基本的にアホな子ばっかりなんですよね
葵の猛アプローチをかわしたり、結衣と漫才のネタを詰めてと、あれやこれやなんやらとしている内に明日は大会の日でございます。
開始は12時スタート、今回は地区大会ということでここで4位以内に入賞できれば次の第2ラウンド、そしてさらにそこで8位以内に入れば晴れて決勝トーナメント、昨日聞きましたがこの決勝トーナメントはTVで放送されるそうです……おぇっ。
まぁ……流石にそこまで生き残れるとは俺も思ってはいませんが、結衣さんのサイドは残って当然って思ってらっしゃっている感じなのですごく怖いです。
とりあえず地区大会敗退とかはださすぎるので、明日は全力で突破目指しましょうかね。
さて、ここで重要になってくるのがタイミングなのですが……。
えぇ……そうなんです、告白のなんです!!
いけそうな……70%ぐらいの確率でいけるのではないかと勝手に思っちゃっております。
がしかし……70%となるとスパロボなんかになってくると全く信用できない数値。この数値を高めるために必要なのはイベント……それもロマンチックでドラマチックな奴!!
今年我々二年に残された行事と言えば、文化祭に修学旅行の二つ……やばい学園系ラブコメにおける最強クラスのイベントが目白押しやないですか!! いやだー!!
ここで限界まで数値を上げて……ゲットするしかないと!! ゲットするしかありませんと!! そういう次第なのでございます!!
とんとん拍子で行けば修学旅行が終わった辺りが、決勝トーナメント出場をかけた大会が開催される時期ですからね。ここで進もうが進まいが俺と結衣の恋に決着をつけてやろうではあーりませんか!! うん!! そうしましょったらそうしましょうか!!
決意を一人胸にする金曜日の放課後HR終わり、俺は鞄に教科書やらなんやらを適当に詰めて教室を後にしました。今日はこれから結衣と俺の家で練習してと、そんな感じの予定です。
もうなんかここまで来たら付き合ってるんじゃねぇの? と思われがちですがそれでも俺と結衣の間には茫漠とした残酷な存在がひたすらに横たわり邪魔をしているのです。
けど、結衣と過ごせる時間というのはやはりワクワクテカテカなもので俺の足取りもスキップ気味でございますよ。
帰宅部や、これからまだまだ暑いってのに好き好んで自分の体を痛みつけて極限まで追い込む運動部の連中たちをすいすいとかわして昇降口に向かっていきます。
「やけにうきうきですね」
二階の階段の踊り場、他の生徒たちのざわめきの中で確実に俺に向けられたそのなんだか懐かしい声に足がピタっと止まってしまいました。
心臓を鷲掴みにされたようなそんな感じがして、別に悪いことしてる訳じゃないけどすごく後ろめたい気がして、俺は酷くゆっくりとした動きで彼女の方へ体を向けました。
「久しぶりですね、あぅ!」
ブラウスの上にカーディガンを羽織ったその来夢の姿はなんだか俺の知ってる来夢のそれと違いまして。多分今まで見たことのない眼鏡をつけたりとか、何冊ものファイルを胸に抱えててすげぇ優等生っぽくっ見えるというか……。
なんだかすごく大人になってしまったみたいなそんな感じがしまして。俺を見つめる視線が何故か前と違って冷たく感じてしまったのでした。
「お、おう! ひ、久しぶりっすね!」
あの夏祭りの日以来、来夢には会っていなかったので俺はもうレイ・綾波状態でございます。なんて声をかけたらいいのか、どうしたら自然なのかとか全然わかんなくてかなり焦っています。
来夢はそんな俺を見て小さく鼻で笑いやがりました。あ、今のすげぇイラっとしたっすよ。
「ふん、ヘタレ祐亜め。私のこと振ったくせに何そっちの方が振られたみたいな態度取ってやがるのですか……」
来夢は視線を下に伏せながら眼鏡のフレームを人差指でくいっとあげるという、なんともらしくない優等生モーションをとってます。
「ふふふ……私はほら、新しく生まれ変わるためにイメチェンしたのですよ。今日も早速文化祭の運営の準備やらであー忙しい!あー忙しい! 祐亜になんか構ってる暇なんてないのです、ふふんだ!」
話しかけてきたの来夢からなんだけどなぁ……。
来夢は普通に努めてくれている感じがしますが、なんというかすげぇおこがましいんですけれど、俺は何を言っても来夢のことを馬鹿にしたり傷つけちゃうのではないかと思ってしまって上手く言葉にならないのです。
「頑張れ、副会長。来夢なら大丈夫だろうけどさ」
だからこんな月並みな言葉しか出てこなくて、俺のその言葉を聞くと来夢はぷいっとそっぽを向いてしまいました。
お互いやっぱなんかぎこちないですね……あはは。
「祐亜も……明日……その……なんですかえっと……せいぜいがんばりやがれですぅ……さすがに見に行くとまだ泣いちゃいそうなので私は行きませんがゴニョゴニョ……」
通り過ぎて行く他の生徒たちの喧騒にかき消されてしまいそうなぐらいの小さな声でしたけれど、その嬉しい言葉は確かに俺の耳まで届いていました。
「ありがとな!」
思わず嬉しくなって俺からゆっくりと離れて行くその小さな背中に、大きく声をかけました。
それを聞いた来夢は一瞬ビクっとなった後、少し歩みを進めて踊り場から見えなくなるぐらいの位置で急に振りかえって、なんだかすごい必死な表情で顔は耳まで真っ赤で、
「言っときますけどまだ私祐亜のことぜーんぜん好きですからね!! ばーか!! 嫌いになんかなってやる訳ないです!! 昨日だって祐亜のことオカズにしてやりましたからね!! あはは!! ざまーみやがれ!! さっさと振られろですばか祐亜!! ばーか! ばーか!」
と凄まじい事を言ってのけてその場をダッシュで去っていきやがりました。
なるほど……どうやらテンパっていたのは私だけではなかったようだ。
当然残された俺に周りから向けられる好奇と嫉妬と懐疑的視線。一秒だって耐えられる訳もなくその場を俺全力で逃走するはめになりますね。スキップしてる場合じゃねぇ!!
