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リトライ  作者: 相原由紀
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先輩達の卒業

[011301] 先輩達の卒業


 新年も始まり三学期は三年生にとっては最期の短い期間である。二月に入ってしまえばほとんど学校にも来なくなり、卒業を待つだけである。

 俺は放課後時々、市野沢先輩のところ、つまりコンピューター部に行っていた。この時期のコンピュータは黎明期でまだパソコンと言われるものは無い。クラブにはカシオ製の卓上コンピュータが三台あった。これは今で言うプログラム電卓みたいなもので計算や判断を専用のアセンブラ形式の言語で入力でき、実行するとプログラム通りに処理することができる機能があった。

 そして最近購入したばかりのオリベッティ製最新オフィスコンピュータがあった。これは画面こそ無いが専用の大型プリンターが付属しており言語は何とBASICである。当然プログラム容量やメモリーも当時としては大きく処理も早かった。

「先輩は将来この方面に進むんですか?」

「まだ漠然とだが、コンピュータって今後伸びると思うんだ。ソフトウエア産業って言う分野かな。自分で色んな処理をするプログラムを作る仕事がしたいと思っているよ」

「そうなんですか、それはたしかに有望な業種ですよね。けど先輩、プログラマー止まりじゃなく、SEを目指してください。プログラマーは使い捨てになりますから」

「SEって、システムエンジニアの事だよね」

「経験が物を言う世界です。大きな処理をするシステムを構築する場合、機器の選定から構成、操作や作業の手順等全体を設計するんです。そしてプログラムも何人かに手分けして作ることになりますよね、それらの指揮管理も行うんです。だからプログラムの知識も必要になります」

「将来どうなるかは、これからもっと勉強しなければ自分でも不安だし先もみえないだろうしね。君もこの方面詳しそうだけど、何か具体的に目標って決まってるの?」

「はい、俺はハードウエアもソフトウエアもやるエンジニアになりますよ。マイコンってのがもうすぐ出てきますから、それらを使って機器の制御とか計測とかをやりたいですね」

「ほう、そんなに的確な目標があるのか。すごいなー」

 たぶん今の時期、まだマイクロソフトも少人数で試行錯誤のはずだ。やっと8ビットマイクロプセッサが市場に登場し、これから急激な速度で第一次デジタル革命が始まる。

 これからの時代の流れを詳細に話すこともできるが、先輩には必要ないかもしれない。自分自身で流れを読み、上っていくのも人生と言うものだと思う。かえって変な先入観があれば本当は成功していたのにもかかわらずマイナスとなることもあるはず。先輩は能動的に動ける人だから、たぶんその心配はないだろう。

「先輩の後を追いかけますよ。そして、機会があったら一緒に仕事しましょう」


 それから数日後、俺らは西本先輩に図書室に呼び出された。市野沢先輩もいてる。

「今日来てもらったのは、あなたたちに、ちょっとしたプレゼントがあるの。この学校ってまだ出来て浅いよね、だから図書の充実を図る為の予算があって、来期までに購入する本を選定するの。今回五十冊くらいかな。でね、その本を選べるのよ」

「えっ図書室の本って先生が選ぶんじゃないんですか?」

「違うの。もちろん先生の推薦ってのもあるけど、その前に生徒からのリクエストを募集するの。ホームルームで告知あったと思うけど。ここにも張り紙してあるし」

 西本先輩は図書室のカウンターに大きく手書きされた告知板を示した。

「あっ、たしかに聞いたような気がします。でもそれって採用されるんでしょうか?」

「あなた達でもそんな状態だから、リクエストなんてほんの数冊しかないの。もちろん審査はあるけどマンガや雑誌とかじゃないかぎりほぼ通るのよ。で、図書の管理は先生じゃ無くって事務職員の原田さんがやってるの。彼女結婚前、都会の図書館勤務だったんだって」

