通り見させてもらったんだけど、君たちがぶっちぎりでつまらなかったから」



「は?」



お、結衣が珍しく怒りましたね。後ろの気弱そうな男はもうやめなよって顔をしていますが、チャラ男は止まりません。



「君ならアイドルグループとかモデルのオーディション受けた方がいいよ。これ、人生の先輩のアドバイスね」



(俺もそう思う)



「なんなんですか、あなた。私たちは真剣にお笑いをやってここまで来たんですけど?」



「あ、そうなの。その割にはすげぇつまんなかったよ、マジで。高校生って肩書と顔補正がなかったらきっとこの場所にいないね」



「はぁ!?」



「あれ? どうしたの、そんなに怒って? 図星だった?」



おうおうおうおう……すごいな、結衣が気にしている所をピンポイントでついてきますよ、この方。大方挑発してこっちの調子を狂わそうとしているんでしょう。小物の考えそうな事です。

面白そうだから傍観していたんですが、結衣が今にも噴火しそうな感じでしたので、二人の間に割って入ることにします。



「どぉどぉどぉ……そこら辺にしときましょうよ」



俺が結衣とチャラ男の間に割ってはいると、チャラ男はその人をいらつかせるむかつく笑みを今度は俺に向けてきます。



「あら、どうしたの彼氏? 君も怒っちゃったの?」



「彼氏……ありがとうございます」



「は?」



困惑するチャラ男に、俺はできる限界の爽やかスマイルを向けます。



「別にここにフリースタイルダンジョンしに来た訳じゃないでしょ? 」



「あん?」



「人を笑わせに来たのに、怒らせてどうするんですか? それともあなただけレギュレーション違うんですか?」



「……」



「ごちゃごちゃ言わんと、どっちがおもろいか。ステージで決めましょうや」



俺がそう言うと、チャラ男はこちらを睨みつけたまま、気の弱そうな相方とどこかへ行ってしまいました。フン、失せろ。雑魚が。でも彼氏って言ってくれてありがとう。



「祐亜」



後ろを振り向くと、能面みたいな表情をした結衣が怒りで頬をひくつかせていました。やばい怖いです


「絶対に勝つ」



……イエス、ユアハイネス


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