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「アイドルになりたい、だって?真面目な夢はないのか。」
そう、先生に叱られた。
「俺の真面目な未来です!アイドルになって、たくさんの人に笑顔になってもらいたい。たくさんの人に未来を届けたいんです!」
俺がいうと先生が机を叩き
「あのなぁ、アイドルになりたくったって無理なものは無理だろう?アイドルになって稼げると思うのか?そもそもお前を見つけてくれなければお前はもう終わりだろう。なにも、届けられないままだろ。そんなのお前の望んでいるものか?無難な人生を生きろ。運だけで生きようとするな。人生、運だけでうまくいく人なんていない。」
といった。確かに正論だ。
でも、俺は運だけで生きていくなんて思っていない。
これまで、勉強とやりたいことをうまく両立してやってきて、寝る間も惜しんで努力した。
それを、否定された俺は必死に声を上げた。
「俺、運だけで生きていけるなんて思ってないです。そもそも、アイドルを運でできる仕事だとも思ってないです。アイドルは裏では、必死に努力してるんです。俺は、合格してます、アイドルの審査。それは、勉強でも学年30位に入って、でも必死にダンス教室も発声も、しゃべりも、練習した結果なんです。決して、運だけじゃないと思います。」
「、、。まぁお前がそれだけ努力しているなら、その道を行けばいい。ただ、その審査がもし落ちたら俺が親身になって入れる高校なんかを進めてやる。頑張れよ、アイドルの原石。」
今思えば、中学の先生は優しかったと思う。
俺に厳しいことを言ったけど、実際それは正論で、俺はアイドルになれない可能性の方が高かったし、いくら努力したって世の中うまくいかないことなんてたくさんある。
それでも、がむしゃらに頑張る俺を先生は応援してくれた。
どうしても、アイドル、歌い手だけは諦められなかった。
だれになんと言われようと、絶対。
中卒になろうが関係ない。
莉都のために頑張ろうと決めて、誰かを支えたいという未来になった。
「ゆーた!2次審査のお知らせだってよ。会場は、、、ユメミライ事務所、だって。めんせつー!」
莉都が騒ぐ。
「ゆーたが歌い手になったらさ、一番のリスナーになるから!絶対に見つけてね!」
俺が歌い手になること前提で話す莉都は嬉しそうで、悩み無し!って顔で笑っていた。
「こんにちは!りつです!」
「アイドルになりたい理由は?」
「えーと。誰かを笑顔にしたくて、ですかね。元々は好きな子を笑顔にしたくて、そのうちに歌い手さんたちに励まされて、俺もこうなりたいって思って、、、たくさんの人に笑顔になって欲しいって思ってるんです。」
初の面接は緊張しなかった。
第一審査の書類審査の合否が届いてから1ヶ月。ようやく面接の日付が来た。
明るく、元気を届けたいから、面接なんかで緊張してどうする!
そう、気持ちを奮い立たせて。
「なるほど、、、。じゃあ、自分がアイドルになったらどんなキャラで売りますか、りつさん。」
「元気に、明るく。自分のドジなところもいかして天然?キャラみたいな、、、」
結局、面接はそれだけで終わったのだけれど。「なんでも前向きに、ですね。じゃあ、この紙を、、、。これで面接は終了です。元気で明るいところはりつさんのいいところだと思います。頑張ってくださいね。」
そのもらった紙と言葉は、なぜかこれから明るいことが待っている気がした。
もらった紙は第三審査についてだった。
どうやら面接の中で良いな、と思った子には候補として配っているものらしい。
つまり、少し希望が持てるということだ。
嬉しいかったけど、第三審査ということはもしかしたら一緒に活動するかもしれないメンバーもいるかもしれないから、そこでなるべく交友関係を作りたかった。