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ベストコンディションです


只今時刻は7:30。今日はたまの休みの土曜日だってのに、全身筋肉痛でございまして二度寝は無理そうです。横になってるとしんどい。




とりあえずベッドから起き上がりますが、もうふくらはぎとかパンパンでやばいです。




カーテンをシャッと開くと、気持ちのいい朝日の野郎が差し込んできやがります。非常に気持ちのいい天気でした。なので、ちょっと朝飯前の散歩に行くことにしました。




寝間着から適当にジーンズ履いて黒のTシャツと、まぁ割りとラフな格好で外に出ました。




俺の部屋の向かいは姉貴の部屋なんですが、まだ起きてる雰囲気はありませんね。その代わりなんか寝言っぽいのが聞こえてきました。




「あっ……ダメだ、祐亜。俺らは姉弟なんだぞ!!あっ……ゆう、だっ!! そんな……!! やっ……」




なんちゅう気色悪い夢を見てるんだ、姉貴は……。




馬鹿でかくて、それから妙に色っぽい声色だった姉貴の寝言をスルーして俺は一階に降り玄関に向かいました。




ドアをあけ広げると、気持ちのいい青空が広がっていました。




あぁ……こんなに綺麗な青空の成層圏付近でも我々人類が作り出した愚かな物質フロンが刻一刻とオゾンと結びつき破壊しつつあるのか、なんて思いながらあてもなくブラッと歩き始めました。気持ちの良い風が吹き抜けていきます。今日は何かいいことがあるような気がする、







そんな風に考えていた時期が、俺にもありました。










どこというあても目的もなく、徒然なるままにひたすら歩いてます。




土曜の朝、人通りも少なくてまるで世界中で俺しか起きてないような、そんななんか車輪の唄的な切ない気持ちが胸にこみあげてくる朝でございます。




気づけば俺の足は昨日沢木なんとかさんと行ったあの公園へと俺を運んでいました。




ここにはもう来ないって、決めてたんですけどね……。




昔4人でよく遊んだ薄汚れた緑色のジャングルジムは今では綺麗な青色に塗装し直され、いつも4人で使ってた箱ブランコは跡形もなく撤去されていて。




確かに俺たちの思い出の公園です。けど……なんか違います。




そういえば葵と最後に会ったのもここでしたっけ。中二の……あぁ、ラブコメの主人公にあるまじき未練タラタラ具合ですね、こりゃ。




てか普通ラブコメっていったら、幼馴染フラグがメインだろう……常識的に考えて。

的なことを考えていると、ふと後ろから俺の名前を呼ぶか細い声が聞こえました。




「祐亜」



炎髪灼眼でした。




「上杉さんどうしたんっすか? こんな朝っぱらから?」




「柳でいい」




黒の、ホットパンツって言うんですか? こういうの。すげぇ短いパンツ。柳さんの華奢な白い脚が見えててやばいです。

上は薄手の白いzipパーカー、なんというモノクロエロスファッションなんでしょうか。そこにやたら特殊な紅髪が映えまくちゃってます。




「上杉さんも散歩っすか?」




「柳でいい」




「いやぁー俺も全然眠れなくて!」




「柳でいい」




「……」




こんなキャラでしたっけ、このクレイジーアップルは……。




「柳さんも散歩っすか?」




「……」




「や、柳も散歩っすか?」




「そんなところ」




やっと会話が成立しました。無表情なのがすごい不気味な感じっす。顔立ちは可愛いんですがね。




ふと、後ろからこのミステリアスな雰囲気とは打って変わって、非常にファンキーでグルーヴィーな声が聞こえてきました。




「うっは!? 朝からお熱いのぅ? そこの兄ちゃんら!!」



振り返るとそこには放火兄弟の善明お兄ちゃんみたいな、鎖じゃらじゃらさせて、すっごい自分のサイズに合ってない大きいお洋服をお召しになった、顔中に穴開けたドレッドの頭した、もうとにかく話したり目を合わせたりとにかく関係を持ってはいけない怖い人がいました。朝帰りなんでしょうか? お勤め御苦労さまです!




取り敢えず上す……柳もいることですし、この場合の男として自分が取れうる選択肢は一つだけです。





軽く会釈ッッッ!!




