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怖いですね、女性用下着売り場ってのは本当に怖いと思います

せっちゃん先輩はなんかすごく……エロいです。




頭がクラクラするような甘い香水の匂いがエロス。

背中までかかってる長いブロンドがかった髪は以前と違ってストレートにしてあってエロス。

黒であしらわれた大人っぽいワンピースは彼女の白い肌とのコントラストと合わさっていとエロス。




そしてなにより、結衣やなんとかさんにないこの大人な雰囲気が凄まじくエロスですね。何回エロスって言ってんですかね、俺。




「何ジロジロ見てんのよ?」




俺の横を歩くせっちゃん先輩は不審者を見るような視線を俺に送ってきました。




「いや、べ」




「あ!? 私を今日のおかずにしようとしてた訳ね! いやね、祐亜くんったら妄想の中でせっちゃん先輩をめちゃくちゃにしようとして! エッチ! けど祐亜くんだから許したげる」




……後二文字、何故たったの二文字が待ってなかったのですか? そうしてこの圧倒的言葉のドッジボール。一方通行過ぎます。




この強引具合なんか姉貴に似てるなぁ……せっちゃん先輩のいじわるな笑みを見つめながら俺はなんとなくそう思いました。。




「あ、ほら! あそこ、あそこだよ!」




せっちゃん先輩は俺の手を掴んで近くの駅ビルへと向かいました。




ここは確か女性向けのショップがいっぱい入ってるビルですね。昔姉貴に付き合わされてきた覚えがあります。非常に居づらかったと。




しかしここまで来たら引き返すことなど出来る訳もなく、俺は大人しくせっちゃん先輩に手を握られたままこの駅ビルへと入っていくのでした。

















「こっちの服とこっちの服、どっちがいい?」




「そうですね、きっと俺がいいと思った方の逆がいいと言われると思うので、こっちではないでしょうか?」




「えぇ……じゃあこっちにするぅ!」




「でしょうね」




女の子というものはショッピングにおいてはあまのじゃくでありますな。

既に姉貴との経験でこういうパターンは把握済みです。女の子はあくまでも自分の選んだものに対する後押しが欲しいだけであって男子の意見などさらさら参考にする気はないのです。男子各位注意するように。




大人っぽい顔立ちなのに子供みたいな無邪気な表情を浮かべちゃったり、大袈裟な笑みを浮かべちゃったりして。




せっちゃん先輩はなんかすごいずるい女の子です。

この人はいろいろな可愛らしさを持っていてそれが全部武器になってます。この人さぞかしモテるんでしょうね……。




服を手に取ったり戻したり自分の体にあててみたり離したりしてるせっちゃん先輩の姿を遠くから眺めていると、彼女は俺になめ回すような視線を向けながらこちらに近づいてきました。




「ぅむ? そんなに視姦が楽しいかい、祐亜くん」




「グヘヘヘヘ……って何言わせるんですか……」




俺が適当に返事を返すとせっちゃん先輩はいじわるな笑みを浮かべて俺の手を握りました。




「次行きたいとこあるんだよね、早く行くよ?」




せっちゃん先輩は俺の手を引っ張って上のフロアへと向かいました。




そして目の前に現れたのは……。




まばゆいばかりの……下着が並ぶ……。




ランジェリーショップ……!!!! 圧倒的ランジェリーショップ……!!!!





「先輩あきまへんわ……こんなん……絶対不可侵領域やありまへんか……こんなん……ほんま、入るの無理ですさかいに……」




「なによ、その頭の悪い女子高生が書いた携帯小説に出て来そうなあからさまなエセ関西弁のキャラは……」




例えがいやに具体的ですな。




いやしかしここは流石に無理です!

右見ても、下着! 左見ても、下着! 夥しい量の下着!

そこに俺がいるなんて場違いも甚だしいですよ。こんなんラブホテルで離婚調停するようなもんですよ。違う、場所違いますってね! 違うか、違うか!?




「あの、せっちゃん先輩! 俺店の外で待ってるんでサクサクっと決めちゃって来て下さい!」




俺はそう言ってせっちゃん先輩の手を振りほどこうとしました。しかし彼女は掴んだ俺の腕を離そうとしません。




「つれないこと言わないでよ、祐亜くん? 君にも選んでもらいたいのに……」





「なぜ俺が選ばにゃならんのです!?」




するとせっちゃん先輩は潤んだ瞳を上目遣いにして俺を見つめ、非常に可愛らしい声色を使ってきやがりました。




「今だけ、私の恋人になってよ……ダメ?」











「恋人なら仕方がない……」




祐亜、屈服……っっ! 屈服せざるを得ない……っっ!




