信じるチカラ。
それから何日もたったが、美玖はほとんど元気がなかった。
というより、抜け殻のようだった。
休み時間は昼寝しているし、帰り道も一人で帰り、
何を聞いても「うん⋯」としか返事をしない。
おまけに、修学旅行の行動班は予告どうり、
理央と茜と勇太と遼で行くことになり、
美玖は歩と圭介と共にすることになった。
歩「ホントによかったの?」
美「うん⋯」
圭「どうしたんだよ⋯急に」
美「うん⋯」
悟りを開いたような目をしていた。
圭「後悔してもしらねぇからな」
すると美玖が反応し、圭介をギロッと睨む。
美「なんでそーまでも言われなきゃいけないの?」
ランドセルを机から奪うようにとり、教室を出ていく。
歩「まっ、待って!!」
歩もランドセルを背負い、追いかける。
その様子を、圭介は眉を寄せてみていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
歩「美玖ちゃん!!」
美玖は振り向かず、俯きながら歩いていた。
歩「はぁ⋯やっと追いついた⋯」
そう言うと、歩は顔をのぞきこみ、微笑む。
美「⋯放っておいてよ。」
いつもとは全く違う、低い声で呟く。
歩「勇太君ってね」
そんなことも構わず、歩は勝手に話をし始めた。
歩「勇太君ってね、もとはやんちゃだったんだよ。」
美「え?」
唐突で、びっくりした。
歩「あゆのお母さんと勇太君のお母さんが仲良いから、
幼稚園のころからずっと遊んでたの。」
美「幼馴染?」
歩「うん、勇太君が嫌がるから、
あんまり言ってないんだけどね」
美「そう⋯なんだ」
歩は話を続けた。
歩「でも、幼稚園の頃は勇太君、悪いことばっかしてて
よく先生に怒られてた。おかげに喧嘩も強くて、
怖がられてた。だから、あゆが勇太君と遊んでると、
よく男の子にいじめられてたの。
友達もみんな、あゆから離れて行ったんだ。
でも、勇太君だけは違ったよ? 勇太君は助けてくれた。
男の子にいじめられてるところを。暴れまわってまでも。
勇太君は、自分がどうなろうともあゆを見捨てなかった。
[僕のせいでごめんね]だなんて言ってくれたんだよ^^
[これからは歩に心配かけないようにするから]って。
あんな勇太君が。信じられないでしょっ?」
美玖は鼻で笑うと、
美「バカはいつまでも変わらないんだね」
と言って、笑った。
歩「だからあゆ、勇太君のこと信じてるんだっ♪」
美「え?」
歩「美玖ちゃんを見捨てるはずないじゃんっ」
「ね?」というように、歩は笑顔で首をかしげた。
美「あたしも⋯少しは素直にならなきゃね。」
気がつくと、頬からしずくが伝っていた。
今までたまっていた悲しみや苦しみが一気に流れるように。