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もし覚えていたら何か変わっていたのかとかなんで覚えていないんだろうとか、そんなことの繰り返しですね人生


結局部屋割の件で結衣の希望は通りませんでした。

ホッとしたような、がっかりしたような……いや、正直に言おう! がっかりしたと!!




「杏華のパンチ……重くなったよな」




男二人にはあまりに広くてお洒落すぎる部屋で、自分のベッドに腰掛けながら祐一がボソッと呟きました。




「体重の乗せ方が素人じゃないんだよなぁ……あの細腕であの威力だから」




窓から見える鮮やかすぎる青と白のコントラストを眺めながら、俺も腹をさすりながら返答しました。




開けた窓から入ってくる潮風が鼻を擽ります。




夏ですなぁ。




いつの間にか少し縮まった感じがする結衣との距離。

この夏で相方からもう少しステップアップした関係になれたらなぁ、なんて思います。




俺がそんな思惑を巡らしていますと、部屋のドアが乱暴に開けられる音がしました。




「祐亜!! 海です! 海に泳ぎにいきましょう!! この☆のリリンの自然の極み、UMIで泳ぎ狂いましょう!! あぅあぅ!!」




ドアの向こうには、自分の髪色よりは少し淡い桃色でフリフリのレースをあしらった可愛らしいセパレートの水着を着た来夢が目をキラキラさせて立っていました。

小脇にビーチボール、頭に水中眼鏡、腰には水玉模様の浮輪をはめて戦闘体制万端です。




思わず苦笑いがこぼれました。




「海ですよ! 祐亜! 限りなく透明に近い青色をしてますね!! あぅあぅ!」




ルナシーにそんな歌があったような気がする。




という訳で、来夢に無理矢理引きずられる形で海にきてしまった次第です。





晴れ渡った青空の下に広がる透明なマリンブルーの海と白い砂浜っていう絶好のリア充スポットに何故か来夢と二人きりでございます。




来夢は海に向かって、やっほーだとか、まさしく愛だ! とか自由に叫びながら水着姿でぴょんぴょん飛び跳ねています。




「他のみんなはどうしたんっすか? 何故二人きり?」




当然の疑問ですよね。せっかくみんなで来たのに、何故みんなを呼ばないのかと。俺がそう聞くと、来夢はピタッと動きを止めこちらを向きました。そして首を傾け、少し泣きそう表情をつくり、





「……来夢と一緒じゃ嫌ですか?」





っっっっっっっっ!!!!





一瞬来夢相手にドキッとしてしまいましたぜ。

危ない、危ない。てか疑問文に疑問文で返したら0点なんだぜ的なですね。




「悪くはないけど、せっかくみんなと来たんだから……」




「悪くないなら一緒に遊ぶしかないです!! あぅあぅ!」




俺の言葉の頭だけ聞いて来夢は太陽みたいな笑顔を作って、俺の手をつかんで走り出しました。




「まっ、待て! 準備運動しないとダメだって!」




「そんなことしてたら日がくれちゃいます!」




そんな入念に行わねぇよ!




そして、俺の制止を振り切り来夢は海へダッシュしました。




「おっととと……あわ!」




そしてなんというかお約束の感じでバランスを崩しこけました。




そして手を掴まれてる俺もつられて、やっぱりこけた訳です。




「ひゃあー! 冷たくて気持ち良いです!!」




海水に濡れて、砂にまみれながら来夢は本当に無垢な笑顔でキラキラ笑ってやがります。

桃色の髪が潮風に靡いていて……本当に、本当になんて残念な美少女なんでありましょうか? あんたさんもうずっと黙って座ってたら世界獲れるでしかし!!




