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山で作るちょっとした料理

作者: 砂上楼閣
掲載日:2025/01/26

「よし、やるか」


俺はボックスから取り出した調理器具を並べて一人呟いた。


ここは電波もろくに届かない山の中。


と言ってもある程度拓かれてるし、少し下れば道も舗装されてるくらいの場所だ。


野生動物もたまに鹿が来る程度。


熊は……たぶん、いない。


猪は出るらしいが。


仕事でよく来る現場の一つで、電波がないのを除けば割と自由にできるいい場所だった。


トイレは近くに仮設のものがあるし、水はポリタンクに汲んで来てる。


拓かれていて近くには燃えるものがないから、カセットコンロで料理するのは問題ない。


光源がほとんどないから日が落ちると、運が良ければ満点の星空も望める。


曇っててもまぁ遠くに街の光が見えて、それなりに綺麗だ。


資材置き場の横にある仮眠用のプレハブ小屋からも離れてるし、ちょっとしたキャンプ気分を味わえる。


……さすがにキャンプ場じゃないから焚き火とかはダメだけどな。


俺は地面を足裏で軽く慣らして平らにして、折りたたみ式の椅子を展開して置く。


目の前に置いたボックスがテーブル代わりだ。


その上にガスコンロを置き、ガス管をセットして点火した。


今日は風がないから段ボールとかで風除けを作らなくても良さそうだ。


娯楽も少ない山の中で、唯一と言っていい楽しみ。


それが俺にとっての料理の時間。


山では娯楽は用意したものしかない。


2、3日程度ならどうとでもなる。


けれどその期間が半月ともなると空いた時間は適当に駄弁るか、寝るかしかやることがなくなる。


電波が無ければ動画でもダウンロードしていくしか携帯の使い道もない。


本は嵩張るからあんまり持っていけない。


結局数日もすればやることもなくなる。


自然と料理をするようになった。


少しでも美味しいものを食べるために、簡単レシピなんかも事前に調べて、日持ちする物は事前に買っておく。


アウトドア飯ってほどじゃない。


最初はお湯を沸かしてカップ麺とか、フリーズドライの味噌汁を作るとこから始まった。


そこにちょっと具材を足したり、調味料を加えたり。


段々とチャーハンや鍋、アヒージョなんかを作ってみたり。


そういうのでいいんだよ、そういうので。


ほんの一手間。


数分でできる簡単料理。


それだけで満足感が段違いだ。


さて、今回作るもの。


シンプルレシピの中でも特に簡単なものの一つ。


餅だ。




カセットコンロに点火し、フライパンを置く。


今回は1人分だけ作れればいいから、コンパクトなフライパン。


しっかりフライパンを熱したら油を少しだけ入れる。


ごま油かオリーブオイルかは気分で。


別に好みの油でいいし、餅だし無くたっていい。


はりつかないよう注意はいるが。


油が変われば風味は思いの外変わるからな。


匂いは大事だ。


作ってる時も、食べる時も。


視覚の次に嗅覚が刺激される。


美味そうな匂いがすれば自然と腹も減るし、食べる時により美味くなる。


油をフライパンの表面に薄く広げ、そこに角切りの餅を3個。


まぁ食べる分だけ。


ただ焼くんじゃなくて、表面だけ揚げる。


ーーージュウゥゥゥ…


餅が、というか米の焼ける匂いって個人的に好きなんだよな。


表面に軽く焦げ目がついたらひっくり返す。


中まで熱が通るまで何度か繰り返し、そこで表面に何滴か醤油を垂らしてみる。


ーーージュウゥゥゥ!


餅の表面で醤油が焼ける音、そして匂い。


……最高だ。


カセットコンロの火を消して、餅は余熱に当てておく。


紙皿を取り出してその上に海苔をおいた。


このままでも十分だろう。


焼いた餅に海苔を巻いて、醤油をつけて食べるだけで普通に美味い。


が、今回はそこに一手間、というか一つ加える。


何かって?


今回は……スライスチーズを用意してみた。


海苔の上に、スライスチーズを置く。


そのままだと海苔をはみ出るので、半分にちぎって並べてやると海苔の大きさに丁度いいくらいだ。


海苔にスライスチーズを、そしてその上に焼きたての(揚げたての)餅を乗せて巻いていく。


少し待てば海苔とお餅の間に挟まれたチーズが、餅の熱で柔らかくなって少し溶け出した。


……エクセレント!


すでに醤油の香りで唾液が込み上げてる。


皿を持ち、完成した餅を口に運ぶ。


その味だが…


……美味い!


まぁ想像は超えて来ないが、ただ焼いた餅を食べるより数段美味い。


ロケーションも加わって、満足感もある。


これでまた明日も頑張れそうだ。


山で作るちょっとした簡単料理。


人によっては凝る人もいるだろうが、俺にはこれくらいがちょうどいい。


何事もほどほど。


自分に合う程度にぼちぼちと、だ。


興味があれば、是非とも作って食べてみてほしい。


ちょっとした活力になれは幸いだ。

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― 新着の感想 ―
非常に美味しそうでした。 山と餅、あまり縁がなさそうな組み合わせに見えてしまうのですが、 こういった組み合わせもあるのだな、と感じました。
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