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普段怒らない人が怒った時の絶望感は異常ですね


「ぅう……あんな恐ろしく怒らなくてもいいじゃないですかぁ……やっぱり祐亜が本気で怒ると杏華より怖いです」




「全く! 怒るの苦手なんだから怒らせるなっての……反省してるなら良し! 俺と結衣は明日大舞台なんだから今日は姉貴に構ってもらえよ?」




「ちぇー……わかりましたよーだ」




俺の部屋の真ん中で正座していた葵はそう言って不満タラタラで部屋を後にしていきました。いまいち反省してないですね、あの万年発情期は……。




「さーて、すいませんでした。早速練習しましょう……ってあれ?」




部屋から葵を追い出して、ベッドに腰かけている結衣の方へと向いてみたのですが何やら結衣さん涙目になっております。

そして俺の制服の裾をキュと掴んで、今にも泣きだしそうです。




「あの……どうしました?」




俺が訳わからんって感じで尋ねますと、結衣さんはまるで「トトロいたもん」の台詞のような涙を堪える感じの調子で、




「祐亜、怒ってない……よね?」




って目をウルウルさせながら言ってきました。

あぁーさっき葵にキレてたのを自分も怒られてるって思っちゃったやつですねこれは。




ハワイの気候よりも穏やかな気性をしていると自他共に認める俺ですがやっぱり怒る時は怒る訳でございまして。

声を荒げてひたすら怒鳴り散らすってことはできないので、とりあえず開口一発怒鳴った後はひたすら無口になって相手をじっと見つめてたまに低音でボソっと何かを言うっていうかなり面倒くさい怒り方をするタイプなのです。




中3の時姉貴と喧嘩した際もこのキレ方をしたのですが、しばらくは強気だった姉貴も泣きだしてしまい

「祐亜、ごめんなさいお姉ちゃんのこと嫌いにならないで」

と泣きついてきたのは『杏華普通の女の子宣言』として俺と祐一の間で今なお伝説として語り継がれています。

まぁ、普段怒らない人が怒ったらありがたみがあるよねっていう話しです。




「勿論結衣には怒ってないっす!! 気分も落としてないっすよ!! ウッキウキです!! すまいるすまーーーーいる!!」




横にいた結衣が思いのほかダメージを負っていたようで、俺がいつも以上におちゃらけて見せるとすごくホっとしたような表情を浮かべてこちらにガシっと抱きついてきました。ぽぉぉぉうううう!!!!! ふぇぇぇええええええ!!??




「良かった……あれはいくら何でも心臓に悪すぎるよ……私が葵ちゃんだったら死んじゃってる」




「いやまぁー普段あれくらいだったら怒らないんですけどね、今日はタイミングが悪すぎましたね?」




「タイミング?」




結衣が俺の肩辺りに顔を鼻をスンスン言わせながら不思議そうに尋ねてきます。

らめぇぇええええええ!!?? お風呂に入っていないぼくの匂いを嗅がないでぇぇぇえええ!!!!




「あ、あああああああれですよ!! あ、明日は結衣と俺の大事な日だって知ってるくせにちょっかいかけてきたのが少し腹立っちゃってっていうやつでして!!」




「ほうほう!」




飼い主にじゃれつく犬みたいに結衣が俺の胸元にわざとらしく顔をこすりつけてきたりしてうわぁあああああああああああああ!!!!! 理性が!! 理性がぁあああああああああああ!!