シカトしちゃった場合、この手の人達はカチンと来ちゃうし、もうこれしかありません。




なので俺が軽く苦笑いをして受け流そうとした所、隣の上杉さんが口を開きました。




「消えろ、不細工」















( ゜д゜ )






な……何を……。




だ、大丈夫だ!! 落ち着け、落ち着くんだ祐亜!! 幸い柳の声は小さいからまだ相手には聞こえていない可能性が高い。ここは早々に、相手に不自然と思われない程度の早足で去ってしまえばいいのだ!!




「あん? 姉ちゃん今なんて?」




聞こえとるやないかぁぁあああああああああああいいいいいいいいいい!!!!




「柳さん!! ここは穏便に!! あいつ絶対やばいですって!!」




俺は柳の耳元で、焦って耳打ちしました。柳はその綺麗なビードロ玉みたいな瞳を俺に向けた後また視線を怖いお兄さんへと向けました。




「消えろ、不細工」




God dom it !! (ちくしょうめ!!)




あの人絶対やばいって!! こないだのヤンキーとか大男より絶対やばいよ!! ヤーさん、ヤーさんだよあいつ!!




「死ね!! おどりゃぁああああああああ!!」




やばいやばいやばい。クローズ的な掛け声で突っ込んできたよ、あのヤーさん!!




「祐亜、下がってて」




柳は俺の前に立ちパーカーの袖からから手先を出し切ってない左手で制した後、ヤーさんに突っ込んで行きました。




「上杉さ……柳っっ!!」




俺は自分でもビビるくらいの大声を上げました。しかし、それは杞憂であったと俺は数コンマゼロ秒後思い知らされることになります。





勢い良く繰り出されたヤーさんの崩拳(中段パンチ)を避わしざまに合わせた柳の右は、正確にヤーさんの顎の先端を捕らえ、




脳を頭骨内壁に激突ッッッ!!




あたかもピンボールゲームのごとく頭骨内での振動激突を繰り返し生じさせ、




典型的な脳震盪の状態を作り出したッ!!




さらには既に意識を分断されたヤーさんの下顎へダメ押しの左アッパーッッッ!!




ヤーさんの崩れ落ちる体勢を利用した、




左背足による廻し蹴りはヤーさんを更なる遠い世界へと連れ去り全てを終わらせた。





この間、実に2秒ッッッ!!





これがもうじき17を迎えるクレイジーアップル・上杉柳の、




ベストコンディションの姿であるッッッ!!














もうなんか一瞬にして、俺がちょっと昔のことを思い感慨深く感じてたそんなセンチメンタルな感情を柳ちゃんは粉々に砕いてくれました。本当にありがとうございます。




ムードも糞もありませんね。




ヤーさんは完全に伸びてます、伸びきっております。多分本人はまだ自分がやられたことを理解していないんじゃないんでしょうかね、急過ぎて。




「うえ……じゃなくて柳! ケガないっすか?」




あるわけないでしょうが、聞くのがテンプレなので言っておきます。




「大丈夫」




そりゃそうだ。

柳はすごく素っ気ない表情をしてそれだけ言いました。あの怖いヤーさんを玉砕したって言うのに眉一つ動かしていません。連邦の女子高生は化け物か!?




「また助けてもらっちゃいましたね。なんかダセぇ、俺……あっ、そうだ! お礼しましょうか?」




「お礼?」




俺の発案に柳は無表情のまま首を傾げました。




「そうだな……あっ! 今日の昼飯奢るとかどうっすか?」




すると、首を傾げたまま柳の顔がだんだんと赤く火照り始めてきました。今日は耳だけじゃないみたいです。




「そ、それはつ、つまりでで、デート?」




かみかみなのが可愛かったですね。声色にはあまり変化はありませんが。




「そんな大袈裟なもんじゃないっすよ。で、どうします?」




「祐亜とならデートしてもいい」




だから、デートじゃねぇって言ってんのに。




「じゃあ11時にまたここで待ち合わせしませんか? まだ朝も早いで……」




俺が言葉を言い終わるのはまたないで、柳は脱兎のごとく駆け出して行ってしまいました。




俺は走ってく柳の小さな背中を見ながら、




あぁ……メインの方も、これぐらいフラグたてやすかったらなぁ……。



なんて思うのでした。


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