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46 3年生夏 王道ルートへ?2

ところで。よく考えたら。

フィリップの実力を上げたいのであれば、守る対象が私でなくてもいいのじゃなかろうか。

私が運命を変えてしまったエミリアは傲慢なところがかけらもない、心優しい女性である。

そして、なにくれとなく幼馴染のフィリップを気遣っている。

なら、エミリアに心を開いててもよくないか?

「本当は、優しい人なんですよ」

前に私がフィリップの悪口を言っていた時に、エミリアは寂しそうに微笑んだ。

なんかまたエミリアにきついことを言っていたので私が怒っていたら、当のエミリアはそうでもなかった。

「わたくしに厳しく見えるのは、わたくしの立場を慮ってくださっているのです」

「ええと、それはどういう?」

「わたくしが正式な婚約者にならないようにですわ」

「なればいいじゃない」

むしろ、適齢期の公爵令嬢がいて、何故に婚約者じゃないのか。

ゲームでは婚約者だったのに。

そこではたと気付く。ゲームとの違いに。

ゲームのエミリアは性格のキツいしっかりした女性だった。

足を引っ張ろうとする他派閥の令嬢など、自分ではねのけることが出来るような。

しかし、目の前のエミリアには無理そうだ。

そういうこともあって、フィリップがエミリアが他の御令嬢から攻撃されないように守っているのだろうか。

ええ。なに、そのいい話。

ちょっとそれは意外だった。

やっぱり、フィリップは『女性を守りたい』タイプなのかもしれない。

それならそれで、おまえが実力をつけてエミリアへの攻撃を防げとか言っては駄目なのだな。

しかし、良いことだ。

やはりフィリップには可愛いエミリアを守ってもらおう。

私も妹のようなエミリアから、好きな人を奪いたくないし、奪いたくなるほどの男でもない。


魔法学園にはちょこちょこと校外学習がある。

湖水地方ほど遠くに行くのは1回だが、あれは修学旅行的なイベントに近い。

この世界は魔法を使うのでそこまで機械が発達しておらず、現代日本より自然に寄り添う暮らしをしているのだ。

そのため、魔石などを発掘するような探査能力がとても必要とされる。

王都のすぐ近くの森あたりで、薬草や事前に隠されたヒントを探すことが多い。

ゲームの初期の初期にやって、フィリップと同じ班になって、魔物に襲われて仲間とはぐれて迷子になったりもした。

本当に、よく迷子になるヒロインだ。

しかし、それでフィリップは既視感を感じ、「君は星祭りの時に出会った運命の乙女」となるのだ。

それだけで、好感度がとても上がる。

やはり、このイベントをこなしてないのがよくなかったのかもしれない。

でも、現実は上手く行かないというか、そうそう都合よく同じ班になったりしないのだよ。

王子様には実習班もそれなりのメンツがあてがわれるのだ。

何回かやったが、一回も同じ班にはなってない。

そして3年生になった今まで、なんの危機もなく終わった。

王子が通うような学校の実習なので、本来トラブルが起こるほうが大問題だ。

ただ、今回は親しくなるだけなので、取り巻きのいないところで話すだけでいい。

「なので先生、フィリップ殿下と同じ班にしてください」

校外学習は管轄としては魔法の授業だのだ。つまり、キャンベリック先生が采配を振るうのである。

「なにが、なので、だ」

「私の野望のために、フィリップ殿下とお近づきにならねばならないのです」

先生は知っている。

私が世界を救うために活動していることを。

そこまで信じてもないのだろうが、先生の研究である封印の魔法陣の解析と目標が一致するので

半信半疑ながら手を貸してくれているといったところか。

「先生だけが頼りです」

先生は露骨に嫌そうだが、とりあえず押すしかない。

「それ、グレーデンは知っているのか。君が殿下に取り入る気なのを」

痛いところをつかれた。先生は私よりもアルの判断力を重視している。

アルは…反対するかな。

基本的に危険でなければ、やりたいようにやらせてくれるんだけど。

でも王室だし、不敬だとか言われて揉めたら困るかも。

「心配されちゃうと思うので、終わってから話します」

「する前に相談しろ。グレーデンの言う通りだな」

「アル、何か言ってましたか?」

「君はしっかりしてるようで危なっかしい、と」

失礼だなあ。

しかし、先生はきちんと取り計らってくれたようで、くじ引きという文句のつけようがない偶然で、私とフィリップは同じ班になった。


メンツは私とフィリップと男爵家の男子と平民の男子の4人だ。

