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ラブコメなんて古いんですよ。これからはラブがあって、エクササイズがあるんですよ

「ねぇ……祐亜?」




「はぁ……なんでしょうか?」




「まさか私が祐亜とこうやって一緒に遊園地とか来るような仲になるなんて……。昔の私たちに言ってもきっと信じてもらえないですよね?」




「申し訳ないが完全に成し遂げた体で話すのはやめてもらいたい」




たくさんの人で賑わう、まるで夢の空間を切り出してきたような煌びやかなアミューズメントパーク内でございます。

ブレザーの制服の上にマフラーを巻いた葵は俺の腕に絡みつくようにぴったりとくっついて、全身から幸せオーラを出しています。

厚手の冬服越しでも伝わるふわふわで柔らかな感触に騙されそうになってしまいますが、そこは漢・祐亜。

必死に2chで踏まされたブラクラ画像を思い出し煩悩を相殺します。




それにしても葵は本当に幸せそうな顔をして、喉をごろごろ鳴らしてる猫みたいに俺にくっついてすりすりしてきます。

正直数々の女性との接触がなかったらこれはころっとやられていたんじゃないかと思うような圧倒的オフェンス力です。



でもせっかくの修学旅行だし、あんまり邪険にするのもなんだか可哀想な感じがします。

ここはちゃんと葵にも楽しんでもらえるように俺も楽しまねば!! 俺は結衣が好きだけどね!!




「んで……どこ行きます? 人気の所は早く並ばないと結構待つ感じでしょ?」




「ぅうん? ふーん、そうですねー。暗くてぇー誰もいなくてぇー二人きりになれる所がいいなぁー、なんて」




「ふーん。帰れば?」




猫なで声で俺の腕に絡みついてくる葵の目は今にもハートマークが浮かんできそうな感じです。




「お前さ……そんなキャラだったけ?」




一目がすごい気になるというか色んな視線を向けられながら人混みの中を歩いているんですが、そんなこと気にせず俺に腕にひしっとくっついてこのままミラクルフュージョンしそうな感じの葵に長らく思っていたことを聞いてみることにしました。

葵は不思議そうな顔して、俺のことを見上げてきます。




「え? 男の子って積極的でちょいエロな女の子が好きって聞いたんですけど……」




誰にだよ……。

葵は不思議そうな表情を浮かべています。




「杏華が祐亜の部屋にあるえっちな本の傾向からも間違いないって言ってたのに……」




「えんっ!!!!」




直接嗅いではいけない化学薬品を直に吸ってしまったようなリアクションを取ってしまいます。あのバカ姉貴……ちょくちょく並びが変わってると思うことはあったけど見るだけには飽き足らず幼馴染にその内容を漏洩させるとは鬼畜所業の極みっっっ!!!! 

どれを読んだ!! 如月〇真か!? た〇けのこ成人か!? アー〇ナルか!? 今は昔、宵野〇タロー、赤月みゅ〇とか!?




「……片思いしてるめっちゃ可愛い女の子もいるって聞かされたし」




「え!? なんだって!? (全ギレ)」




「私のこと好きだったくせにー!!」




「すいません!! こっち側の耳ピーナッツ詰まってるんでもっと大きい声で言ってもらえますか!?」




「新手のラノベ主人公か!!」




と言われながら葵に耳を軽くつままれ、こんなぬるついた夫婦漫才のようなやりとりをしながら我々はとりあえず人気のアトラクション『ヘリー・パッター』に向かうことにしました。

なんかすげぇ3Ⅾでばびゅんばびゅんすると専ら噂で気になっていた所でした。その魅力、骨の髄までしゃぶりつくしてやるれぇ……。




眩暈がしそうなぐらい人が多くて、くっついてないとはぐれてしまいそうです。かと言って思春期の男子にあまりくっつかれるのもちょっといかんです。ましてや俺のことを好きって言ってくれる可愛い女の子に……。

その女の子は相変わらず俺の腕にぴったりとくっついたままで、でも今度は難しそうな表情を浮かべています。




「ねぇ……祐亜?」




「こちら祐亜」




「昔の私ってどんな感じでしたか……?」




「はぁー!? 古いアルバムでもめくってありがとうって呟いとけばーか!」




「一応真面目に聞いてるんで茶かさないでください」




急な葵のマジトーンボイスに背筋がひゃんってなりました。そうですね……昔の葵、俺が好きだった頃の葵と言いますと……。




「真面目で頑固で泣き虫で世話焼きで意地っ張りでお化けが苦手で、俺につっかかってきてすぐ泣いて……」



葵は何も言わず真っ直ぐ前を向いたまま耳を真っ赤にしています。ほう? どうやら貴様にもまだ一かけらの恥じらいという感情が残っていたようだな?




