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無色の魔力

「では始めに、リオンさんからどうぞ」

 お姉さんの言葉の後に、リオンが水晶にそっと手を触れる。次の瞬間、透き通る水晶の底部から淡い光がゆっくりと立ち上り、内部を満たしていく。まるで温度計の水銀がじわじわと上昇していくように、その光は徐々に上へと進み、やがてある地点で静止する。そこに刻まれた数字は……

『魔力量:700』

「「「おおぉー!!」」」

ギルド内の冒険者たちがどよめいた。

「700!? あの年齢でかよ……」

「新人でこの数値はやべぇな……」

 「いや、新人どころか、この街の冒険者の中でもかなり高い方だぞ!」

周囲の冒険者がざわつく。俺たちも分かってはいたが、改めて数値を見ると、圧倒される。

「さすがリオン……」

 マリーが息を呑んで呟く。

 その後、順番に測定が行われた。

 マリーは『魔力量:520』

 カイルは『魔力量:500』

 そして俺は『魔力量:580』

 自分の数値が表示された瞬間、少しだけ安堵した。訓練学校で測定した数値は、間違いではなかったのだと再確認できたからだ。だが、その安堵はすぐに消えた。

(……リオンとの差がデカすぎる)

 リオンが俺よりも魔力量が多いことは分かっていたが、100以上も差をつけられている。

(基準値を上回っただけで、何を安心してんだよ…)

 悔しさを噛み締めるが、今はそれを受け止めるしかない。

「では、次に魔力色の測定を行います。」

 悔いている場合ではない。ここからが本番だ。魔力量に次いで重要なのが、魔力色。魔力色はその人間の適性を示すものであり、スキルや戦闘スタイルを大きく左右する。

「リオンさん、お願いします」

 魔力色の測定用水晶は、訓練学校で使用した魔力量測定水晶と同等の大きさで、球体状の透明な水晶だ。

 リオンが水晶に手を置く。瞬間、透明な水晶が鮮やかな赤色に染まった。

「赤か……!」

「魔力量700で身体強化の適性持ちかよ!こりゃスゲェな……」

 赤色は身体強化系統スキルに特化した魔力色。強靭な肉体を誇る戦士や、武術を極める者が持つ色で、まさにリオンに相応しい魔力だった。また、赤色を持つ者の中にはスキルレベル2の『身体超強化系統スキル』を扱える者もいる。スキルレベル1の身体強化系統とは比べ物にならない力を発揮することができる。

 次にマリーが手を置く。次の瞬間、水晶は『紫色』に染まる。

「魔術系統スキルの適性か!」

 紫色は、魔術系統スキルに特化した魔力であり、魔導士向けの属性だ。魔法の構築・発動速度が早く、かつ通常の魔力よりも高威力の強化がしやすいとされる。中にはスキルレベル2の『特化魔術系統スキル』を扱えるものがいる。魔術系統スキルの、ある属性の強度を更に特化させて、絶大な威力を発揮することができる。

 続いてカイルが手を置く。水晶は『緑色』に変わる。

「おい!ヒーラーだぞ!」

 カイルの魔力色が緑と判明した瞬間、周囲の冒険者の視線が変わった。緑色はスキルレベル2の治癒魔術系統スキルと支援系統スキルに特化しており、ヒーラー役として回復や支援系の魔法に優れた力で活躍する。生傷が絶えない冒険者達にとって、ヒーラー役は必ずパーティーに入れるのが鉄則。しかし、治癒魔術を扱える者は少ないため、ヒーラーとしての価値が極めて高く、どのパーティーも確保したい人材である。一般的に緑色の魔力を持つ者は少なく、ヒーラーとしての価値が極めて高い。どの冒険者も興味深そうにカイルを見つめている。

 そして、俺の番が来た。

 俺は深く息を吸い、静かに水晶へと手を置いた。

(……俺の魔力色は、きっと青色だろうな…)

 テイマースキルがある俺は、魔物との意志疎通に長けた青色の魔力色であるはずだ。

(だが、テイマースキルなんて持っていても、役に立たないのだろうな…)

 俺のなかにある、トラウマが呼び起こされる。その直後、水晶が色を帯びる。

「……………………………?」

 水晶が『透明色』に染まった。水晶自体が半透明であるが、それよりも遥かに澄み渡った、一切の濁り無き透明色。見る者を釘付けにしてしまうほど、美しく透き通っている。

 ギルド内が、静寂に包まれた。誰もが息を呑み、水晶を見つめる。

「……………透明?」

 誰かが呟いた言葉が、ギルド内に響き渡る。俺も一瞬、何が起こったのか分からなかった。見間違いかと思ったが、水晶は確かに透明色に染まっている。

「透明……? そんな魔力色、聞いたことがねぇぞ……」

「何だ…?誰か知ってるか?」

「あれはただの水晶の色だろ?」

「いや、水晶の色はあんなに透き通ってなかったぞ?」

 冒険者たちがざわつく。

 俺はただ、黙って唖然としたまま水晶を見つめていた。

(どういうことだ……? 俺は青色じゃないのか?)

 俺が今まで読んだ文献や訓練学校の授業で得た知識の中では、

赤色…身体強化系統スキルに特化。

緑色…支援系統・治癒魔術系統スキルに特化。

紫色…魔術系統スキルに特化。

青色…精神系統スキルに特化。

黄色…精霊系統スキルに特化。

黒色…隠密系統スキルに特化。

白色…神聖系統スキルに特化。

 透明色など存在しないはずだ。水晶の不具合か?不安と疑念が、胸を締め付ける。

「セナさん、少しお待ちいただけますか?」

お姉さんが困惑しながら言った。

「この魔力色について、当ギルド支部では把握できておりません。水晶の不具合も考えられるため、後日改めて再測定を実施させていただけますか?」

「……分かりました」

 「ありがとうございます。また、この件について、当ギルドマスターへ報告をさせていただきます。場合によっては、ギルドマスターが面談を希望することも考えられますので、予めご了承ください」

 何が起こっているのか分からないまま、俺の冒険者登録は中止となった。俺の冒険者としての旅は、順風満帆なものではなさそうだ。


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