今でもこんなヤンキーとか実在しているのでしたら是非遠くから眺めてみたいですね
ベッドから体を起こし、時計を見る。朝の7時でした。今日は日曜なのに些か起きるのが早かったですな。
いやはや……悪い夢を見ていましたよ。そのせいかなんか全身に嫌な汗をかいています。
なんか昨日せっかく他の男子たちを出し抜いて学校一の美人さんと仲良くなれたのにまさかラブコメ的な展開が一切起きずお笑いの相方に誘われるとかいう本当に全く意味のわからない事態になってしまうみたいなね!
はぁ……悪い夢……あはは。
うん、現実!
なんかまだ眠いので二度寝を決め込むことにしました。
夢の世界だったら、俺のことなんの条件もいきさつもなく好きって言ってくれるかもなぁーあはははは!!
幸せらぁー
俺はそのままウトウトと深い眠りに落ちていきました。
どれぐらい経ちましたかね。
ガッシャァァアアアアアアアアアアアアアアアンンンンっと!!
突如室内に鳴り響いた窓ガラスが割れる音で俺はベッドから跳ね起きました。
「はぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!???」
何事かと! ご用改めかと! 焦った俺がマッハで周囲を見渡すと、自分の枕の横にMDコンポサイズの大きな石がありました。
なんじゃ!?こらぁああああッ!! もしこれが隕石だったらこの街ごと消滅してるぞ!!
寝起きなんで、謎の思考回路を展開しながらとりあえず窓の外を恐る恐る覗き込んでみます。
あ、俺の部屋二階にあるんすよ。
「こらぁあああああああ!!!! ボケぇぇええええ!! 」
これはこれは……。
ネット上では馬鹿にしているけど実際に渋谷とかで会ったら目を合わせずに逃げちゃうタイプの怖いこわーい、けど家族に感謝している歌とか好きそうなお兄さん達が10人程。皆さん手には鉄パイプをご持参で。
「いい肩してんねぇー!」
そう言って部屋に引っ込むと、さらに石と怒号が飛んできました。
あぁ……頼みの姉貴は今日野暮用で学校とか行ってたし、父ちゃん母ちゃんはそもそも家にいる方が珍しいし……俺はこの時悟りました。
うん、死んだな。
「おい、てめぇ誰に断って神村結衣と仲良くしてんだコラァッ!?」
「仲良くなんてッッ!! 滅相もございやせん!!」
俺は今、街はずれの廃工場で鉄パイプを構えた怖いお兄さん数名に囲まれてます。てかどこに申請を届けないといけないのですか!! 役場ですか!?
はぁ……まさか神村結衣が学校中の男どころかこんな怖いお兄さん層にまで影響を及ぼしてるとは思わないですよね。すげぇよ、恐れいったわ。俺死にそうなんすけどね。
一人の頭にバンダナ巻いてるお兄さんが俺の頬に鉄パイプをペチペチと当ててきます。
あはは……ひんやりして気持ちいいやぁー。
「まさか、ヤッたりしてないだろうな?」
辺りの空気がピリッとしてます。俺は声を大にして言いました。
「神に誓ってもいい。私は断じでヤっていないッッ!!」
「何タメ口きいてんだコラァァアアアアッ!!!!」
「ひぇぇええええええええええええ!!!!」
しまった!! こういう怖い系のお兄さんはこういうなんかタメ口とか敬語に厳しいんだった!!
「こいつ、殺しとくか?」
「だな? てか最初からそのつもりだったしな」
「二度となめたことでかねぇようになぁ!!」
ああ……駄目だ。最後の人大事な所噛んでるし。まだ17年しか生きてないのに。お父さん、お母さん、お姉ちゃんごめんなさい。先に逝く愚息、祐亜をお許しください。そして息子のちょっとした趣味趣向が知りたくなかったらベッドの下は漁らないで下さい。あなうらめしや。
こんなことなら、本当に神村結衣に手を出してあんなことやこんなことをしてから死にたかった。
数本の鉄パイプが俺に振り下ろされようとした時、完全に覚悟した俺はそっと目を瞑りました。願わくば早めに失神して痛みを感じませんように……。
その時です!