「祐亜! あの地平線の向こうまで行くです!!」




「水平線な……」




立ち上がった来夢はまた起き上がって、俺の手を掴んでグングンと海の奥へと進んでいくのでした。








ふと、何かこの光景と行動に既視感を覚えます。ずっと昔にこんな事があったような……。





けどそんな考えも来夢の笑顔と、楽しそうな声に掻き消されるのでした。




「わぁー祐亜!! もうここ足つかないですよ!! 深いですぅ!! ディープなのです!!」




浮輪でプカプカ浮かびながら来夢は手をバタバタさせながら全身で喜びを表現しています。

無邪気な奴め……とても同い年に見えません。




というか気づいたらかなり沖の方に来ていました。あれだけ大きな別荘がとても小さく見えています。




「戻るのだりぃ……っす」




平泳ぎで冗談みたいに透き通ったマリーンブルーの海に浮きながら、小さくこぼしました。




確かに海は凄く綺麗で気持ちいいんですが俺はインドア派なので。

来夢ほど自然に感銘を受けたりしません。帰りたい、帰って少しでもフラグを建築したい。




「あははは!! あぅあぅ海なんていつ以来ですかね!! 小学生の時以来かもですぅ!」




でもまぁ、来夢のこんな無垢な姿を前にしてそんな事を言えなかったりします。




「どんだけ海好きなんだよ、来夢」




俺が少しうんざりしたように言うと来夢は浮輪の中でくるっと回って、こちらに向き直りました。




濡れた淡い桃色の髪が頬や胸元についてる来夢の姿に……悔しいけどドキッとしました。




「海には子供の頃の大切な思い出があるんです。だからこんな風に海に入ると、あの頃の様に子供みたいにはしゃいでしまうのですねー! あぅあぅ」




「来夢が大人っぽい時なんてありましたっけ?」




「祐亜はいちいち失礼ですねぇ……祐亜にはないんですか?」




「は?」




「来夢みたいな海で遊んだ思い出ですよ?」




あーね……。




はて?




うむ……少し記憶を探ってみます。




うーん……。




「多分あるけど覚えてないや! 俺子供の頃の事とかバンバン忘れてくし」




すると、来夢はどこか寂しげな表情を浮かべました。




「寂しい人ですねぇ……祐亜。ちっちゃい頃の記憶を糧にして頑張っていける人だっているのに」




「俺は今を大切にする人間だからなぁ」




「ふーん……あぅ」




どんな答えを期待してたのか、来夢は少しふて腐れてまた泳ぎ始めました。








なんでかふてくされてしまった来夢と一緒に海から砂浜へと上がると、少し離れた場所に純白のワンピースを着た美女がこちらに右手を大きく振りながらたっておられました。




「おーい!ゆうあー!らいむちゃーん!ご飯できたから帰っておいでー!」




胸が苦しくなるようなそれぐらい綺麗な青空の下、吹き抜ける潮風に長い黒髪を揺らすその結衣の姿に俺は一瞬身動きが取れなくなりました。




やっぱり……アルティメット可愛いっす。もし結衣がアイドルだったら、モバマス10回フルコンプする勢いで課金してましたよ。すいません、少し盛りました。




「むぅ……てぇやぁです!!」




俺が結衣に見とれていると、横にいた来夢が腰のひねりを上手く使ったいいローキックをかましてきやがりました。




「いったぁっっ!!何しやがるべらぼうめぇ!?」




「ふん!蚊がいたんですよーだ! あぅあぅ!」




「蚊をローキックで潰す女子高生なんて聞いたことねぇっすよ!?」




「べーだ!!」




来夢は少し頬を膨らませて怒った表情を浮かべた後思いっきり舌を突き出し、浮き輪をつけたまま別荘へと走って行ってしまいました。




「なんだったんだあいつは……ついに頭のネジがギガドリルブレイクしたのか?」




俺が来夢に蹴られた脛を軽くさすりながらその背中を見送っていると、結衣が近づいてきました。




「来夢ちゃんなんだか涙目だったけど、祐亜何かしたの?」




結衣が困惑した表情で質問してきたので俺はFF7のクラウドの興味ないねモーションで返しました。




「ふーん、まぁタラシの祐亜くんがまた女心を悪戯に弄ぶ様な事したんでしょう」




「いえいえ、そんな事はないっすよ」




いたずらっぽい視線を向ける結衣があまりに可愛かったので、俺はそっぽを向いてしまいました。

眩しい、私にはあまりに眩しすぎるのだぁ……。




まぁ、取り合えず小腹も空いてきましたので別荘に戻ろうと歩き始めると、不意に柔らかくて細い手が俺の手を繋ぎ止めました。




「ストップ!! あのさぁ、祐亜……」




俺の手を掴んで視線だけ横に向けている結衣のその波に消え入りそうな小さな声に鼓動が跳ね上がります。




「ご飯食べたら二人でどっか行きたいなぁ……な、なんちゃって」




は?






「デート、してくれますか?」




入ったやろ……ルート入ったやろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!


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