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いつからか、本気で莉都を意識するようになった。
一緒にいると気恥ずかしくて、でも幸せで。
矛盾ばっかの気持ちに悩んだ。
それでも莉都を支えるために、歌い手に、アイドルになりたいっていう気持ちだけは揺らがなかった。
告白するまでは。
「莉都、俺、莉都のことが好きだ。」
そう伝えようと決心したのは、バレンタインデーにチョコをもらったから。
ホワイトデーのときに告白するってちょっと変な感じがしたけれど、莉都にちゃんと想いを伝えたかった。
でも
「ごめん、ゆーた。ゆーたとはずっと幼馴染だし、、、私、今、歌い手さんにしか興味がなくて、、、。」
と言われた。
突き放されたような感覚。
眩暈がして、突然明るく進んでいたはずの道が真っ暗に閉ざされてしまった。
俺は必死に頑張っていた歌い手を、諦めた方がいいのか。
莉都のために頑張っていた俺の未来を一気に失ったような感覚だった。
そんな時一通の手紙が届いた。
それは、3ヶ月前に出した審査結果。
一次審査、通過の知らせだった。
その時はもうどん底に突き落とされた気分で、莉都無しでどうやって歌い手を目指すのかわからなくなっていた。
自分のことなのに、自分のことがわからない。
歌い手になろうと決めたのに、あんなにたくさん頑張ったのに、もう何もやりたくない無力感。
莉都に突き放された絶望感。
全てがうまくいかない日々で、救ってくれたのは、ずっと聴いていた歌だった。
聴いている時だけ、莉都との日々を思い出して、少し幸せにしてくれた。
莉都と笑う帰り道。
嬉しそうに歓迎してくれた合唱部。
厳しく、でも楽しく指導してくれたダンス教室の先生。
そして、一番そばで応援してくれた莉都の「頑張って。」
全てを思い出して、思い出に浸った時、俺がここまで来るまでにたくさんの人に支えてもらっていたことを知った。
一次審査を通過したなら、たくさん支えてもらったんだから、俺もその成果を出したい。
何より、たくさんの人を笑顔にしたかった。