「そこまでよ!!」
テッテッテー♪テレッテテッテテー♪(某ごくせんのヤンクミ登場のBGM)
聞いた瞬間即ヘブン状態に陥る、あの女性の声が廃工場に響き渡りました。
フフフ……。
忘れていたよ。
そうだった……。
僕はこの物語の主人公だ!!!!フハハハハハハハハハハハハ!!!! ミドレンジャイより人気が出るまで死んでたまるか!!
その廃工場に颯爽と現れたのは、この薄汚い廃工場にはあまりに不釣り合いな神村結衣と謎の美少女4人でした。
「私の大事なボケ担当には指一本触れさせないわよ!!」
何故か日曜日だってのに制服姿の神村結衣は威勢良く怖いお兄さん達に言い放ちました。しかし、怖いお兄さん達は既に勢いあまって僕に鉄パイプを振り下ろしてました。痛い、痛い痛い痛い。
後2秒早く来て欲しかったですね。
というか!!
この場にあんなに可愛い娘さん達がいらしても意味無しじゃないですか!?
逆にこの怖いお兄さん達の慰めものになってしまいますじゃないかい!?
男は狼なのよ!? 気をつけなさい!! 年頃になったなら慎みなさい!!
「おいおい、わざわざ彼女がお出迎えか?」
ヒューヒューと怖いお兄さんたちが俺の肩をがっつり掴んで馬鹿みたいに笑います。
聞こえなかったかな? 彼女今僕のこと名前じゃなくて『ボケ担当』って言ったの。
しかし神村結衣はそんな冷やかしなど歯牙にもかけず、取り巻きの謎の美少女軍団に何か指示を出しています。
やめて!! 馬鹿なことはしないで、こいつらに変態プレイを強要される前に早く逃げて!! 俺のことは別にどうでも……………できればなんとかして俺も連れて逃げて!!
叫びたいんですが、ちょっと怖くて無理です。こんな情けない祐亜くんを許して……堪忍や、堪忍やで。
もう駄目だ。
リューク!! いるんだろリューク!? もっと面白いものを見せてやるよ……だからここにいる全員の名前をかけ!!
うわぁあああああああああん!! やっぱりもう駄目だ!!
軽く現実逃避しかけてる俺の耳に神村結衣の声が響きます。
「みんな、殺さない程度にね」
へっ?
「了解しました」
謎の制服美少女たちは、神村結衣にそう言ってこっちにゆっくりと向かって来ました。
あの制服は俺と同じ南高校の……。
「なんだ、俺らとやる気なん?」
怖いお兄さんたちはそう言って馬鹿笑いをしました。つられて僕も笑った。
「ちょうどよくね? 俺らも飢えてたし? 神村結衣もこの美少女達も食っちゃえば?」
怖いお兄さんたちはそう言ってなんかいやらしいテンションぎんぎんにしてます。こいつらの目、本気……。こいつらは10人、あっちは女の子5人。
「俺の事はどうでもいいから、マジで逃げろ!!」
さすがにチキンハートの俺もこれには叫びましたよ。すると、一人の怖いお兄さんの鉄パイプが腹で炸裂しました。目の前が一気に暗くなって、喉元に強烈な嘔吐感がせりあがり、視界は涙で滲んでいます。
当然俺はうめきながら地面に崩れ落ちるわけです。
顔に傷のある怖いお兄さんが、地面に伏している俺の髪の毛を掴んで顔を上げさせます。
「坊ちゃんは黙ってみてろや……今から特等席でお前にもいいもん見せてやるからよ?」
そう言って不気味に笑って、謎の美少女達の方へと鉄パイプを引きずりながら向かっていきます。
「に……げ……」
俺はもう声を出すことすら出来ません。ごめん、神村結衣とその取り巻きの人たち……。
ボッキャアァァッッッ!!っと。
不意に俺の耳にまるで骨が砕けるようなそんな鈍くて嫌な音が響きました。
俺がよーく視界を凝らして見ますと、意気揚々と向かっていった怖いお兄さんの一人がぐぅの音もたてずに地面にドサリと崩れ落ちました。そこには一人の可憐な女子高校生が長い髪をなびかせながら右手の拳を前に出して立っていました。
はぁ? えっと………………はぁ?
何が起こったからよく分からない俺と怖いお兄さんたちを尻目に、怖いお兄さんを沈めた娘さんは無表情でこう言ったのです。
「貴様らのような連中には虫酸がはしる」
えっ? えっ? 可愛い顔してそんなこと言うの?
