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28 2年生秋 悪役令嬢と一緒2

エミリアはゲームと全く違うタイプだ。

ゲームでは強い魔力を鼻にかけて、とても偉そうに振る舞っていた。

わかりやすく傲慢で押し出しが強く、クラス内でもリーダーシップを発揮していたようにも思う。

でも、目の前の彼女は、深窓の令嬢らしく、上品でとても大人しく、自己主張をしない。

エミリアは、ソフィアが刺繍を通じて私と友達になったと思っている。

アルに頼んでクリス様に紹介してもらったけど、間違いではない。

「リリーナ様とお近づきになれて嬉しいです」

お茶の時間の後、このまま談話室でお話しませんかと誘うと、エミリアはのこのこついてきた。

本当は敵同士なのに。

もっとも、学校の談話室で、横に侍女が控えているので、攻撃の一つもできやしない。

エミリアは嫋やかに微笑んだ。

ああ、美しい。

さすがクリス様の妹だ。

ゲームでは意地悪そうな表情が多かったのだが、そうやって微笑んでいるととても美しい。

煙るようなまなざし、スッキリ通った鼻筋にぷるぷるのくちびる。白磁の肌が薄桃色に上気して、とても可愛らしい。

すこし、幼い気もする。

まあ、16歳だ。

ゲームの中では補正がかかっても、リアルだと子供に見えてもしょうがないのかも。

「本当によろしいのですか。私と仲良くするといろいろ言われるかも」

「でも、わたくしが仲良くしたいと思ったので」

何か言い淀んで、もじもじする。

実はエミリアはこれが多い。

とても、もじもじする。

可愛らしいと言えば可愛いが、ウザいといえばウザい。

私は中身がおばちゃんなので、気にならないし、可愛いなあくらいに思うが、同世代の女子は嫌かもしれない。

「今日は誘っていただいてよかったです。前々から、ご相談したいことがあって」

もじもじ。

「エドワードのことなんですけど」

とても言いにくそうに切り出した。

「フィリップ殿下とですね、最近、関係が良くなくて」

ハイ、主に私のせいですね。

エドワードはお役目として父親に言われているらしく、いまだにフィリップの取り巻きとして警護をしている。

でも、ハッキリ言って浮いている。

みっともなく負けて王子のメンツを潰したからでも、私に忠誠を誓ったからでもなく、彼が変わったからだ。

余暇は1人で剣の練習をしたり、勉強をしたりしているようだ。

王子たちには内緒で、私たちと練習したりもする。

フィリップがどこまで知っているかはわからないが、面白くはないだろう。


「実は、殿下とエドワードとわたくしは、幼少のころからの、その、付き合いがあって、いわゆる幼馴染なのです」

知ってる。ゲームの知識だからではなく、このクラスの人、みんな知ってる。

「子供の頃、殿下は、お兄様と比べられて、ちょっと、そのう、いじけたところがございました」

それはゲームで知ってる。

フィリップには優秀な兄がいたんだけど、病弱だった彼は子供の頃に死んでしまう。

それまでのんびり子供らしく過ごしていたのに、急に王太子の座が回ってきて、必死で勉強や剣に努力するフィリップ。

頑張りのおかげで素晴らしい実力を身に着けても、ふとしたときに、教師たちから「兄上が生きていれば」との言葉を聞くことがある。

いくら努力しても足りている気がしない。

完璧な王子と讃えられながら、コンプレックスと虚しさを抱えるフィリップ。

そんな中、ずっと必死に努力していたのに、平民出で下町育ちの少女に成績で負けて絶望を感じる。

しかし、己より優っていた少女から「貴方は貴方。人と比べたりしないで」と、伝えられ

その優しさにコロっといく王子。

あれ、なんか言葉が悪いな。

ヒロインの優しさに救いを感じ、愛をはぐくむようになる、が正解か。


私がゲームを思い出している間にも、エミリアはぽつぽつと話し続けていたらしい。

「エドとわたくしは、言うならば、その、殿下の派閥で、ずっと仲良くしていただいていたのです」

そうかなあ。あんまり仲良さそうには見えてないけど。