平民の男子はトーマスと割と仲のいいハンスで、学業はなかなかで剣も魔法もそこそこのバランスのいいタイプだ。

貴族が多い魔法学園だけに、そこに入れる平民は能力が高く、ハンスもそのうちの1人といえる。

今日の校外学習は班ごとに先生の撒いた魔法の手がかりを集めることだ。

難しい隠され方をしているものを見つけるとポイントが高い。

男爵家の男子とハンスが率先して動く。身分があまり高くないので、平民寄りの立ち位置の子だなと気づく。

私はダラダラ後ろを歩くフィリップを気にしながら歩いた。

2人とも、フィリップとどう接していいかわからないのか、スルー気味すぎるので。

ふと目が合う。

美しい空のようなブルーの瞳。前髪がさらりと風になびいた。

うーん、本当に見た目だけはとてもとてもストライクだよ。

「おまえもあいつらと行けばいいだろう」

口を開くと全く可愛げがないが。

「クラウスはかなりの使い手だから、取り込んでみたらどうだ?」

そうだった。あの男爵家の生徒はクラウスと言った。

フィリップが名前を憶えていることに驚いた。

貴族からしたら社交の常識ではあるが、男爵家ならば交流もほぼないはずなのに。

「平民を集めて何をしたいかは知らんが、有能な奴が好きみたいだからな」

嫌味っぽく言われる。

「才能のある友人と交流するのは楽しいものですよ」

「そうか。それだけでもなさそうに思うが」

鼻で笑われて、ちょっとドキっとする。

「意見を通すには数を集めるのも必要だからな」

それはある意味正しい。

剣術のこととか、生徒会のこととか、彼らの為にもなるけど、私の味方を増やさないと、いざという時に困る。

でも、おまえが何もしないからじゃないかという不満もある。

上に立つ人が公正公平で適切な運営をしていれば、やらなくてもいいことも多かった。

ぐるぐる考え込んで、ぼんやりしていた。

スッとフィリップが私の手を引くようにして、自分の後ろに庇った。

魔物が斬られたとわかったのは、その後だ。

自分がものすごく魔物に遭遇するのを忘れていた。

大きくはないが、そう小さいわけでもない、鳥に似た魔物がスッパリと2つに分かれて霧散した。

身体がほとんど残らなかったということは魔力が強いことを意味している。

「え、すごい」

切り口の鮮やかさに目を見張った。

フィリップはつまらなさそうに歩き出す。

「え、今の、すごくない?」

慌てて後を追ったらガン無視された。

正直、すごくびっくりした。

ゲームでは、総合力は高いけど、剣術自体はエドワードのほうが上だったし、現実でもそうだった。

エドワードはここ一年でぐんと上達したけど、今のフィリップの剣はそれに勝るとも劣らない。

でも、そんな評判を聞いたことが無い。

「なんで、授業でやらないの」

更に追いすがる。

クラスメイト達は、彼のことを才能に欠け努力しない人間だと思っている。

剣だけでも、これだけ使えたら、周囲の目が変わるだろうに。

「そんなに使えるなら、みんなに披露すればいいじゃない。なんで隠すの」

「うるさい」

ぴしゃっと言われた。

だが、よく考えてみたら、これだけ話すのは初めてと言っていいくらいかもしれない。

フィリップはいつも取り巻きに囲まれてて、直接話す機会がなかったからだ。

「おまえだって隠しているだろう。剣も魔法も桁違いなんだよな?」

「エドに聞いたの?」

成績は常に学年一位をキープしているし、私がものすごく剣を使えるのもみんな知っているけど

魔法がどのくらいの腕前かというのは知られていない。

授業では披露する機会がないからだ。

知っているのはごく親しい身内で、そのなかでフィリップと親交があるのは限られている。

「あいつが言うかよ」

言わなかったんだ。

「前に、ロブの怪我を治しただろう」

そういえば、そんなこともあったね。

「町医者に連れて行ったという話だったが、数日で戻ってきて、おかしいと思った。

 王宮でもお目にかかれないような回復魔法を使ったのが誰か、調べないわけがない」

あの時は、ロブ本人とトーマスと、ハンスと、掃除を代わってくれたアンナがいたっけ。

「クラスの奴はだんまりだったんで、おまえの領地まで人を行かせた」

それは。

地元では誰も黙っていないね。

「事情があるんだよね」

あまり目立って歴史を大きく変えてはいけないような事情が。

「事情なら俺にもある」

だから詮索するなということか。

すーるーけーどー。


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