それぞれの予感。
季節は冬真っ只中。
と、いうほど寒くはないのだが、
社会通念や気候学によれば、冬に突入した。
修学旅行の後日、学校では席替えが行われ、
先生と生徒の陰謀により、
勇太と美玖の席は隣同士となった。
席は、窓側の後ろから二番目。
学園もののアニメで言えば、主人公の座席ではないか。
そんな幸運な席に座ったのにもかかわらず、
勇太は不満そうな顔をした。
が、実際のところはホッとしているようだ。
勇「またお前かよー」
美「いいもん!! もう慣れたし。」
勇「そーだな⋯www」
美「それにしても、眠いや⋯」
美玖はずっと目をこすっていた。
席替えしたのは昼休みで、掃除当番は早く
掃除を終わらせて、余った10分をつかって
席替えした。その分疲れも倍増し、
その忙しさもなんのその、美玖は
5時間目からずっと居眠りしていた。
勇太もずっと窓から外を眺めていた。
それも、5時間目は真面目臭い社会の時間だった。
政治やらで、本気で聞いてる者も殆どいない。
圭「お前、真面目に聞かなくていいのか?」
勇太の後ろから、そんな声がした。
圭介の席は勇太の斜め後ろだった。
「この二人のサポート役をしたい」だの、
無理やりこじつけ、この席になった。
勇「俺は塾行ってるからダイジョ~ブ♪」
勇太は舌をぺろっとだし、グッドサインまでもしていた。
圭「随分と自信家なやつだのう」
勇「受験すっから、こんぐらいのことは
やっておかんとなっ。こいつと違って。」
勇太はそう言うと、机の上で伏せながら寝ている
美玖の頭を、人差し指で突く。
圭「これじゃあテストの点が心配だなw」
勇「いんじゃねーの? こいつ、居眠り常習犯だけど、
要領だけは良くて、教科書だけみて100点だった―――
とか結構あるしさ。居眠りでもしてなかったら
頭いいほうだと思うけどなー? 塾もいってねぇし。」
圭「そう考えると⋯結構頭良かったりして」
すると、勇太は鼻で笑った。
勇「⋯ねーなw^^」
圭「なぁw^^」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
6時間目の国語も終わり、美玖の居眠りタイムも終了した。
河原先生も美玖の居眠りにはお手上げで、
前に何度も起こそうとして、耳元で叫んだり
ペンケースで頭を叩いたり、腕を抓ったりしたが、
まったく起きなかったという。
完全に眠気が覚めない限り起きない美玖は、
誰にも起こせないと、クラスでも知れ渡っていた。
が、1つだけ起こす方法があった。それは⋯
勇「田中さーん、そろそろお時間ですよー」
耳元で勇太が囁くと、必ずと言っていいほど起きるのだ。
美「うーん? もう、5時間目終わったの?」
勇「はぁ!? もう、6時間目も終わってんぞ?
実質、1時間半も寝てんだよっ!
さ、早く帰るぞっ。」
美「ちょっ、待ってよ!!! まだあたし
全然支度もしてないのに!!」
勇「おーおー、待ってやりますよ」
美「待たせますよっ」
ランドセルに乱暴に教科書を入れると、
教室の入り口に立っている勇太の元
へ走って行った。そして、歩きながらこんな話をしていた。
美「あたし、全然政治の仕組みわかんないやー」
勇「そりゃそーだろーなぁ?
居眠り常習犯が」
美「はぁー? せめて眠りの国の美女と呼びなさいっ」
勇「それをいうなら、眠りの森の美女だろ」
美「あははっ そっかー♪」
茜と圭介は、そんな二人の様子を遠目で見ていた。
圭「いつの間に一緒に帰るようになったのかねー」
茜「もう! 私の帰る人がいなくなっちゃったじゃん!」
圭「じゃ、俺と帰るか?」
圭介の突然の言葉に茜は呆然と立ち尽くす。
茜「別に⋯いいけど⋯///」