フィリップはエミリアに対しても乱暴というか、きつく当たるところがある。

幼馴染だと慣れてて気にならないのかもしれないけど、私にやったら殴ってしまいそうだよ。

「殿下は、ああ見えて気が小さくて。引っ込み思案なところがあって。えっと、わたくしもなんですけど。実はエドも人見知りで、似たもの同士だったというか」

それなのに、仲違いすることになって悲しく思っている、ということのようだ。

「でも、エドワードは今のほうがちゃんとしてると思う」

そこは強く主張したい。

「御身分があって、そのうちお父上の跡を継ぐなら、もっと頑張らないと」

その努力してるエドワードが嫌だと言うなら、王子と袂を分かつことになってもしょうがないのではないだろうか。

っていうか、フィリップも、もっと努力しろよ。王子なんだから。

そう思ったのが伝わったようだ。

「殿下も殿下なりに、そのう、頑張っておられるのですが、というか…」

上手い表現が見つからなかったのだろう。

エミリアがうつむく。

「わたくしも、お側近くに使えるものとして、何か、そのう、上手く申し上げられればよいのですが、わたくしもあまり特技が無くて」

しゅん、とする。

特技が無いと言うが、エミリアは魔法が得意ではなかっただろうか。

魔力はすごいという実績を持ったうえで威張っていたので。

実際、最初は強いエミリアに対抗する為、ヒロインや王子たちが魔法の練習をする。

もしかして、エミリアが強くないから、王子、ダラダラしてるのかしら。

どこまで遡って修正しないといけないの。

「エミリア様は暖かく見守って差し上げていればいいのではないでしょうか。殿下もいずれわかってくださいます」

心にもないことを言った。

ごめん、どうしていいかわからない。


一晩寝て考えたんだけども。

エミリアを鍛えてみるのはどうだろう。

とても難易度の高いコースなので、やったことはないが、頑張ればエミリアもパーティーのメンバーに選べるのだ。

ガールズラブ的な要素はないけど、好感度は普通にあげられる。

ただ、それはひっかけだ。

フィリップと仲良くなるとエミリアの好感度が下がり、エミリアと仲良くなるとフィリップの好感度が下がるシステムなのだ。

うっかりエミリアとも仲良く~とやっていると、フィリップからプロポーズされなくなってしまう。

なので、ゲーム的にはどっちかを選ばないといけなくて、結果、私はエミリアを攻略したことはないんだけど。

そもそも、それほどやりこんでいないことは棚に上げておく。

今のところ、私とフィリップはものすごく仲が悪いし、それならエミリアをメンバーに入れるのも悪くはない。だって、今のところトーマスとエドワードしか当てがない。

パーティーメンバーの枠が埋まらないよ。

そして、昨日の話から、エミリアが強くなったら、フィリップも訓練するのではないかという気がする。

小さい頃、3人で、切磋琢磨していたんじゃないだろうか。

3人組の幼馴染で、女の子だけ強かったら、そりゃあ残りの男の子たちも練習するよね。

私の見たところ、エミリアが一番ゲームと離れている。

エミリアを修正することで、全体に補正が効いたりしないかしら。

可愛い可愛いエミリア。

ふわふわしたお姫様で、本当にゲームの中というかフィクションの中だけにいそうな女の子。

意地悪で傲慢な嫌われ者にする気はないけど、もうちょっとしっかりしててもいい気がするし。

いや、しっかりはしてるか。

じっくり話してみてわかった。

もじもじして、まわりくどいから誤解されてるだけで、話す内容はちゃんとしていた。

現状や問題点もよく見えている。

フィリップに至らない点があるのもわかっていたから、盲目的に恋しているというわけでもないのだろう。きちんと自分の立場を理解して、将来の国王とそれを支える自分というものを認識している。

悪役令嬢にはならなくていいけど、もっと積極的になってもいいはずだ。

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