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サブヒロインは激ちょろという風潮、あると思います


まぁ、ヘラヘラしながらも午後の種目を着々とこなしていく訳です。




騎馬戦ですよ……。




まぁね……。




特に何もありませんでしたっていうね。




いうてもね、騎馬戦なんて男だらけですからね。ラブコメ的な要素はありませんよ。逆にあったらそれはもう、凄まじくないですか。ラブアンドコメディーじゃなくてガチアンドコメディーになっちゃいますからね。




そしていよいよ体育祭最大の見せ場、自由参加型二人三脚です。




周りの非リア充からの怨嗟にまみれた視線を受けながら、沢木なんとかさんと二人でスタート地点に立ちます。




スタート地点に並ぶのは大半がカップル。どいつもこいつも幸せそうな胸糞悪い笑みを浮かべています。




勿論その中には結衣の姿。その横にはいつぞやの陸上部くん。鼻の下伸ばしまくってます。くそ……俺の……俺の相方なんだぞ、結衣は!!




しかしながらそんな周りの様相とは打って変わって、横に立つ沢木なんとかさんは心なしか、暗い顔をしています。




はっ!? まさか緊張しているのか!?




「沢木さん、大丈夫っすか!? 太陽の熱にあてられちゃった系ですか!?」




「ううん、私は大丈夫だ」




渇いた笑みを浮かべますが全然大丈夫そうに見えないっすね。体調悪いのかな?




なので俺はカンフル剤になればと思い、こんな事を口にしてみました。




「沢木さんには大変お世話になりましたから、このレースが終わったら、沢木さんのお願い事なんでも一個だけ叶えてあげますよ! あっ……できれば5000円以内で」




すると沢木なんとかさんは俺の顔を見つめた後、悲しい笑顔を浮かべてから横を向いてしまいました。




「いいよ……。私の一番のお願い事は、もう叶いそうもないからな」




えっ、何……冨樫に毎週連載させたいとか?




「むぅ……じゃあ、一番になったら飯行きましょう! 勿論、俺のおごりで。祝勝会ってやつっす」




なんだか浮かない顔をしてる沢木なんとかさんにそんな事を言ってみます。




「むむむ……」




沢木なんとかさんは一回視線を下に反らした後、しばらくしてから俺へと視線を戻してきました。




その表情はさっきよりか楽しそうに見えて、そしていつもの沢木なんとかさんの顔でした。




「私は遠慮しないからな、覚悟しておけ?」




うん、うん。これでよし。





絶対に沢木なんとかさんと一番とって、結衣とあの陸上部のなんとか君をぎゃふんとかあっふんとからめぇぇぇぇえとか言わせてやる!!




俺の左足と沢木なんとかさんの右足をはちまき的なものでくぐり、肩を組みます。




俺より少しばかり背が低い沢木なんとかさん……すごく……柔らかいです。密着した部分からは心地好い温もりが伝わってきて、もうマジサマーパーティーっす。




しかし、雑念は捨てねばなりませぬ。

やるからには頭とらなきゃあきまへんからね。




ふと、横から囁くような声が聞こえきました。




「徳永……いや……」




「はい?」




するとその声は勢いが一気に跳ね上がりました。




「祐亜!! 絶対勝つぞ!!」




辺りも軽く驚くくらいの声を出した沢木なんとかさんの顔は強さと、そしてほんの少しの照れが見えました。




「は、はい!! なんとかさ………はいはい!! 絶対勝ちましょう!!」




この時、本当は俺も下の名前で呼び返せばかっこいいかなぁーとか思ったんですが、よく考えたらいつもなんとかさんって自分の中で呼んでたから、下の名前知りませんでした。てへ。




危うくなんとかさんと言ってしまいまそうになりましたが、寸前でごまかしたその後、スタートを告げる号砲が鳴り響きました。




せーのの掛け声のもと、俺となんとかさんは一斉に左足と右足を踏み出しました。




まずまずのスタートを切ったのではないでしょうか、他の連中より一つ前に出ることができました。コースは直線の100m。いける、俺はそう強く思いなんとかさんの肩を強く抱きながら足並みそろえながら走って行きます。