「まぁ……なんだかんだ結構長いこと一緒にいたし、お前普通に可愛いしそりゃ好きになるというかなんというか……」




何を言っているんだ俺……。




「……昔の私に戻ったら、また好きになってくれる?」




「それは……えっと……ごめん」




「こういう時ってモテモテの男の子ってもっと含み持たせてくれるもんじゃないんですか?」




葵はそう言って俺のほっぺを軽くつねってきました。笑ってるけどその顔は少し寂しそうにも感じました。

あぁ……なんというかこれは。気まずい感じというか……まぁ、結衣が好きって一応公言してるのにこんな流されて色んな子とこんなことしてる俺も悪いというかなんというか……。




気まずい空気のままアトラクションの列に並んで、前から横から後ろから楽しそうなカップルとかそんな人たちの楽しそうな声が聞こえてきて。

せっかくの葵の修学旅行の時間、もうちょっと気の利いた事言ってあげれば良かったなんて




「まぁでもあれですよね。婚約するまでは罪に問われませんよね! 祐亜も想いだけじゃなく色々味見してからの方がいいと思います!」




これっぽちも思いませんね。

強く成長してくれて嬉しいような悲しいような……。




「それにしてもこの次世代アトラクション楽しみですねー! 祐亜3Ⅾ酔いとか大丈夫ですか?」




「この手のアトラクション乗ったことないんで分かんないですな」




「私も初めてです! もし酔っちゃったら私が介抱してあげますね、膝枕で!」




「はっはっはー、そいつはいいや……」




~15分後~




「っうっうう……気持ち悪いですぅ……」




そこには俺に膝枕してもらって、うめき声をあげている柊葵さんの姿がありました。

最初はキャーキャー言っておりましたが、だんだん声が聞こえなくなって、最終的にはホタルイカみたいな顔色で天に召されかけておりました。




「あれは……人類には早すぎるのでは……?」




「俺は結構楽しかったけどな。水飲む?」




「大丈夫です……」




アトラクションから離れて、少し人気のないベンチで葵は死に体です。いつもだったらエロワードでもぶち込んでくる感じですが、ガチできつそうな表情をしている結構マジでやばそう。




手で軽くパタパタと仰ぎながら、葵の顔をなんとなしに眺めています。

長いまつ毛に、思わず触りたくなるような淡い桜色の唇、細くて艶々してる髪とか……黙ってりゃ最高に可愛いんだけどなぁ。




「ごめんね。私、ここで休んでるから祐亜まわってきていいですよ……」




「急にしおらしくなるなって。てか、俺ってそんな薄情に見えます?」




俺が笑いながら言うと葵は目を瞑ったまま口元を微かに緩ませました。頬が少しだけ紅くなってます。

そしてか細い声を絞り出して話しかけてきます。




「祐亜は昔からあまり変わってませんよね。時々何言ってるかわからないこと言うし、根性無しだしヘタレだし」




「根性なしとヘタレは同じかな、かな?」




「でも……」




葵は横向きで寝ていたのを、仰向けになおって俺の目を真っ直ぐに見つめてきました。その少し潤んだ瞳は直視できないくらい眩しくて。




「昔から祐亜の優しいところ、大好き」




「タイムマシンがあったらいいのに。そしたら祐亜のこと絶対渡さないのに……」




俺は何も言えなくて、ただ時間が過ぎるまで葵を膝枕して……。















「あっ……」




目の前に偶然、来夢と昨日一緒に自由行動回った梨乃ちゃんが歩いてきて、まるで珍獣を見るような目でこちらを見ています。

あれ二人って仲良かったんだーとかこちらから世間話をふる間もなく、こちらがこの格好に至るまで経緯の説明もできず。ただ来夢は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべて




「俗物が」




と冷たく言い放って一瞥をくれることもなく、二人は去って行ってしまいました。

違うのぼく! そんな軽い男じゃないの!! と言っても信じてもらえないよねぇ……はぁ。

なんだろうな、やりきれないなぁ……。楽しみたいだけなんだけどなぁ……。

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