歯車、狂う。
もう、クラスのみんなは気付いていた。
(こいつ⋯嫌われるタイプだ)
「いくらフレンドリーっつったって⋯」
学級委員の、天野真帆が少し大きめの声で
技と聞こえるように呟いた。
すると、理央は真帆を睨んだ。
美「ねぇ⋯、さっきの話⋯ホントなんだよね?」
勇「確信はしてないけど、男子はみな、
そう信じてるっぽい⋯。だけど⋯
俺はあんなヤツと関わりたくない⋯。」
先生も理央に呆れているようだった。
すると、理央は勝手に黒板に自己紹介を書いた。
名前、誕生日、好き嫌い、特技、
そして、彼氏いない歴までも。
理「私は、ご存じでしょうけど、
鈴木理央。理央って呼んでね^^
それと、誕生日は6月26日。
ちゃんとプレゼント贈るのよ?
食べものの好き嫌いは多いわ。
勿論。人の好き嫌いもね! 特技は
運動、勉強、演技だってできるのよ。
彼氏いない歴は⋯そうねえ⋯。
5年よ。小学生に入って
ずっと居るわ。だけど、今はいないの。
前の学校に居たのよ。もう⋯どうしよう⋯。」
急に声を変え、泣き始めた理央に、
先生が「まぁまぁ⋯」と、続けさせた。
理「ってなわけ! 貴方達。今の私の
演技に騙されたでしょう? ふふ♥
私と釣り合う人間がいればいいけど。」
自己紹介は無事(?)に、終わった。
歩「あの子⋯自慢しかしてない。」
美「まぁまぁ⋯転校生な訳でしょ?
最初の方は大目に見てあげようよ。」
勇「な、お前も上から目線か。」
先生「ぢゃあ⋯鈴木さんは、そこの席に⋯。
丁度あいていただけですからね。」
仕方がない。というようなことをつけたし、
先生は座らせた。そこはなんと⋯
――あ⋯あたしの隣!?
そう。美玖の隣は勇太で埋まっているが、
通路を挟んでの隣はあいていたのだ。
そして、気の毒なのは理央の隣。
理「机が高いわ⋯。私、こんなに
座高高くないわよ? ほら、
ちょっと貴方、椅子を交換して?」
茜「あ⋯うん⋯。ごめんね⋯。
気にかけてなかったし⋯。
かつてはここに座ってた子も
いたの。だけど、転出していっちゃって」
理「そんなこと聞いてない⋯早く変えてよ。」
真「まぁまぁそう怒らずに!!」
真帆が学級委員の威厳として、
注意したが、これが理央に火をつけた。
理「貴方⋯さっきからでしゃばってるけど
なんなの!? ちょっとは黙ってなさいよ!!」
そこに、圭介も割り込んだ。
圭「あの⋯僕とこの人は、学級委員なんです。
あくまでも、クラスの中では学級委員の
注意も聞き入れて下さい。 お願いしますよ。」
もう、クラスはあきれ果てていた。
その上、崩壊だと誰もが思っていた。
「なんだよ⋯アイツなんか、怖い学年主任、
内藤先生が担任の3組に入れよ⋯。」
なんて声も飛び交った。
その日から、理央、いや女王様のおかげで
とんでもなく授業が修羅場になっていく。
先生も、もうすぐある事を実行しようとしていた。
そのある事とは⋯。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
後日。
美玖はいつものように登校した。
といっても、吹部の朝練があるために
登校時刻は7時23分なのだが。
勇太もサッカーの朝練がある。だから、
廊下で会うこともしばしば⋯;
そして、朝練が終わると、
疲れた体を時期的には早(すぎ)めの
クーラーで、のほほんと癒すのが
定番だった。
5月と言っても、下旬で、気温は30度を超す夏日。
いつもなら、クーラーの下に集るアリのように
生徒がいるはずだったが
今日はなんだか違った。
いつもは先生が教卓の整理を
していたり、教卓を囲んで、
井戸端会議に先生も巻き込んだりで、
ワイワイやっているのだが
今日は先生も居ないし、黒板には
「速やかに着席するように。」
との文字。まぁ、簡単にいえば
暗い空気ということだ。
それをいち早く察知した生徒たちは
着席し隣同士で、ある噂をするのだった。
勇太と美玖もその中の2人だった。
美「ねぇ⋯。」
勇「何⋯? ってか、言われることは
ほぼ分かってるんだけどさ⋯w」
美「これって⋯⋯⋯
ウチらのことなのかな!?!?!」
勇太の予想外の言葉だった。
勇「はぁ!? 俺ら何も悪い事してねーぞ!?
自分的には⋯な^^;」
美「じゃあ⋯みんな、なんの噂してるの?」
勇「いやあーお前の変人さにはいつも
驚かされるぜ⋯^^; ってか⋯
あいつじゃねーの? 鈴木。
アイツ、いつも授業に文句付けてるし⋯
誰かが意見いったら、反対して
討論会みたいになるし⋯。最悪だぜ。」
美「つまり。説教って事ね⋯?」
勇「なんで嬉しそうな顔してんだよ⋯。
まぁ⋯そーいうことだな。」
その時、いつものように遅刻寸前で
車に乗って送られてきた鈴木理央
が教室に姿を現した。
美「(だって⋯人の不幸って面白いじゃない?^^)」
勇「(はははっ⋯お前⋯腹黒だな!)」
その時、「もうすぐか⋯やだな⋯」
などという声が聞こえた。
理「何がヤなの?」
こんな険悪な空気の中ですら、
理央はけろっとした顔をして、いつものように
乱暴にランドセルを机に置いた。
理「あの意味、なに? 速やかに着席?
なんで? 支度ができないぢゃない。」
黒板の文字を無視し、だらだらと
朝の支度をしている。
ガラッ!
その瞬間、理央を除く生徒たちは
背筋を伸ばし、待ちかまえるような姿勢になった。
そう、先生が来たのだ。
――え⋯なに!?
理央は、何が何だか分からず
なんとなく座ってしまった。
美「まだ⋯朝の会の時間じゃないから
説教は始まらないのね⋯。」
勇「あぁ⋯って⋯今日俺たちが
日直らしいぞ!?」
小声で始まったお喋りだったが、
勇太の指が黒板の右下の端を
さすと、美玖は驚いて唖然としていた
美「(ふんっ⋯アタシが隣で悪かったわねっ)」
キーンコーンカーンコーン~♪*.+
チャイムが鳴った。
とうとう来た。朝の会だ⋯。
2人は同時に立ち、黒板の前にたった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
※登場人物、場所、団体名などはすべて実在のものと関係ありません。