「明日は俺も……がんばふわぁえああ……」




ダメだ……何もいえねぇ(KTZM並感)




結衣は俺をぎゅっと一回きつく抱きしめた後、その後離れてくれました……離れてしまいました。表情はなんだかとても嬉しそうです。

あぁ……すげぇ柔らかくて、良い匂いがしました。すごい、存在自体がもう柔軟剤かよ。




「ふふん♪ 祐亜も色々考えてくれてるんだね? けど明日ぐらいだったらよ余裕だよ!」




「だって私と祐亜だもん!」




あぁ……この笑顔と台詞を聞き出すために一体どれほどの月日を費やしたことでしょうか。実時間は半年も経っていないのですが体感で10年近くの月日が経過したような気がします。




けど、本当心の底から笑ってくれる、最初の頃みたいな嘘っぽい笑顔じゃない、本心で結衣が微笑んでくれるのが僕は嬉しくてたまらないのです。




「けど怖すぎるから、今後は祐亜は怒るの禁止!!」




「は、はい……」




「よろしい! それじゃあネタ合わせしよっか!」




結衣は俺にビシっとした指を指した後、俺がおずおずと首を縦に振ったのを確認すると満足そうな表情を浮かてベッドからひょいと立ち上がりました。




この後滅茶苦茶稽古した。




と言っても2時間ぐらいですが、少しずつ日没の時間も早くなってきて結衣が満足するころにはすっかり外は宵闇でございました。

姉貴が飯を食っていけと誘っていきましたが、結衣はそれを断って、なんでも近くに高宮’sカーが来ていたらしいのでそれに乗って帰っていきました。




余裕だなんて言ってたけど、結衣の目はなんだかんだ言って結構ガチでした。やっぱりお笑いに関してはガチなんだなぁ……。




「結衣はお笑いよりは、モデルとか女優とかそんな感じだけどなー」




徳永家の食卓、姉貴がテーブルの中心にある回鍋肉を器によそいながら不思議そうに呟いています。




「人間向いていることと好きになることは必ずしもイコールにはなりませんからね」




そして当たり前のように俺の横に座って味噌汁をお上品にすすっている葵の姿。こいつ休みの日いつもうちにいるな……。




「なんですか祐亜……私のことジっと見つめて……。わ、わかりました、い、いいですよ、うぅー」




「アホか」




「あう!」




俺が葵に対してジト目を向けたら何を勘違いしたのか急に目を閉じて口を固く結んたので、とりあえずデコピンしときました。




転校してきた時はどうなることかと思いましたけどこれぐらいのアホっぽさならまだ絡みやすいなぁーなんて思ってしまう俺はきっと甘いのでしょう。
















以前のコンテストとは違って今回はぐっすりと眠ることができました。目覚めスッキリです。

普段の休みの日の起床時間より一時間早く起きた俺はとりあえずシャワーを浴びて身だしなみを整え、昨日晩飯の残りをチンして暖めて一人で食いスムーズに家を出て行きました。




「ゆうあー。あとからおうえんにいくからがんばふぇーふぁ……」




「おーがんばー。おあねちゃんもあとでいくどー」




寝起きだけはクッソ可愛い二人がパジャマ姿の寝ぼけ眼で玄関まで見送りにきてくれました。あんたらもう一生寝起きだったらええのんにな!!




本日の会場は普段はバンドのライブとかで使うようなホールで行わるようで我が家から最寄りの駅から30分ぐらいの場所にございます。




今回の審査基準は4人のお笑い芸人の審査員のポイントが4割、見に来てくれているお客さんのポイントが6割という感じで審査員だけでなく見に来てくれているお客さんの心を掴むのも重要になってくるようです。



素人お笑い大会とは銘売っているものの普通にお笑い養成所に通っている人たち、つまりまだブレイクするきっかけがないお笑いコンビとかも出てくるとは結衣の談。まぁ参加条件は結成5年未満のコンビってだけですしね。

テレビとかも最終的に絡んでくるなら売れそうな人たちをぶちこんでくるのも当然でございます。




「そういう人達に……素人でもここまで出来るって見せつけたいよね?」




会場して一時間、全30組中10番目の出演順である我々が舞台にあがるまで後1分もない、そんな時に結衣がいたずらっぽい頬笑みを浮かべて俺を見つめてきました。




高校生であることを強調するため俺たちは学校の制服に身を包んでいます。




「全くでございますな」




300人は収容できるホールの8割以上が埋まっていて、多くの笑い声が舞台の裏側まで聞こえてきます。




その笑い声をもっと大きくするために、その笑い声を自分たちで生み出すために、俺と結衣は手を繋いで眩しいスポットライトがあたる舞台へ、割れんばかりの拍手をもらいながら走って行きました。















