期待、退屈。
冬休みが開けると、茜と圭介の騒動で
クラスが充満していた。
おそらく、茜も圭介も自分で
情報を漏らしたのだろう。
美「まさかこの時期にこんな展開とは」
勇「誰もが予想しなかっただろう」
美「二人の仲は深まるばかり」
勇「こうしてクラス公認カップルとなった」
勇太と美玖は茜と圭介と会うたんび、
嫌味のようにそんなことを言うのだった。
圭「お前らだって公認だろ?」
美「あたしが公認してない」
美玖は顔を赤くして首を振る。
勇「俺だって公認してない」
勇太は冷淡とそう言い放つ。
その二人の言葉に、
茜が横から口を出す。
茜「は? カレカノ=公認している
ってことでしょうが!!」
すると、美玖も負けじと口を出す。
美「いつからカレカノよぉー」
勇「そんなんしらね」
すると圭介が大きな声で
圭「お祭りのときにキスしてたくせに
よくそーいうことがいえるよなぁ^^」
とわざとクラスに響くように言った。
勇&美「そっ、それは⋯///」
すると、たちまちクラスは勇太と美玖の話になり
段々と近寄ってくる。
「えー?」
「なにそれー」
「いついつ?」
「どんな感じで?」
勇&美「しらないよ!!」
そんな教室の傍らで茜と圭介が避難していた。
そして、こそこそとこんな話をしていたのだった。
圭「ほら、これで話題はあの二人にっ」
茜「流石圭介っ♥」
圭「あの二人が認めるところもみたいしな」
茜「もうあの二人、お姫様と王子様だよね?」
圭「リア充過ぎて憧れちゃいますぜ」
茜「ですぜっw」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
圭介と茜が一緒に帰るようになってから
美玖は一緒に帰る人が居なくなってしまった。
理央と歩は二人で一緒に帰ってしまい、
簡単に入れるような空気でもない。
美「今日もまた1人だよぉ」
そんなことで、美玖は毎日勇太に愚痴をこぼしていた。
ほんの少し、期待も寄せながら。
勇「そんなん勝手にしろよ~」
勇太は無責任にランドセルに教科書を詰め込む。
美「なんで、ひどぉい!!」
勇「俺に言われてもどうにもなんねーだろ?」
そんな勇太に美玖は怒ってしまった。
美「決めつけないでよっ」
頬を膨らませながら、投げやりにランドセルを
背負い、教室を去る。
そして美玖は独り、今日も退屈な下校を
送ることとなってしまった。
――あの時にちゃんと言ってた方が良かったのかなぁ⋯
そんなことを胸にしまいこみ、独りで歩いていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そのころ...
勇太は何も気づかないまま
淡々と教室を去ろうとした。
が、すると教室のドアのところに
二つの壁が立ちはだかる。
圭「あーあ、帰っちゃったよ?」
茜「追いかけなくていいの?」
二人は通せんぼをするように立っている。
勇「なんでさ?」
圭「あー言うこと言っている女子っていうのは」
茜「結局はその男子と帰りたいっていう合図なわけさ」
圭「ほんと鈍感だなぁ」
勇「はぁ?」
茜「ほら、追いかけろっ!」
茜は無理やり勇太の背中を押し、
追いかけるようにと命令した。
勇「うわっ!」
勇太は押された拍子に転びそうになったが
そのあとすぐに立ち直り、一回圭介と茜の方を振り向き
「まじで?」といった顔をした。
圭介「早く行けよ」
茜「彼女が待ってるぞ」
その言葉で背中を押されたのか、
勇太は美玖を追いかけて行った。