「そこでだ、その完全に余ってるリクエスト枠を君らが埋めればいいってことだよ。僕らはもう卒業なんでリクエストしたって読めないし活用できないだろ。特に電気や電子、コンピュータの技術書ってけっこう高いだろ」

 たしかにそうである。技術書籍はそれぞれ専門の出版社が出しており、値段は安いもので二千円から三千円台、厚みのある高いものになると五千円を超えるものも多い。

「はい。それはもうびっくりするほど高価なんで、こずかいで買うなんてできません」

「これ、リクエスト用紙。一人十冊までリクエストできるから。由紀ちゃんも何か欲しい本ってある?」

「あたしもいいんですか?そうですねぇ。お料理、クッキングの本とか、園芸の本とかでもいいんでしょうか?」

「あぁ全然大丈夫だよ、物語とか文学ばっかりじゃつまらないからね、専門書分野も資料本としては有用だと思うよ」

「なんかウソみたい。欲しい本がタダなんて」

「俺も感激。これでかなり節約できる」

 我々は出版年鑑をたよりにリクエストする本を決めていった。俺は電子、電気工学系を十冊、由紀はクッキングレシピや栄養学を五冊と園芸、今で言うガーデニングと植物系の本を五冊、そして西本先輩は純文学と恋愛小説を、市野沢先輩はコンピュータ関連と規格表本をそれぞれ枠一杯使ってリクエストしてくれた。

 それからしばらく経って、またあらたまって俺と由紀は西本先輩と市野沢先輩に呼び出された。

「この前の本、全部通ったからね。新学期までには届くって原田さんが言ってたから」

「えっ採用されたんですか。ありがとうございます」

 西本先輩らは自分が買ったんじゃないからと、恐縮した。

「今日はね、ひとつお願いがあるの。特に由紀ちゃんに。とても重大なことよ」

「いったい何なんですか?あらたまって」

「図書委員を引継いでもらいたいの。任期は卒業までだから二年よ」

「それって、選挙とか、先生が決めるんじゃないんですか?」

「生徒会長とかは選挙だけど、図書委員は適任者への引継ぎ制なの。あたしも一年の時に三年の先輩から引き継いだのよ。だから、由紀ちゃんがОKなら三代目になる」

「しかも女系らしいんだなこれが。でも僕みたいな男子のサポートも必要不可欠」

「あたしみたいなのでだいじょうぶなのかなぁ。何も知らないし」

「簡単よ。わからないことは原田さんが教えてくれるし、昼休みと放課後の貸し出し業務はクラスの図書係りの人がローテーションでやってくれるわ。主な仕事は、新書が入ったら蔵書印押したり連番シールを貼ったり帳簿への登録、古くなった本の修理や改装でしょ。図書カードの管理や未返還者の対応、図書室の運営全般。それと卒業アルバムや校内出版物の作成にも加わるわ。でも特典もいっぱいあるから」