そして惨劇が始まりました。
かつて古い映画で見た日本の光明なソードマスター。宮本武蔵の肖像画、これは一見ただの肖像画だが、識者によるとこの肖像画はただの肖像画の範疇を超えていると言う。開かれ抜かれた鋭い鷹のような眼孔、ほどよくリラックスされたグリップ、重心の定まらないいつでも一歩を踏み出せるすり足、それらの統合。その全てがこの肖像画に描かれているのだという。
曰く宮本武蔵の身体能力は近代金メダリストのそれを遥かに凌駕するとッッ!!
それが……重なるッッ!! この女子高生の姿と宮本武蔵がッッ!!
この女子高生の圧倒的存在感ッッッッ!!
次々に肉塊になっていく哀れな青年達と、その返り血を浴びても眉一つ動かさない謎の女子高生戦士、いやグラップラーたちッッッッ!!!!その鍛え抜かれた無駄のない筋肉はまさしくダイヤモンドッッッッ!!
この時、現場に居合わせた県立高校に通う徳永祐亜(17)は後にこの世紀の惨劇の唯一の目撃者として同級生に何百回も同じ話をさせられることになる。
いやね、一人の可愛らしいロリっぽい顔した女子高生がな、倒れてる兄ちゃんの手と足をこー掴んでだな。
わかるかな? バサッバサッと、こーバサッバサッと。タオルみたいに、バサッバサッバサッと。人間でやるんだよ、あれを。
青年は真っ青な顔してたよ、あれだけ力の差を見せられたらね。
えっ、その後? タオルだもの、ほおってたよ。
いやね、よく美少女戦士が月に変わっておしおきなんて言うだろ? 俺、てっきりそれはさ、こーキメ台詞とかさSM的な意味だと思ってたんだよ。それがな、違うんだよ。
言葉通りの「肉体的おしおき」だったんだよ。
元ネタが全くわからない人にはさっぱりな解説を止めますと、結論から言います。
五分足らずで決着しました。鉄パイプ抱えた大の男10人が血だらけになって呻き声をあげながら地面に倒れています。
何が起こったか俺にはよくわかりません。しかしこれだけは自信を持って言える。
ビビってちょっと漏らしましたッッッッ!!
そんな俺の下へと少し心配しているような慈悲に溢れた笑みを携えて神村結衣が走って近づいてきました。そしてしゃがみながら俺の頭を優しくなでてくれます。
「祐亜危なかったね……万が一のことが起きなくて良かった……」
いやいやいやいやいやいやいや、よく見てよく見て!!完全に僕の頭から血が出てますけど! 万が一のこと起きてますけど!
そんな大ボケかました神村結衣ですがとても心配してくれていたようで、なんと自前のハンカチーフで俺の頭から流れる血液を拭い取ってくれたとです!!
あえて言おう!! 興奮したと!!
一億万ドルの夜景が頼むから勘弁してくれてって言いそうな笑顔を浮かべています。こんな笑顔、恐らく銀河系を800万光年探しわたって見つからないですよ。そのハンカチ下さい!! 血の付いた部分だけ切り取って捨てるんで!!
しかし、今の俺にはやはりそんなことより気になることがあるわけで、それは勿論神村結衣の後ろに何事も無かったかのように返り血をスカートやソックスに付けて平然と立っている後ろの女子高生についてであることはもう論ずるまでもないことなのです。
「あっ、この子たち? 私の友達兼ボディーガードと言うか……いつもああいう連中から守ってもらってるんだ! みんな同級生なんだけど見たことない?」
こんな美少女たちに気づかないとは……でも神村結衣に対して2年間興味を示すまでは一切眼中になかった訳ですので、つまり自分は自分の興味のあるものしか視界に入らない困った人間なのですな。
「私の周りはよくああいう奴らが寄ってくるの……中にはこんな奴らよりも骨のある奴も、 という訳でそんあ連中はちぎっては投げちぎって投げしてくれるのがみんななんだ! みんな全国トップクラスの最強女子高生だから。多分これから祐亜もお世話になると思うから紹介しとくね」
あれ、神村結衣さんは究極召喚を求める旅でもする気なの?
