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結局どんな綺麗ごと並べても薄暗い雰囲気のところで美人どころと二人でいたらドキドキしちゃうものなんですよね。仕方ないね




来ましたよね、えぇ、ついにここまで来ましたねと。時は来た、それだけね。

紆余曲折ありましたがほぼほぼメインルートが開通したと、そういうことなのですわ。




薄暗い青紫に染まっていた空もだんだんと色味を無くし、代わりにパーク内の煌びやかで色彩豊かなイルミネーションが辺りを幻想的な雰囲気に包んでいきます。

吸い込んだ空気は肺が凍るように冷たいのですが、それでも俺はなんかこう体の底からなんていうの? 熱っていうのか? 成し遂げたぜ感ですか?そういうのが俺の体を全盛期の藤井隆ばりにホットホットさせています!思わず一人で歩いているのにスキップしちゃいそう! 




でもそのスキップしそうな足取りで向かってるのは他の女の所! 

なんだか今日いけそうな感じがしていた結衣ちゃんは葵ちゃんをはじめとした有志たちが無理やり連れていっちゃったの!!

あはは! やっぱりなんだかどこか狂ってね!? 

キラキラ、イルミネーションがラブホみたいで綺麗だなー!! たはー!!




さて、まぁこれは事前の約束通りなので仕方ありません。結衣を連行しに来た一行の中に今日最後のお供する相手の亜弥さんはいらっしゃらなくて、携帯に『どこどこに来い』と指令がございましたのでそこに向かっている次第です。




家族連れの姿がだんだんと少なくなって、心なしかカップルたちの数が増えてきたように見受けられます。寒さをごまかすように寄り添いあう姿……。

構わぬ、くるしゅうない。好きにするがよい!!

今の俺には心の余裕があるからね!!




「君可愛いねー? 彼氏はー?」




「ねー? 何してんの? 一緒に見て回ろうよ?」




「高校生? ほんと可愛いね?」




浮かれ足で待ち合わせの場所まで向かっていると、いかにもチャラそうな男たち3名が必死に女の子を口説きにかかっている場面に遭遇しました。




ほう、ナンパですか。たいしたものですね。




アニメ等においてはほぼ失敗するパターンしか描かれないこの行為ですが、なんだかんだチャラ男たちによるナンパの効率は極めて高いらしく、女の子もほいほい付いていくことも多い。

つまるところ根暗な草食系男子よりは女の子もグイグイ来てくれるチャラ男の方がとっつき易かったりするそうです(ゆうぴょん調べ)さらにロン毛金髪ヒョロガリと短髪筋肉質に茶髪ピアスも添えてチャラ男バランスもいい。

ではあるにしても断られる可能性もやはり高いし、キモがられる可能性も高い。そこを突っ込んでいけるというのは超人的なメンタルとは言わざるを得ない。

ファイトだよ!




心に余裕が出来た俺が見ず知らずのチャラ男たちに人知れず心の中でエールを送っていると、チャラ男たちの向こう側からナンパされている女の子のかなり不機嫌そうな声が聞こえてきました。




「失せろ。私は人を待っている」




おっと……なんだか知ってる人の声がしたような気がします。

というか多分知ってるわ。



拒絶の言葉を述べられてもなおチャラ男は一切退く様子を見せません。

オイオイオイ、死んだわ、あいつ。




「え? 誰誰? 友達? 女の子? 君可愛いから友達もきっと可愛いんだろうなー!」




すげぇよ、スケベな事しか考えてないことを恥ずかし気もなくこんな全面に押し出せるなんて……。君の前前前世はあれかな、徳川家斉かな?

上背が結構あるチャラ男たちの背でその子の様子は伺えませんが、さっきは明らかにイラついたような口調だったのに、その言葉に対しては少しの間の後妙にたどたどしい口調で返しています。




「むむむ……ともだ……ち、いや違う! あれだ!! その、あれ……彼氏だ! 彼氏みたいなものだ! というかほとんど彼氏だな!」




オイオイオイ、死んだわ俺……。




妙に上ずった普段あまり聞けないその声はやはり沢木・なんとか・亜弥さんのものでございまして。

またしても辺りの注目が集まりそうになってきたので、俺はいたたまれなくなって勢い良くチャラ男たちをかいくぐるようにして亜弥さんの元へと向かいました。

この時俺の頭には、万が一チャラ男たちがバイオレンスタイプだった場合でもどうせ亜弥さんがなんとかしてくれるだろうという現代っ子的打算があったことは最早お伝えする必要もないかと思われます。