「この準備室を自由に使える。原田さんも僕らが慣れてきたら稀にしかこない。コーヒーも飲めるし」

「卒業するまでにだれかに引き継ぐか決めなきゃいけなかったの。あなた達なら適任だし任せれる唯一のペアなの。どうかしら由紀ちゃん」

 由紀はしばらく下を向いたまま考えていたようだが。

「はい。わかりました。先輩から推薦されたんだから、期待を裏切らないようがんばってみます」

「そんなに硬くならなくってもいいのよ。由紀ちゃんのペースで自由にやって。それともう一つ報告があるの」

 今度は何かと身構えたが西本先輩は笑顔で言った。

「市野沢君が近畿工業大学に合格しました」

「えっ・・・それって難関ですよね。志賀高からは、始めてなんじゃないですか?」

「いや、去年も一人行ってるし、二期にもいてるらしいから。僕は情報処理学部だから、そこは始めてかもね」

「すごいすごい、おめでとうございます。西本先輩はどうされるんですか?」

「あたしは、洋裁の専門学校なの」

「それじゃぁ二人で都会へ出るってことですよね。て、ことは」

「まさか、バカね。あたしは、寮に入るし、彼は下宿ってとこかな」

「でもでも、近くなんでしょ、休みの日なんか都会の街中でデートできるじゃないですかぁーいいなぁ。あたしも、そんなのあこがれちゃいますよー」

「まぁ君らも二年後には進路も決まるし、それまでここで一杯想いでつくれるじゃないか。俺は先に行ってる。南条君、待ってるからな」

「それはムリですよ、もっと低いレベルの学校か、専門学校になると思います」

「由紀ちゃんは、どうするか決めてるの?」

「行きたいところは漠然とあるけど、就職するかも。けど、これからの二年間のほうが今は大切ですよね。がんばります」

「じゃ、そう言うことで、後はよろしく。あと少しの期間しかないけど、できるだけ教えるからね」

 それから卒業までの間は二人で昼休み、図書関連の作業の手順を教わった。卒業生が休みに入っても発注していた本が入りだしたので西本先輩は時々出てきて手伝ってくれた。


 そして、遂に卒業式の日がやってきた。その日俺は少しだけ遅刻した。あるものを受け取りに途中の店に寄ってから登校したのだった。

「どうしたの?寝坊でもした」

「いや、ちょっと寄り道してきた」

 式は始まり、俺はいつもの通り放送部の技術担当として舞台の裏方でPAの調整をしていた。式の校歌や歌はピアノだが、卒業証書授与や退場はBGМだし、マイクの本数も多い。しかも決してミスは許されない。

 それと、ちょっとしたサプライズを行う予定である。式終了で卒業生退場の時、三年生の何十人かに、メッセージを予め収録してもらってある。これをミキシングして流すのである。

 式は厳かに進行していった。中には泣いている女子も何人かいてる。そしてその時が来た。

「・・・以上を持ちまして第三回卒業証書授与式を終了致します。卒業生退場。起立!」

 BGМスタート。松任谷由美の卒業写真である。これもたぶん異例であるはず。今までは定番のお堅い蛍の光とかであった。現代ではわりと好みにあわせて選曲されるがこの時代としては型破りである。そして拍手も重なり、卒業生が順番に進みだす。メッセージスタート。

「志賀高、三年間ありがとう。久保でした」

「加藤先生、一生忘れません。由美でした」

「サッカー部、青春でした。山本」

「卒業したくないです。武田」

「坂東先生、早く結婚してください。幸でした」

「勉強しなかったけど、おもいっきり楽しかったです。西村」

「心配ばっかりかけて、ごめんなさい。感謝でいっぱいです。みゆき」

「食堂のカレー、最高でした。中田」

「白渕先生、殴られたのが一番のいい想いでです。大住でした」

「後輩たち、後はまかせた。窪田」

「次生まれてきても、志賀高に入ります。坂本」

「田代先生、大好きでした。美佐子でした」

 等等、遂には先生の中からも泣く姿がうかがえる。やっぱり卒業式はこうでなければと思い企画の成功に安堵した。

 式も終わり、機材の片付けをしていると体育館の主、生活指導の白渕先生が入ってきた。

「おまえら、やってくれよったな」

「先生、目赤いですよ。さっき、いいメッセージありましたね」

「アホ、眠かったからこすっただけだ」

「まームリしなくてもいいですよ。鬼の目にもって言いますから、来年もやりますからね」

「ほどほどなのにしてくれ。たのむから」

 けっこうこの企画はよかったみたいで、次の年から予め録音編集して卒業アルバムにソノシートレコードとして添付するようになった。もちろん内容は卒業式まで非公開である。

 あまり活発な活動の無かった放送部も、日々の教室や行事の生録を行うようになっていった。これはレコード化の音源素材としても有効で、後日他にも利用されていった。


 式の後、各クラスHRになる。卒業生には最後のHRであり、これが本当のクラスとの別れである。由紀と俺は終わると図書準備室にかけつけた。先輩たちも来ることになっている。

