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【番外編】公爵令息クリストファー様の憂鬱6

父によって粛々と留学の手続きが進む中、クリストファーはアルフォンスを見に行った。

騎士学校も夏休みだ。

居残っている生徒はいて、鍛錬に励んでいる。

クリストファーは訓練場で、ひときわ鮮やかな剣を使う少年をみた。

いや、もう青年と言っていい。半年の間に彼はまた身長が伸びた。

相手は誰なのだろうか。アルフォンスよりも大きな身体をもつ大人のようで腕も悪くない。

しかし、アルフォンスと比べると格段に落ちた。

クリストファーは剣の腕はさほどでもないが、剣術は習っているし、優れた腕を持つ護衛たちも身近にいる。技量は見て取ることが出来た。

ふいにアルフォンスがこちらを見て手を振った。

「やあ。ひさしぶりだね」

お茶でも飲まないかと誘われて、テラスに場を移す。

冷えた果実水が美味しい。

「宰相が来たので、君も来るかと思った」

「何故ですか」

「自分が聞き損ねたところをフォローさせるようだから。そうやって君を鍛えているのかな」

それは領地に訪ねて行った際に、クリストファーが訪ねて行ったことを言っているようだ。

確かにあの時は父の指示だったが、今回は自発的な意志だ。

「あなたのせいで、私は留学に出されそうです」

説明するとアルフォンスはむせるほど笑った。

「面白いね。学内で動かすならもっと適任がいるだろうに」

フィリップと同世代にそんな人間がいただろうか。騎士団長の息子が仲良くしていたが、素直な性格で不向きにも見える。

「誰です?」

「エミリア嬢さ。フィリップとおない年だし、魔法学園に行くのだろう?」

思いつかなかった。父も思いつかなかったから、クリストファーに頼むことにしたのだろう。エミリアにそんな間者のようなことが出来るわけがない。

「無理でしょう。あなたはエミリアを知らないから」

「人の可能性は無限だよ」

アルフォンスは言う。

どこまで本気かはクリストファーにはわからなかった。

「僕も、ある時期まで、今のようじゃなくて。まあ、あまりものを考えていなかったかな」

「意外です」

王太子は頭がいい、神童だ、と子供のころから言われていたような気がするが、そういう知識の話ではないという。

「言い訳をするなら、両親も乳母も侍女も、周囲がみな同じことを言うので、それを鵜呑みにしていたんだな」

子供というのはそういうものではないのだろうか。

「でも、リリーナに会って、そうでもない価値観を得た。重大な気づきだね」

何か思い出したようで、言い方は優しかった。

「だからまあ、君には申し訳ないけど、リリーナとクラスメイトになるには、3年後に入学する必要があるんだよ」

別にフィリップに対抗するつもりではないという。

「なんなら、魔法学園にいる間はおとなしくしていようと思う、生徒会長にもならない」

「何故」

そこまでするのか。

魔法学園の生徒会長というのは1年に一人しかなれない。

主席卒業と並ぶ誉だ。

それを投げ捨ててもいいという。

「リリーナと親しくなるのが優先だからね」

「親しく」

「いやあ、だって。彼女の心をつかまないとならないからね」

「王太子ともあろうお方がそのような」

クリストファーは呆れた。リリーナという少女がどのような女性かはわからないが、わざわざ学年を遅らせてまで

接近する必要があるとも思えない。

アルフォンスが肩をすくめた。

「女神の御使いだよ?そんな肩書だけで寄ってくるご令嬢たちと一緒に出来ないよ」

「そうなのですか?」

「いいところを見せないとね」

アルフォンスは本気で言っている。クリストファーはようやく理解した。王太子殿下とあろうものが、なんということだ。

くだらない。

女性を得るためだというのか。

そんなことの為に、自分は留学に追いやられなければならないのか。

「同級生でなくてもいいのでは。先輩のほうがいいところを見せられますよ」

悔しかったので憎まれ口をたたいた。

せめて学年さえズレてくれれば。

アルフォンスとフィリップとクリストファーで同じクラスで机を並べるという惨劇は避けられる。

この提案は、アルフォンスに検討の余地を残したようだ。

「確かにそうかもね」

考え込む。

「学校生活のアドバイスとかテストの前年の問題とか、先輩のほうがポイントが稼げるかも」

クリストファーはうんざりした。運命の乙女じゃなかったのか。テストの過去問でポイントを稼ぐとかみみっちくないか。王太子が。

イライラして足を組み替える。自分がそのような上品ではない仕草をしてしまったこともクリストファーを嫌な気持ちにさせる。

「ねえ。クリス」

「なんですか」

「僕が譲歩してフィリップと同学年になるのを止めたら、君は何をしてくれる?」

「は?」

言葉を失う。

「だって。譲歩だろう。ならば報酬があってしかるべきではないかな」

王太子とも思えない図々しい言い分にクリストファーは返す言葉もなかった。

「まあ、宰相に何かしてもらってもいいけど」

アルフォンスは堂々と言った。これが仕えるべき国王になるのかと思うと、クリストファーは複雑な気持ちにかられる。

フィリップのほうが御しやすいだけマシではないのか。

結論は出ない。

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