30mを過ぎた辺りでしょうか、激しい息遣いが横から聞こえてきました。俺はその方向へと一瞬だけ視線を向けました。




結衣と陸上部くんでした。名前は忘れました、興味ありません。ちんこもげろ。




流石、陸上部にチートステータスの完璧美女。簡単に一位の座は譲ってくれませんか。




「祐亜、ペースをあげるぞ!」




なんとかさんが前を向いたまま声を上げます。視線を向けずとも結衣の接近を感じとったのでしょうか。




「うっす!!」




なんとかさんに引きずられないよう俺も気合いを入れて、足のピッチを加速させます。




思えば二人三脚自体の練習なんてまともにしてないのに、なんでこんな上手いこといってんのかよくわかんないってぐらい上手く行ってます。なんなんでしょうね、本当。




ちょっと気を抜けば前のめりに倒れてしまいそうなぐらいのスピードです。恐らく結衣の組とデッドヒートを繰り広げているんでしょう。確認する余裕はありませんが。




でもこのまま行けば……!!




ゴールまで後僅か、そんなことを思いながら走っていた矢先のことです。




「痛っ……!?」




なんとかさんの軽い悲鳴にも似た声と共に視界が揺らぎました。




一瞬何が起きたのかわかりませんでした。




ただ気づくと俺となんとかさんは地面に突っ伏してる訳でして。周囲からはどよめきがあがっています。




「……いたっ!」




横にいるなんとかさんは苦悶の表情を浮かべています。




恐らくスピードをあげた時に足がもつれて、足をくじいてしまったのでしょうか。



俺は足の紐をいったんほどいてから、なんとかさんの足へと視線を向けました。




なるほど足首辺りが少し赤く腫れています。たいしたことはないでしょうけど、二人三脚でゴールに向かうのはもう無理に思われました。




「棄権しましょう。早く保健室に行かなきゃ……」




「嫌だ!!」




俺の言葉を遮るようになんとかさんは叫びました。そして泣きそうな顔で俺を見つめた後に、下を向いてしまいます。




「今まで一緒に頑張ってきたんだ……それがこんな形で終わるなんて嫌なんだ! だから私のことは気にしなくていいから! 我慢するから! 一緒にゴールまで行きたい……」




「………」




ちょっと回想してみたんですが、どうも今までの頑張るのベクトルが完全に違う方向を向いてる練習しか浮かんできませんでしたね。確かに頑張ったけれども……。




しかし、一緒にゴールしたい気持ちってのは俺も一緒ですね。けどなんとかさんには無理させることはできないです。




よし、やっちゃうか! あれを!




俺は、もう勢いですかね、勢いでしょうね、こういう祭に存在する目に見えない何かの勢いに任せてですね、しゃがみ込んでいるなんとかさんを抱き抱えちゃいました、てへ。そしてそのままゴールへ向けて全力疾走ですわ。




「なっ!? ちょと!? ゆ、祐亜!?」




周りからは拍手やら冷やかしやら非リアの絶叫が聞こえてきます。




他の組はもうゴールしちゃってますからね、大分二人三脚とは掛け離れてますけどいいでしょう、二人でゴールできるなら。




「一位にはなれなかったっすけどこれって結構いい感じじゃないっすか? すげぇいい思い出になりそうな、ねぇ、沢木さん?」




なんとかさんは俺の胸の中で手をバタバタさせながら、もがいています。




「むむむ!!!! 恥ずかしくて死んでしまう!! うぅ!!」




「へへへ!!」




「へへへ!! じゃないバカ!!」




ゴールでは体育委員が気を利かせて、ゴールテープを持って待ち構えています。



なんとかさんもじたばたを止めて、おとなしくなりました。




「なぁ、祐亜?」




「へ?」




「亜弥って呼んでいいぞ?」




「………」




……誰?




あっ、なんとかさんの下の名前か!!




「それから……」




なんとかさんが何かを言った瞬間、俺となんとかさんはゴールテープを切りました。




周りからはこれでもかっていうぐらいの歓声と拍手がまきおこってます。




「なん……亜弥さん、今なんて言ったんすか?」




歓声に掻き消されたなんとかさんの言葉が気になって、俺は胸の中にいるなんとかさんに尋ねてみました。




するとなんとかさんは俺の腕の中でいじわるな笑みを浮かべました。




「いつか言うよ、いつかな」




こうして俺の体育祭は、こんなリア充な感じで幕をとじたのでした。


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