でもなんだか少し胸のつかえが取れたような気がしました。自分勝手で最低かも知れないけど、できれば俺はこれからも来夢と繋がっていきたいって思ってたので。
ちょっと頬が綻んだけど、やっぱり今度会ったら軽くぶっ殺そうってそう思いましたね、うん。
「祐亜、すごい疲れた顔してるけど大丈夫?」
「ははは……ちょっと廊下で未成年の主張レベル99をする馬鹿がいてですね」
俺が家に帰ってからすぐに結衣がやってきました。
玄関の扉を開けるなり結衣は俺の顔を見てなんだか心配そうな表情をして首をかしげておりました。
あぁ……その不思議そうな顔もすごく良いですね!! 可愛い!! 是非URカード化して欲しい次第ですよ、効果は判定強化あたりがいいと思います。
「ふーん? 良く分かんないけど」
でしょうね。
「それよりも明日はいよいよ本番ですよ!! 気合い入ってる!?」
我が家の狭い階段を登りながら結衣はもうそれはそれはうっきうっきで俺に尋ねてきます。
もう今にも飛び跳ねて行くんじゃないかっていうような感じでございまして、結衣の後から階段を上ってる俺としましては制服のチェックのスカートがヒラヒラっと宙を舞っておりましてあーらあーらと、もう……。見えるか見えないかと、艶やかで健康的な太もものその隙間から世界の真実が見えるか見えないかの瀬戸際でもう本当、
「最高です!!」
ダーブルミーニングですね、ええ。
わたくし思いますが、やはりパンツというのは見えるか見えないかの瀬戸際が最高なのですと。安易なパンチラの一億倍エロイですよね、本当に。
「よーし! それでは最後の稽古がんばりましょー!!」
「イエスユアハイネスッッッッ!!!!」
俺と結衣は俺の部屋の前で、もうテンション最高潮と言った感じで二人でそう言った後勢いよく部屋の扉を開けました。
「ふぅーん……どうして祐亜の服からはこんなに落ち着く匂いがするのでしょうか? 不思議で仕方ありません……はぁーすぅー」
バタン
扉を勢いよく開けた結衣はまたそのまま扉を閉めてしまいました。
んっとー……あれれ? なんか見えたんだよな?
幻かなー?っつけねぇなーやっぱ疲れてるですかねぇ……大会近いしまぁ仕方ないですけどね?
「祐亜、なんか見えてしまったんだけど私……」
「そうですねぇ……なんか俺のベッドの上で横たわって火照った表情で俺のシャツをくんかくんかしてる女の子みたいなビジョンが薄ら見えたような見えなかったような……」
「あ、私の見たのと似てるー」
二人とも張り付いた笑顔のまま会話しています。俺の部屋だったよなここ確かー。なんだろうなーあれ? 幽霊かな? 山田さんとこのメリーちゃんかな?
俺は意を決してもう一度扉を開けてみました。
するとそこにはわざとらしく掃除機をかけて、何事もなかったかのようにしている葵様の姿がありまして。
こちらを見るなりわざとらしく手で頬の汗を拭う仕草をしてみせたりして、
「あ、祐亜、結衣さん、お帰りなさい! 二人が過ごしやすいようにお部屋の掃除しておきましたよ?」
すげぇ嘘っぽい笑みを浮かべてそんな事を言ってのけやがりました。
「いつから……? ですかね、葵さん?」
自分の眉間に青筋が浮かび上がり、ピキピキなってるのを感じます。
けれど、葵の方はそのまま掃除機を前後ろに滑らさせるだけの全く掃除をする気のないモーションを続けながら憎たらしい笑みを浮かべてやがります。
「えっと……祐亜が帰ってきて、居間に行ったのを見計らって侵入しました♪てへりんこ?」
祐亜くんの特大雷が久方ぶりに徳永家に炸裂いたしました。
明日大丈夫でしょうか……。もういきなり不安で仕方ありません。




