表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/88

あちらを潰せばこちらが建つ、そういうことです


「じゃあ姉貴、俺みんなを近くまで送ってくから」




「お前みたいなウンコクズに送ってもらってもな……まぁいいや、じゃあなお前ら! またこいよ」




みんなで杏華の作った料理に舌鼓をうった後、時刻ももう9時を回ったということになりまして解散ということになりました。




「杏華ありがとう!おいしかったよ。また来るね!」




「おう! いつでも来い」




やたら男前な杏華を後にして俺たちは外に出ました。夕方なんかはまだ暑かったんですが、夜はなかなか冷え込んできやがりましたね。




「じゃあ俺は恋さ……恋を送ってくから。ま、また明日!!」





「み、皆様また明日学校で……」




初々しいお二人さんは自転車で二人乗りしてさっさと行ってしまいやがりました。




「いやぁー本当に祐一羨ましいな(※副音声:死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね)」




「うぅ……寒い。あたしも今日はチャリンコなんで頑張って帰ります。あっ、柳たんって有希ん家の近くじゃん? 後ろ乗ってく? 甘えちゃう?」




「甘えちゃう」



上杉さんはいつもの無表情なままで、高宮さんの自転車の後ろにちょこんと座りました。




「じゃあ結衣様、あーや、ゆうっち! また明日!」




そう言って高宮さんは軽快に自転車をこいで行き、夜の闇の中へと消えていきました。最後、上杉さんが俺に向かって手を振っていたのは目の錯覚だと思います。




「じゃあ、行きますかね」




そう言って残った俺たちはとぼとぼと歩き始めました。




「杏華は料理が上手なんだね!」




俺の右隣を歩く結衣が話しかけてきました。




「俺の家は両親が共働きなんで、家事は大体俺ら二人でやってきたんすよ。姉貴は炊事担当、俺は洗濯や掃除担当みたいな。多分そのせいですね。ちなみに俺も料理できますよ、ふふん」




「へぇ……祐亜って偉いんだ」




「いやぁーそんなことないっすよ」




「実は私にも二個上に、お兄ちゃんがいるんだ」




初耳っすね。




「今は海外に留学してるんだけど……カッコ良くて、頭良くて、スポーツ出来て、私にとても優しくて……私お兄ちゃんのこと大好きなんだ」






















えっ?








「いつも思ってた……お兄ちゃんが私の恋人になってくれればいいのにって。本当に大好きなんだ、今でも。お兄ちゃん以外の男の人なんて考えられないや。それでね、お兄ちゃんギターもやってて。それで凄い上手でいつも私に聞かせてくれたの。大好きだったなぁ、お兄ちゃんのギター……だから、今日祐亜見てたらお兄ちゃんのこと思い出しちゃった」








───徳永祐亜、17歳。絶対零度の時間。




男嫌い……まぁ、いいでしょう。そう言ったキャラもラブコメには一人ぐらいいるもんです。




漫才好き……まぁ、いいです。人の好みはそれぞれですから。






ブラコンって……。




ちょ。




ブラコンって!!




ブラザーコンプレックスって!!




極度のブラザーコンプレックスって!!




入り込む余地のない程の極度のブラザーコンプレックスって!!




俺のことを兄貴というフィルターを通して見ている入り込む余地のない程の極度のブラザーコンプレックスって!!




今日のあの目は、お兄ちゃんのことを思って胸をドキドキさせていた目ですか…………。




裏切ったな!! 僕の気持ちをよくも裏切ったな!! よくも!!




「じゃあ、私あっちだから。祐亜、また今度ギター聞かせてね? バイバイ」







フラグが立ちましたね。





えぇ、死亡の方ですが?







「残念だったな……結衣の兄好きは結構重症だぞ、あきらめろ」




俺の肩に手を置く沢木なんとかさんの手がやけに冷たく感じましてなんか死にそうになりました。




「まぁ、なんだ……お前本当に結衣のことが好きだったのか?」




「好きっていうか、あの人メインヒロインのはずだから、男嫌いで漫才好きでブラコンで俺にあまり関心を持っていないという設定が画期的すぎというか……」




「むむむ? 何の話だ?」




沢木なんとかさんはなんだかよくわからないと言う顔で俺の横顔を見つめながら歩いています。わからなくていいんです、こっちの話ですから。




「てか、沢木さん寒くないっすか?」




「いや、別に……」




横を歩く沢木なんとかさんはこの夜道に上下体操服という、もう私を食べて下さいと言わんばかりの様相を呈している次第です。




いやしかし、彼女を食べることなんてできやしません。なぜなら彼女は一人で、しかも素手で、武装しているテロリスト集団が占拠している列車やら戦艦やら要塞やらを潰すプロフェッショナルですからね。俺のイメージですけどね。




しかしいくらセガールズと言えども、女の子。

ここはさりげなく自分の着ているジャージを羽織らせて、紳士な自分をアピールしちゃえ! と言うことで俺はおもむろに上のジャージを脱ぎ沢木さんの肩に掛けました。




「寒いねぇー寒いだ、ろぅーねぇーこんなぁー夜はぁー♪ってことで、どうぞ沢木さん」




「むむ!? ま、松山千春か……ぁ、ぁり……」




「はい?」




「い、いや別にいい!! いらない! お前だって寒いだろ?」




「大丈夫っすよ? 暑いのは我慢できないっすけど、寒いのは平気なんで」




沢木なんとかさんはなんかあたふたしてます。男に対する免疫が全く無いのか、この人は。




「あ、ありがとう」




「どういたしまして」




俺がそう言うと沢木さんはとても可愛らしい笑みを浮かべてくれました。




思えば初めてみる笑顔でした。

いつも怖い顔ばっかしてるから沢木なんとかさんの笑顔は、なんつうんですかね? すごくあどけなくて可愛いらしくて……惚れそうになってしまいました。危ない危ない。




「お前は面白いやつだな。お前といると私まで楽しくなってくる……不思議なやつだ」




「常軌を逸しているとなら言われたことがありますよ」




しばらく俺と沢木さんは暗い夜道を肩がつくぐらいの近さで、笑いあいながら歩いてました。



なんでか、月がやたらと明るく感じましたね。そんで不思議と暖かかったっす。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