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壊れるほど愛してるから1/3も伝わってないんだと思います




「うん、なかなかいけるわねこれ」




「はぁー、疲れただけだった。団体行動なんてろくなもんじゃない……何度暴力を振るえればと思ったか」




「あー、先輩の食べてるお菓子おいしそうですね。杏華、それ私にも分けてくださーい!」




波乱と激動の修学旅行から2日立ちまして、本日は日曜日のお休みの日でございます。




本当に心揺さぶれることがたくさんあったので、整理するために色々とひとりで考え事とかしたいなーと思っていたら、もう出番が体感3年近くなかったせいで名前もなかなか出てこない一つ上の先輩のあぁーそうそう、廣瀬雪那先輩みたいな名前でしたね。

それがですね何故か姉貴が買ってきたお土産を俺の部屋で広げてテレビを見ながら食べていて、その横で姉貴が恨み言を吐いているというカオスな状況なの、




そして俺をそれはベットの上で見ているのですが、横にはぴったりとさも当然と言った顔をした葵が肩をくっつけてきているというさらに倍付ドンな状況。




まさにハーレムといった様相、両手に花と言ったところです。

花って言っても棘があって、花弁から根まで全部猛毒の花だけどな!!




「あの、全員姉貴の部屋行ってくれません? 邪魔なんですけど、鬱陶しいんですけど」




「嫌だよ、散らかるじゃん」




廣瀬先輩のお土産に買ってきたクッキーをわざとらしくボロボロと食べてる姉貴は、なんの悪びれる様子もなくそんな事を言ってのけます。あーめっちゃいらつくわ。




一人にしてくださいよーもーう。

色々考えることが多くて、頭がパンクしそうなんですよ俺は。

恋愛トラブルに、来週の日曜は漫才のコンテストで、それが終わったらすぐに文化祭……。オーマイガー……。




目を瞑れば浮かんでくるのは柳や、結衣や……亜弥さんの泣き顔ばかりで。

完全に底なし沼に足を突っ込んでしまった感があります。




人生最高のモテ期を迎えていることは間違いないのですが、知らなかったです。

ハーレムなんてロクなもんじゃない。

心が、そしてその関係で胃がすごく痛いです……。

ここ最近ずっと現実逃避している感じがありますもの。




こんなハーレムラブコメの主人公はいやだー! 忍者だ! あーこれは嫌ですね! 分身の術とか覚えちゃってね。平等に皆様とラブコメしちゃって。そして術を解いて元に戻ると経験値も三倍。あー三倍気持ちいいってね、バカヤロー。




「私の後。あの三人と何かあったんですかー?」




脳内で祐亜の元気が出るテレビをやっていると、横にぴったりと張り付いた葵が油断してるとキスしてくるんじゃないかという近さで俺の顔を覗き込んできます。

もう動じない、柔らかな感触といい匂いぐらいではもう俺は動じないんだ!!

でもなんで女の子ってこんな柔らかくていい匂いがするんですかこれってトリビアになりませんか!? 




「あー、聞いた聞いた。四人とデートしたんでしょ。モッテモテー♡ どうドロドロした? 刺された? 」




俺と葵の話を聞いていた廣瀬先輩が目をしし座流星群かっていうぐらい輝かせながら、見ていたテレビに背を向けてこちらに向き直ってきました。




「心は刺されておりますわ……」




俺がキレも力もなく明後日の方向を見てそう返すと、廣瀬先輩は手を叩いてケラケラ笑いました。他人事だと思いやがって!!




「別にたかだか高校生の恋愛じゃない? そんな重苦しく考えないで適当におっぱいの大きい順にちょっかいかけてみて一番しっくりきた子と付き合えばいいじゃない?」





うわ、廣瀬先輩すごい他人事だよ。ここまで人は人に対して他人事になれるのかっていうぐらい他人事ですよ。そんなんのが許されるのはアトリエかぐやだけなんだよ!!」




それを聞いた隣の葵がポンと手を一つ叩いて、僥倖みたいな表情をしました。




「ほほー! 先輩いいこと言いましたね! 常々言っておりますがそれでいいんですよ! それで! この少子高齢化時代に一夫多妻なんてむしろ異常! 昔は妾やら側室なんてなんにも珍しくなかったんですから! 常識ですよ、常識!」




今の常識を守れないくせに昔とか海外の常識を持ち出してくるやつは、一人の例外も無くこれっぽっちも信用ならんのですわ……。




「気に病むことはありません祐亜! モテるのは罪でありません! 女を幸せにできないのが罪! 今の祐亜は『穴があったら入りたい』みたいな殊勝な事を思っているのかも知れませんが、ここはひとつもっとポジティブな思考に切り替えて『穴があるので入れてみよう』と。手始めにまず私から……ぶべら!」