そんな俺の気など全く関係ないようにグラップラー女子高生の紹介が始まりました。
「そっちの一番左側の子が樋口恋」
そう言って深々とおじきをした少し長めのボブショートの女の子は俺より顔一つ分くらい小さい身長で、ロリ顔ですね。おっとりとした表情を浮かべていてほんま可愛らしいですわ。スタイルはまぁ、スラっとしてますね。キュッ、キュッ、キュッと言いますか。
「それで、その横の子は高宮有希」
神村結衣の紹介を経て、軽くおじきをしたツインテールのその子はニコニコしていて、なんか常に笑顔を絶やさない太陽みたいな子ですな。あはは、これはこれは……。お兄さん視線のやり場に困っちゃったな。非常に発育のいいお嬢さんでしてね。ドドドドドドドドン!! キュッ!! ボン!! って感じです。いやはや……おほほほほほ。それは本物ですか?
「そして友希のさらに横の子は沢木亜弥。みんなのまぁ、リーダーみたいな感じの人怒ったら怖いよ?」
流石リーダーと言いますか。腰までかかる長髪に凛とした表情はアイドル顔負けの美少女具合で、さらに日本人離れしたスタイル。ズァン!! キュゥワ!! ズギャン!! って感じです。これは神村結衣に負けるとも劣らずみたい感じですよ。
「最後は上杉柳。この中で一番強いから怒らせちゃ駄目だよ?」
無表情で紅い髪のショートカット少女。わかってます。ええ、一番小柄な体系なのに一際目立ってましたからね。
ちょっと手のひら見してもらってもいいかな? うん、そう手をね、こー開いてね。握ってるものちょっと見してくれるかな? あっほら、それそれ!!
うん、それ人の歯だよね?
まぁ、こう改めまして4人を眺めますと壮観です。普通にティーン雑誌の表紙4週連続で飾れそうな連中ですな。
最後に神村結衣は俺に指を差していたずらに笑いながら言いました。
「みんな空手、柔道、合気道、テコンドー、ボクシングとか嗜みがあるから、可愛いからって手出したらえらいことなっちゃうよ?」
神に誓ってもいいッッ!! 私は断じて手を出さないッッ!!
「それじゃあ、祐亜も自己紹介しなよ?」
えっ?
なんでこんな最強の人達の自己紹介の後に俺なんですか?
言うならピーター・アーツが自己紹介した後に、高校生の喧嘩番長みたいな奴が自己紹介するようなもんですよ。
参った……4人の純情可憐な視線が俺に送られています。いや、ここは普通にウケとか狙わずにシンプルにいけば……。
「祐亜ってね? 凄い独創的で面白いんだよ!」
ハードルあがりましたありがとうございます!! ありがとうございまぁあす!!
しかし思わずこちらからグッジョブッ!! と送りたくなるその無邪気な笑顔を俺は裏切ることはできなかった訳です。すなわち腹を括らざるを得なくなったのですな。
ヘイカモン!! うちの高校の二年で一番誰が面白いか教えてやるよ!!
「YO! YO! 俺の名前はT to O to K to U to N to A to G to the A!! ウッン!! YO!! イェアー? YUA TOKUNAGA!!!! 地球に生まれて!! この☆一歩も出たことねぇし!! そこら辺のモビルスーツだいたい友達!!」
この空間は重厚な沈黙によって支配されました。
樋口さんと高宮さんが下を向いて肩を震わせています。
沢木さんと上杉さん、顔の筋肉を微動だにさせず俺のことをまじまじと見つめています。
違うか!? 違うか!?
いろいろ候補はあったんだよ!! えっ? あん!?
あっ? あれか? ハルヒが良かった? ハルヒバージョンが良かったの?
『スペースコロニー出身、徳永祐亜。ただのモビルスーツには興味ありません。この中に百式、アッガイ、ギャン、ジムスナイパーカスタムがいたら私の所に来なさい。以上』
ダメだ!! うわぁああああああああん!!
俺はまるで手元に戦うポケモンが居なくなったトレーナーのように目の前が真っ暗になりました。
横目でチラッと神村結衣を見ます。
彼女は俺を見ながら非常に楽しそうに微笑んでいます。
まさか、この女最初からこれを狙っていたのか!?
度S!! 生まれ持って圧倒的度S!!