 先に西本先輩が現れて、しばらくしてから市野沢先輩が来た。何か封書のようなものを持っている

「どこ行ってたの?しかもボタン三個もなくなってるし」

「あーこれ、部に挨拶しにいったら後輩の女の子に記念にって言われて、渡した」

「それ、二人よね、もう一つは?そしてその完全にラブレターっぽい手紙はなーに?」

「いやーこれは僕も驚いたよ。同学年の子がくれた。で、ボタンもあげた」

「それってだれ?」

「今は殺されても言えない。何年かしたら言うよ」

 西本先輩は、ふくれたしぐさをしつつも本気では怒ってはいなかった。

「先輩、大モテですねー案外泣いてる子が沢山いてたりして」

「ははは、そんなにはいないよ。なんなら由紀ちゃんも一つあげようか?」

「いえ、それ以上無くなると寒そうだし、西本先輩がなんだか、かわいそうで・・・」

「いや、心配しなくてもいいよ。ボタンより一番大切なものを取っていったから」

「えっあたし何かもらったっけ?」

「人生の予約券」

 一瞬時間が止まったような感じになった。

「今のはけっこうプロポーズっぽかったですね。まーまー先輩、お腹空きません?食堂で最後の晩餐とでも行きません?」

 食堂は昼を過ぎたのと、土曜のように昼からは放課後になったので空いていた。卒業生も何組か同じように最後に食堂のランチを食べに来ていた。

「何にします?最後くらいは奢りますから」

「ありがとう。もちろんカレーでしょ。あたしここの味好きなのよねー」

「えぇーそうなんですかぁ。あたしもカレーは最高って思ってました」

「じゃぁ全員カレーってことで。いいですね」

 もちろん市野沢先輩もうなづいた。実はこの志賀高カレーは美味いと前世でも評判になり、周辺の人も食べに来ていたくらいなのだった。

 学校によっては定刻になると校門を閉じてしまうところが多いが、志賀高の場合、高台にあり坂も急なので用の無い人はあまり入ってこない。休日でも閉まったことはない。一般の人も自由に出入りできる。

 昼休みは学生で混むが、それを過ぎるとガラ空きになるので外周りの営業マンとか、農作業を終わった人たちがグループで食堂を利用しにくるのである。食堂も放課後からは、クラブ活動やってる人とかで再度利用があるので割りと遅くまで営業している。

 この食堂を運営しているのが優しそうな夫婦で、忙しい時は娘さんと、もう一人おばあさんが手伝いにきている。学生らからは、食堂のおじさん、おばさん、おねえさん、おばあさんと、呼ばれており、気さくに色々話をしたりして人気があった。なにより学生価格の低料金で、美味しいのだから文句を言うやつはいない。