葵がとち狂ったことを熱弁していると姉貴の方からテレビのリモコンがシュート回転しながら飛んできて、葵の顎にクリーンヒットしました。

当然なんだよなぁ……。




「花も恥じらう乙女が穴、穴言うんじゃねぇよ、あほ! もっと自分を大事にしろ!」




姉貴がわりとマジトーンで怒っていると、葵はいててとか言いながら自分の顎をさすって不満そうな表情をしています。

ていうかあなたの口から花も恥じらうとか言われてもちょっと……。




「いちち……。十分大事にしていますよ……初めてが初恋の人って最高じゃないですか。それにもしそういう事になったらなんだかんだ祐亜はきっちり責任取ってくれるって分かってますから」




おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい……。

当の本人を横にして何をとんでもない事を言っちゃってくれてるんですかあなた様。

こいつなんだかんだで甘くてお手軽な言葉で誘っておいて既成事実作って責任取らせる気満々だったんかい!! 闇金か!!




「あー、それわかるわ。祐亜くん、なし崩しでも、なんなら無理やり襲われてもそうなったら付き合ってくれそう」




「お前めちゃめちゃ舐められてるのな」




廣瀬先輩が食べてるお菓子をボリボリ零しながら俺の方を見ています。ふっざけんな!! 綺麗に食べろや!!

その横にいる姉貴も思い出ボロボロ!クッキーボロボロ!!




「あなたたち掃除してから帰ってくださいよ!」




「祐亜くんって結衣ちゃんが好きなんでしょ? それをみんな知ってるんでしょ? なんでそんなことになっちゃったの?」




廣瀬先輩がまめ柴みたいな顔してそんないきなり核心めいたことを聞いてきたので、俺は反射的に近くにあった毛布を被って隠れ身の術を図ってしまいました。




「はぁ……」




姉貴のクソでかため息くんが聞こえてきます。




「あはは! おもろ! まぁそこの横の子含めて簡単に引きそうな子が一人もいないもんねー。それに迷ってるってことは祐亜くんも満更じゃないんでしょう? あははー! 今から学祭に漫才の大会にクリスマスに色々あるねー? 地獄におーちーろ♪」




地獄は嫌ですぅ……天国、そのあいなかのせめて中国……、嫌だぁ、ゆうぴょん日本がいいのぉ。




「あ、学祭で思い出した。祐亜、俺もうバンドの出演申請書だしたからな。再来週に学祭の実行委員の前でやらないとだから。よろー。主に来夢の説得」




「はぁあああああああああんんんんんんんんんんん!!!!!!?????」




姉貴の急な宣言に俺は思わず被っていた布団をひっぺがしてベッドの上に立ち上がってしまいました。天井に頭ぶつけちゃいそうです。




「いやいやいや俺と結衣は来週コンテストやし! 来夢の説得ってお前……あのさ……前も言ったけど、あの、あれやで……!」




振った女性を後ろに置いて、好きな女の子の横でギター弾くとかどんな強靭なメンタルしてたら可能なんだっての! しかもその振った女を振ったやつが説得しろって気が触れてるっての!!




「修学旅行であたしのフラストレーションはもう限界を超えてる。なんで生徒会というだけで引率みたいな真似をさせられなきゃあかんのだ……もう無理。あたしもステージで女の子にキャーキャー言われたい!」




「俺がキャーキャー言うから! 」




「肉親に言われても何も嬉しくないわ!! 後輩の女どもにキャーキャー言われるあの感じがたまらんのだ! と言うわけで協力しないのなら殺す、ただただ殺す」




なんという世界一性格の悪い姉貴……顔は笑っていますが声と目が笑ってない。

この人本当にこんなくだらないことで新聞の一面を飾る気ですわ。

もう俺に反論の言葉を紡ぐことはできなくなってしまうのです。




来夢の説得に、漫才に、恋に……そして明日から学校だけどあの時以来顔を合わせていない亜弥さんに会った時にどう対応していくのか。

姉貴は完全に沈黙した俺をニコニコしながら見ていて、廣瀬先輩はすごくニコニコしながら見ていて、横にぺったりと張り付いている葵は俺の腕に絡みつきながら、大丈夫私がついてるからね的な慈愛に満ち溢れた表情でニコニコしています。




これはもうあれだ、あれですわ。

去勢するしかないな。

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