「どうもー、ほとんど彼氏でーす。あはは……」




そう言いながら、亜弥さんの前に立ってチャラ男たちの方へ愛想笑いを浮かべながら軽く会釈をしてみます。

喧嘩早くないこと敵意がないことを同時にアピール! チャラ男たちは明らかにイラ立った表情で俺のことを睨みつけてきましたが、




「ちっ……おい、行こうぜ」




そう言いながらさっさと亜弥さんから退却してくれました。

良かった、話の分かるタイプのチャラ男で。君たちの英断のおかげでここに無血開城が果たされ申した。




ほっと一安心して振り返ると、亜弥さんは顔を真っ赤にしてプルプルと震えています。

そして絶好のシュートを外したストライカーみたいに天を仰いだ後一呼吸おいて、何を思ったのか俺の腕の方へとガシっとしがみつてきまして、




「こ、怖かったぁ……(棒読み)」




そう言ってのけました。




はぁーーーーーーー!!??




あなたがその気になったらあんな男3人瞬獄殺でしょうよ!? 亜弥さんの仮面ライダー初期の役者ばりの大根演技っぷりに目を点にしていますと、亜弥さんは今度は両手で顔を隠してプルプルと震え始めました。震えすぎだろ、牛かよ。




「お、おおおま……え! さっきの、ききき聞いてたのか!?」




恥ずかしすぎて死にそうな亜弥さん、気が利くゆうぴょんはすぐさまフォローに入ります。




「いやあの手の人達を追い返すにはあの言い方で正解ですって! それよりせっかくだし夜のイベント見ましょうよ! なんかプロジェクションマッピングがどうたらこうたらですごいのが始まるみたいですよ?」




なんかこの話題を膨らますと恥ずかしいし、それに何か取返しのつかないことになってしまいそうな感じがしたので俺は矢継ぎ早に話して、照れる亜弥さんの手を取って人混みの中を歩き始めました。




「ちょ!! いきなり……手をつなぐなんて……あぁもう!」




繋いだ亜弥さんの手はびっくりするぐらい冷たくて、その真っ赤にしている顔の熱を分けてあげればいいのにと思うほどでした。




夜空の星が見えないくらいに煌びやかなイルミネーションに照らされた俺の横を歩く亜弥さんは、その明かりにかき消えてしまわない程で。

まじまじと見てしまうと、やはり美人だなーって。

今日は普段下しているだけの髪を全体的にふわりと巻いて、少しだけアップさせていました。

それがとても新鮮で、結衣に忠誠を誓っている俺ですら不覚にも視線を奪わてしまうほどです。

いかん、いかんど……!!




そんな俺の視線に気づいたのか、亜弥さんは自分の髪を繋いでいない左手でペタペタと軽く触りながら不安そうな表情をしています。




「やっぱり、変だろうか? 有希と恋が無理やりしてきたんだがやっぱり私なんかにはこんな……」




「いやいやいやいや、めちゃめちゃ可愛いですよ」




と思っていたことを、亜弥さんの恐らくは狙っていないんでしょうが誘い受けみたいな言葉に俺は間髪入れずに返しておりまして。

すると亜弥さんは猫みたいに目をまんまるくした後に目を逸らして、首に巻いていた青黒チェック柄のマフラーを持ち上げて鼻のあたりまですっぽりと隠してしまいました。




「そ、そういう恥ずかしいことをさらっと言うな!」




亜弥さんが妙に色っぽいトーンでそんな事を言ったものですから、俺はめちゃめちゃ恥ずかしくなってしまって勢いで繋いでいた亜弥さんの手をすいませんって謝りながら離しました。

てか何普通に手とか繋いじゃってるんだ俺!!??

オイオイオイ!! どうした俺!! 結衣一筋何だろう!? 何をものの一時間も経たないうちに揺らいでやがる!!




「あ……」




亜弥さんのどこか名残惜しそうな声が聞こえてきましたが、俺はあえて聞こえないふりをすることにしました。耳悪い、俺の耳は悪いんだ!!