「「こんにちわー!!」」



「私たちー」



「「y2です!!」」



「という訳でやって参りました。私たちね、見ての通り現役高校生です。私なんか現役JKですよ! あ、可愛いだなんて……ありがとうございます!」



「現役ジョンケネディ?」



「大統領じゃないよ! 女子高生ですぅ!」



「そんなことやより結衣さんや聞いておくれやぁ……」



「どうしたの?そんな軽く玉手箱の煙あびたみたいな喋り方になって」



「実は大学生になってコンビニバイトをすることになるかと思うと夜も眠れなくてもう俺なんて死んだ方がいいんだ!!」



「すっごい脅迫観念だね!! 誰も大学行けともコンビニで働けとも行ってないのに!! 自分をもっと大事にしてあげて!!」



「結衣さんやー練習手伝ってよぉーお客さんやってよーお願いだよぉー」



「まぁ祐亜くんがそこまで言うなら付き合ってあげてもいいけど……じゃあ私お客さんやるから頑張って接客するんだよ?」



「イエスユアハイネス!!」



「良い返事……じゃあウィーン! さーて何買おうかなぁー」



「いらっしゃいませーお客様一名様ですかー? こちらの便器の方へどうぞー!」



「ちょっと待って! もうすごい違う!!」



「え?」



「ちょっとファミレスが混じっちゃって、そしてもう終着点に関しては目もあてられない! 祐亜はコンビニで真っ先にトイレに案内されたことあるの!?」



「……二回ぐらい?」



「あとで店名教えてね祐亜の代わりに本社クレームいれとくから! コンビニではいらっしゃいませーだけで大丈夫だから! 案内しなくていいし、無理やりトイレに座らせなくてもいいから」



「イエスユアマジェスティ!!」



「返事はいいんだけどね……よしじゃあこの雑誌を買おうかなーこれ下さい!」



「金を出せ!!」



「出しますよ今から!! 逆強盗か!!」



「こちらの商品はこちらでお召し上がりですかー?」



「黒ヤギさんか私は!! 家に帰ってから読むんですぅ!!」



「ただいまこちらのファミリーチキンがお安くなってませんけど、どうされますかー?」



「どうしろってですか!? どうもしないです!! せめて安いのアピールして下さいよ!!」



「あ! 今おにぎりが安くなっております!」



「へぇーいいですねぇ、おにぎりは何があるんですか?」



「はい、梅が混入したものと……」



「その表現は適切じゃないね! 時期的にまずいから止めようか!梅は混入してていいやつだからね! あ、そういえばお腹空いてきたからおにぎりじゃ足りないかも! このお弁当下さい!」



「こちらのお弁当あたたたた?」



「ケンシロウか! 普通にあたためて下さい!」



「かしこまりました、爆発させます」



「全然かしこまってない! 過剰サービスか! いいです温めないでください!! 家でチンしますので」



「チンチン?」



「低俗か! チン! オンリーシングルチン!」



「お客様わーわー言ってるところ申し訳ありません」



「全ての原因はあなたですけどね!」



「お弁当と一緒に……ファミリーチキンを……」



「謎の鳥推しやめて! カーネル関係の方ですか!?」



「お飲み物はよろしかったですかー?」



「こんなグイグイくるコンビニ店員さんいたら嫌だなー……うん、わかったお茶買います!」



「かしこまりました、コーラですね」



「店長さーん!! この人を使えると判断して採用した店長さん今すぐ私の前に出てきて切腹して!!」



「あ、お客様ただ今サービスで……」



「え?」



「お茶の中にファミリーチキンを混入させておきました」



「もういいよ」



「「ありがとうございましたー!」」

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