「今日は最後だからサービスよ。がんばってね」

 と、食堂のおばさんがいつもはメニューに無いカツを入れてくれた。これでカツカレーになった。

「おばさん。ありがとうございます。今までお世話になりました」

「なんだかお嫁に行くみたいじゃない。また遊びにきたらいいのよ.。そのときまた寄ってね」

「はい、必ず来ます」

「でも、ここのカレーを好きな時に食べれなくなるなんて、こんな重大なことを忘れていたんだ」

 市野沢先輩は、何か大きなミスを犯したように考えこんだ。

「そうだ、カレーの缶詰なんてできないのかなー」

「先輩それ、いいアイデアですよ、なんならレトルトパックってのもいいかも」

「何それ」

「つまり、ボンカレーですよ。あのラミネート状の袋に入れるんですよ」

 このアイデアは後々実現するのだが、それはまた後の話。

 四人ともこのカレーの味は一生忘れないだろう。

 昼ごはんの後は図書準備室で最後のコーヒータイムとなった。西本先輩がいつものように入れてくれた。四人作業机を囲み、静かにこのひと時をかみ締めるように味わった。

 春先でまだ肌寒い季節だが、窓を開けると午後の太陽で温められた気持ちのいい風がゆっくり抜けてゆく。

 しばらくすると、西本先輩が、下を向いたままで、小さな声で泣きだしていた。

「先輩、だいじょうぶですかぁ」

 由紀が側に付き、抱きかかえる

「ごめん。あたし、ほんとは、こんなんなの。みんなの前じゃ強くみせないといけないから、張り詰めてたけど・・・これで最後って思うと、たまらなくって・・・この一年間はほんと楽しかった。あなたたちに感謝してる」

「ううん、感謝するのは、あたしたちのほうですよ。何度も助けてもらって、今があるのは先輩たちのおかげですから」

「由紀ちゃん、ありがとう。こんなの似合わないね。これじゃなんだか逆だよね」

 たしかに、数ヶ月前の由紀と西本先輩がひっくりかえったみたいだった。最後になって西本先輩の女の子っぽいところが見えて俺は何か心の奥をくすぐられたみたいな感覚を感じた。

「さぁそろそろ行こうか、僕たちの未来に向けて」

「先輩たちは自転車ですよね、先に行ってください。ここ閉めて、校門で待ってます」

 自転車置き場は校内で奥のほうにある。先輩たちは仲良く手をつないで出ていった。俺は準備室の奥にバケツに入れ隠してあった花束を取り出した。

「はい、一束は由紀から市野沢先輩に渡して」

「そっかぁ朝遅れたのはこれだったのね。実はあたしも渡すものがあるの。じゃぁ一つは西本先輩にお願いね」

 俺たちは校門の前で待った。卒業生はあらかた帰ったのだろう。もうだれも下校する者もいない。いつもと同じように各運動部が練習する声だけが聞こえる。校門の横にはソフト部がバッティング練習中だ。俺は新キャプテンに声をかけた。

「おーい、もうすぐ西本先輩が帰るから」

 しばらくすると市野沢先輩と西本先輩が一台の自転車を押しながら校門まで来た。

「あれ、今日は二人でお帰りですか?」

「これから彼んとこでクラスの何人かで打ち上げなのよ。だから朝は母に送ってもらったの」

「いいですね楽しそうで・・・じゃぁこれ、卒業おめでとうございます」

「先輩もこれ、包みは月並みだけどハンカチです。四隅に四人のイニシャルが機械刺繍されてます。使ってくださいね」

 俺は西本先輩に、由紀は市野沢先輩に花束とハンカチを渡した。

「ムリしたんじゃないの?」

「ほんと感激だなーこんな卒業式なら何度やってもいいね」

 西本先輩は、ちょっと、らしくない女の子座りで後ろに座った。

「じゃ、これでほんとにお別れだ。がんばれよ」

「先輩たちも、お幸せにぃ」

「行きます。未来へ発進!」

 俺は掛け声とともに自転車を押し出した。西本先輩は、また泣き出したみたいだ。自転車は始めはゆっくりとソフトグランド横の坂を滑っていく。

「西本・ファイトー」

「西本・ファイトー」

 予め打ち合わせ等はしていなかったのだが、ソフト部員がグランド横一列になってエールを送っている。西本先輩も手を振って答える。

 もう二人の自転車はかなり加速してくる。

「先輩!大好きでしたー」

 俺はおもいっきり叫んだ。

「あたしも、大好きでしたー」

 由紀もそれに続く。先輩らは、『わかったー』と、言うべく手を突き上げ、坂のカーブで見えなくなって行った。

「ねぇ、どっちに言ったの?」

「両方だろ」

「そうだよね」

 俺はソフト部にOKの意味で手を上げて合図してから由紀とエントランスへ向かった。

 あのタイムスリップからほぼ一年、前世ではありえなかった色々な出来事があった。これで本当に流れを変えることができたのか?少なくとも今は良い方向へ向かうことができていると確信できる。



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