はてさて、げに恐ろしきは国内トップクラスのアトラクションパークと言うべきでしょうか。

ただでさえ異性の、それもとびっきり美人のクラスメイトと二人きりで夜中にこんなデートみたいな状況なんてございませんのに。ここは遊園地、アミューズメントパーク!!

雰囲気が良すぎるんだ!! 否が応でもドキドキしてくる!!

体を鍛えるならジム、勉強するなら予備校、愛し合うならラブホテル、死にたくなったら富士の樹海。まさに適所、そうするための場!!

いわばそうなるための場! 恋人たちがドキドキしちゃうための前哨戦のような場!

ましてや時刻は浅めとは言え、夜!! さらに倍率ドン!! 

しかもなんだか相手もイメチェンを図って少し浮ついてきた様子ときたもんだ!! ドキドキするなって言う方が無理な話ですわ!! 

ケニーオメガが飯伏の技出して、プリンスの技出して、AJの技出してG1取ったら最高にあがるじゃん!!そういうことじゃん!!




「祐亜?」




恐らく吊り橋効果でぐわんぐわん揺らされまくってる俺の少し後ろから、亜弥さんが話しかけてきます。




「なんでしょうか?」




努めて冷静に返すと、亜弥さんは辺りのBGMに消えてしまいそうなぐらいの小さな言葉で聞いてきました。




「私が冗談でもお前のことを彼氏って言った時、嫌だったか?」




そんな泣きそうな声であなたにそんな事を聞かれて、嫌だと言える男が果たしてこの地球上にいるのか? いや、いますね。一定数はいるはずです!! 心無い人間が!! 

さぁ、祐亜分かるだろう? 嫌われる努力!! お前は数%の心無い人間になるのだ!! さぁ!!

何の脈絡もなく結衣を世界で一番愛しているとカミングアウトしろ!! 

虎だ!! 俺は虎になるのだ!!








「ないないない! 嫌な訳ないっす!」








にゃゃーーーーーーーーーーーーーーぁあんん!!!!!!!!(猫)




ダメだぁ……おしまいだぁ……。

そもそも俺にそんな少女漫画に出てくるヒロイン以外どうでもいいぜ系男子ばりのサイコパスじみた漢気があったのならそもそもこんな状況になってないですもの。




「そうか」




どこか安心したような声が聞こえた後、空いていた俺の左手にさっきより少しだけ暖かな指の感触があたって、すぐに俺の手をしっかりと掴んできました。




バクンと心臓が大きく跳ね上がって、そしてなんだろう。上手く言えませんがあぁなんかまずいことになったなと。なんとなしに、俺はどこか客観的に思うだけなのでした。





こうして傍目から見たら俺も亜弥さんも完全に他と同じような、パークの雰囲気を盛り上げるカップルのような様相を呈している訳です。

手を振りほどくことなんて、こんな俺にできる訳なかとです。



しばらく沈黙が続いております。お目当ての目的地までそう遠くないはずですが、なんでかやたら長く感じます。喉はカラカラ、唇かっさかさです。少しも寒くあります。



喋るとなんかボロが出てしまいそうで、何を言っても正解じゃないような気がして俺は口を一文字にしたままにしています。

そもそも何が正解なんか分からないのですが。

そもそもそもそも正解が分かってたらこんなことになってないんですが。




「なぁ、祐亜?」




そんな網走の寒さよりこたえる沈黙を破ってくれたのは亜弥さんの方でした。

俺の手を掴みながら、今回はいつもの調子で話しかけてきてくれました。しめた! あざっす! ここから会話をリヴァイアスばりに無限に広げてみせるぜ!! じっちゃんの名にかけて! じっちゃんの名に!




「さっきの女が喜びそうな台詞、結衣や柳にも言ってきたのか?」





「………………………………………(難聴系主人公、難聴なのでそもそも聞こえない)」





ふぅ……ふぅ……寒い、寒いぃ。網走の比じゃない。もしかしてここって地球じゃなくて惑星トリトン?





「なんでお前みたいなやつのことを……」




亜弥さんはばっちり俺に聞こえる小声でそんなことを言うと、また黙ってしまいました。

しかしながら繋いでいる俺の手を離そうとはしません。むしろギリギリと指に込められた力は強くなっているように感じます。




はぁ~~~~~~!!!! 俺の耳めっちゃいいやん!!すごい聞こえてくるやん!!

あぁー!! めっちゃムラムラする!! どうなっちゃうの僕!?

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