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第3話「いつか晴れたら」

 朝のホームルームが終わった後に俺は担任の里浜さとはまに呼び出された。


「七瀬、お前が呼び出された理由は分かってるよな?」


 先程の翔莉の口調よりは優しく思えるが、裏には強い憤りを感じた。


「僕が3年の女子生徒を襲ったというデマ情報に関してですか?」

「はぁ…」


 そう言うと里浜は大きなため息をついた。


「お前なぁ、こんだけ情報も出回ってんだ。デマ情報なわけあるか」

「でも襲われた女子からの証言は得てないらしいじゃないですか」

「証人もいる訳だしそろそろ諦めろ」

「その人たちがホントのことを言っている証拠はあるんですか?」

「だから、動画があるって」


 呆れた様子の里浜は「もう言い訳はいいから俺の話を聞け」と言った。


「その件に関してな、校長先生と教頭先生と俺と親御さんと七瀬で話すことが放課後あるからすぐ帰るなよ」


 それだけだ戻っていいぞ、と言った里浜にぶつけたい気持ちを胸の内に留めてその場を後にした。



♢♢♢♢♢♢♢



 結局あの後はクラスメイトからの罵倒の言葉と壊されなくなる俺の私物とで色々大変だったが幼なじみ全員に嫌われた時のショックよりはましだった。


 正直このままいけば退学になるだろうなと思っている。


 どうせこの後もそういった類の話だろうなとは検討はつけていた。


 でも今回に関しては俺は完全に無罪。


 退学になってでもいいからあの子がまた襲われるような事態だけは避けたい。


 ああゆう輩はバレなければ同じことを何度もする。


 それだけは絶対に阻止しなければ。


 そう思い意を決して俺は生徒指導室の重い扉を開いた。


「失礼します…」

「ここに座りなさい」


 校長は俺の父さんが座っていたブラウン色のソファーの隣の空いてる部分を指さした。


 俺がそのソファーに姿勢よく腰掛けると早速話を始めた。


「まず、ここに保護者様をお呼びしたのは他でもない先程お話したことです」


 校長のこの口ぶりからすると事前に伝えることは伝えていたんだろうなと分かる。


「その件について、単刀直入に言いますと学校側からは渚沙くんを無期停学処分とします」


 その言葉に俺は驚いた。


 てっきり退学でもさせるのかと思っていたが、学校側も少しは温情があったらしい。


 でも無期停学というのはいわゆる学歴に傷をつけないために退学ではなく自主退学しろという遠回しの学校からのメッセージということになる。


 その言葉に父さんではなく俺が応じた。


「分かりました。ですが、これだけ言わせてください。俺を悪者に仕立てあげた奴らはまた同じことをやります。どうかそれから生徒たちを守ってあげてください」


 言葉一つ一つに思いを込めて言った。


「はぁ、この期に及んでまだそんなことを言うのか君は…」


 どう思われようが関係ない、それだけは絶対に避けたかった。


「どうかそんなことと言わず生徒たちを守ってください。第一、教師とはまだ未熟な子供を守るためにあるものでしょう?だから、お願いします……」


 頭を下げて他の生徒たちの安寧を心から願った。


「あなたに言われなくともやりますよ、そのくらい」


 顔を上げてみると気味の悪いものを見るかのような眼差しで俺を見る校長がいた。


 そんな俺と校長たちを見守る父さんには申し訳ないことをしたなと思う。


 冤罪が晴れれば俺も……


 やるせない気持ちを心の中に抱えながら校長たちとの話は進んで行った—————



♢♢♢♢♢♢♢♢



 あの後父さんは仕事に戻り俺は1人帰路についていた。


「はぁ、明日からは停学生活かぁ」


 朝とは一変してねずみ色が覆った空を見つめながら独り言つ。


「冤罪…晴れるかなぁ」


 そう呟き俺は大きなため息をついた。



 












 そんな俺の後ろには1つの小さな影があった。


「え、あれって……渚沙…?でも、停学ってどういうこと……?」

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