しまったしまった、しまくらちよこッッッッッッ!!!!




ついついせっちゃん先輩の犯罪的に可愛らしい表情に騙されてしまいました。俺の言葉を聞いたせっちゃん先輩はまた楽しそうな笑みを浮かべて、俺をこの絶対不可侵領域の奥底まで引きずり込んでいきます。




わかっています。




……わかっています、この流れ。




これは遭遇フラグッッッッ!!!! そして修羅場フラグッッッッッッ!!!! そして首チョンパ、ヨットで首だけ世界一周旅行の旅フラグッッッッッッ!!!!




いかん……それだけは避けねばなりません。

こんなお約束的な展開で死にたくない……死にたくなぁああああいっ!!




「ねぇ、ねぇ? 祐亜くん。こっちの水色の下着と黒の下着、どっちがキュンってくる?」




「断然黒でしょ……どう考えても」




ちがぁああああああああああああうううううッッッッッッ!!!!!!




流されるな祐亜……いくら目の前に美人なお姉様キャラがいたってな、いかんのだよ祐亜。早く、この場を脱せねば……祐亜、君に待つのは……死だ……紛うことなき……死……っっっっ!




迷うな、迷うな祐亜っっ!! 君はまだ死んではいけないんだ、まだメインヒロインのフラグどころか、漫才すらしてないではないか!! 君はまだ死ねないんだ祐亜!! いいか、君が頑張らなければメインヒロインがまさかの人気キャラ投票4連続ランキング圏外という有り得ない事態に陥ってしまうのだ祐亜!! 断ち切れ……断ち切れ祐亜!! この作品がこの作品のスピンオフに遅れを取るわけにはいかんのだ!!




「じゃあ、祐亜くん? この赤と黒、どっちが燃える?」




「赤っすね、ギンギンっす」




うがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!








「じゃあ祐亜くんがチョイスしてくれたこれとこれにしよ? ちょっと待っててね」




そう言うとせっちゃん先輩は下着を手に、軽くスキップ気味で奥のレジの方の方へ行ってしまいまして……。







そして一人立ち尽くすさくらんぼ男子高校生徳永祐亜、17歳であります。




まるでSFC時代のボンバーマンにおいて開始早々にコマンドをミスり壁とボムに挟まれて後は死を待つばかりというあの時と同じ心境であります。





身動きが取れません。




辺りの人が俺のことをジロジロ見ているようなそんな気がします。せっちゃん先輩がいたときはまだそんな気はしなかったんですが……一人になるとそれが顕著に。




そのせいで妙にそわそわしまくりまして、




そう……それは言わば無意識の手慰めだったのでしょう。

俺はその時、あろうことか目の前の下着に手を伸ばしてしまったのです。なんの意思もなく、なんとなく。






「ゆ……祐亜……ですよね? 」






そうして後悔をするコンマ1秒前に……声が、聞こえました。聞き慣れた、声が。




視線を向ければ……桃色の髪で、それと反比例するように顔面蒼白な来夢。

まるで殺人現場でも目撃したような顔をしています。




「来夢、どした? 祐亜がこんなとこにいるわけねぇだろ馬鹿……が……あ?」




「む、祐亜? あの祐亜のこと……か? あれ?」




「何言ってんの? ゆうぴょんがこんなと……こ……に?」




「祐亜がいるわけないじゃん! あははは……はは?」






悲劇の連鎖は続いていきます。来夢の後ろに続々と、結衣と結衣親衛隊の連中と姉貴が現れました。みなさん俺の姿を確認した途端に語尾が弱々しくなっていきます。




その時確認しましたが、俺の手に握られていたのは運悪く……セクスィーなひもパンでございやした。




混乱しておりました、わたくし。大変混乱しているのです。

何か上手い切り返しは……この窮地を脱する革新的な一手はないものかと。

このなんの言い訳もしようがない絶望的状況で……。




そうだ、違った切り口で攻めて見よう!




そこで俺は含み笑いを浮かべ、空いている片手でパーの形をつくりそれを胸にあてました。





「こんにちわ、マゼンダさん。すぅーっといなくなりたい、ゆうぴょんです」








肋骨が砕ける音が響くまで、そう大して時間はかかりませんでした。










「祐亜……お前にまさか女装趣味があるとは……しかも紐って。安心しろ祐亜。姉として責任を持ってお前の性癖を暴力で叩きなおしてやる」




神速で強烈なボディーブローを俺に叩き込んだ後、姉貴は拳を握りながら何やら物騒なことを決意していました。




「ち、違う……姉……貴!! 俺に女装趣味はない……!! ゲホッ!」




腹を抑えながら、俺は息も切れ切れに釈明を開始しました。




「あん?」




姉貴が怒り心頭な表情で返事をすると同時に、柳が難しい表情をして姉貴の横をさっと通りこちらに近づいてきました。




やばい!! まるで暴力が服を着たような、暴力で生きているような、彼女自身が暴力であるような!! そんな柳にまでめった撃ちにッッッ!!!!




俺はとっさに寂海王のような防御スタイルを取りました。




しかし彼女は俺は無視し、俺の手からこぼれ落ちた紐パンに視線を置きました。




「祐亜の趣味……こういうのが好き……」




いや、それは酷い勘違いでして。




「うぅむっ……」




一瞬泣きそうな顔になりましたが、彼女はそれを力強く握りしめて決意の表情をその小さな顔にありありと浮かべました。







「……頑張る!」





「何をッッッ!?」




そして彼女はトタトタとレジに向かおうとしました。




「しまった!? 抜け駆けは許さんぞ柳!!」




その後を必死になんとかさんが追いかけていきます。




「あぅ! 嘘です! 祐亜はあんなエッチなパンツが好きな訳ない……アルプスの高原に咲く美しい花のような、純白のパンティーが好きに決まってます!! そうですよね祐亜!!」




「知るか!!」




来夢が混乱しまくった様子で俺に近づいてきて、肩を掴んでガシガシ揺らして来ました。




なんだこの地獄絵図は……誰か……助けて。





「あぁ、祐亜くんお待たせ! 言われた通りの下着買ってきたよ? 今日の夜が楽しみだねぇ? 」







エターナルブリザード。



凍りつく空気。







苦しさに負けたぁ……




いいえ、世間に負けたぁ……




この町も追われ……いっそ綺麗に死のうか……




俺は死を覚悟しました。もう死んだ方が早いなと、これはね。




「せ、雪那先輩!?」




しかしながら、姉貴が予想外に驚いたようなな声をあげました。流れ的にまたしても問答無用でボコボコにされると思いましたのに。




「ありゃ? 杏華じゃん? それに来夢もいるし……どしたの?」





……何がどうなってる?













「元……生徒会副会長……だと?」




「ありゃ? 祐亜くん、私のこと知らなかったの?」




「雪那先輩……こいつは自分の興味のないことにはマジで絶望的に関心を示さないんです。馬鹿なんで」




地獄のランジェリーショップを離れ、無理やりファミレスに連行された俺は、そこでせっちゃん先輩の恐るべき事実を知ったのでありました。




元生徒会副会長だと……? というか俺の周り生徒会関係の人間多すぎというか……。




こんな人格に明らかな欠落が見える人材が多く生徒会に携わっている、我が母校って……。まぁ確かに生徒会なんて生徒と先生をつなぐマスコットパンダ的存在ですしぶっちゃけたいしたことしてないと思うけど……。




「あぅ……なんか心なしか凄く失礼な視線を感じます」



「殺されたいようだな……そんなにダルシムみたいな体になりたいのか祐亜。わかった、お姉ちゃんがやってやろう。全身の骨を外してな」




「心も体も調教する必要があるみたいだね、祐亜くん?」






「あぁ……なんて素晴らしい生徒会かな」






ほら、おかしいでしょう? この人達。




しかし、本当に恐ろしきはですね、今俺の向かいに座っていらっしゃる紅の暴君~レッドタイラント~上杉柳、凛として血祭り、沢木なんとかさんのお二方でして。




無言で強大なプレッシャーをせっちゃん先輩に送信中でして、見ているこちらが息がつまりそうです。

しかしその負のプレッシャーを受信しているはずの当のせっちゃん先輩はケロッとしていて、姉貴や来夢と話していますが。





あぁ、もうとにかく帰りたい……です。




「怒ってるのは、あの二人だけじゃないよゆうっち」




不意に俺の隣に座っているおっぱいさん……いや、失敬。パイオツさん……おっと失敬。ミルタンクさん……おっと失敬。高宮さんが嬉々とした感じで俺に耳打ちしてきました。




なんのこっちゃわからんって感じで高宮さんの方を見ると、高宮さんはこそっと向かいに座っている結衣の方を指さしていたずらっぽく笑いました。




不思議に思いながら、結衣の方に視線を向けます。




俺の斜め向かい、なんとかさんの横に座っている結衣はなんとも言えない表情をその顔に浮かべていました。




怒っているような、それでいて悲しそうな、けど不思議がっているような。




いつもまぶしすぎる笑顔を振り撒いている結衣からは想像できないその表情は……そうですね、凄く……ミステリアァ……ス。




何を考えているんでしょうか?




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