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19 1年生秋 友達を作ろう。今更?3

お茶会は粛々と行われた。

ナタリーとお友達はテーブルクロスの刺繍に注目していた。

薄いグリーンに葉っぱのもので初夏らしい色合いだ。縁にいくほど葉が大きく鮮やかな仕上がりだ。

「すごく素敵」

「さわやかですわね」

季節感を重視することと、客の興味を引くアイテムを用意することは重要だ。

高価ではなくてもセンスの良いものを用意することって、金に物を言わせるより難しくないかしら。

準備が終わるとソフィア様も席について、お茶会が始まった。

ナタリーとお友達がソフィア様のファンだったのもあって、和やかに進んだ。

アンナは刺繍はそこそこ自分で練習していたが、影響されてやる気になったらしい。ナタリーとも打ち解けている。

途中でトーマスが流行のお菓子を差し入れしてくれた。アンナとナタリーとお友達の目の色が変わるのを見た。

イケメンの威力はすごい。

「だって、クレイン商会はとても繁盛しておりますのよ。平民でも、あれだけお金持ちなら玉の輿みたいなものです」

アンナがため息をついた。

「平民だから持参金もそんなに要求されないでしょうしね」

ナタリーのお友達は次女で、さらに妹もいるそうだ。

姉妹が多いと、それだけ持参金も必要だ。

なんだか、トーマス、とてもモテモテだ。

「学園はそういうところでもあるのですよ。恋人同士なら持参金の額も融通が利きますから」

ソフィア様がそっと教えてくれる。

なるほど、確かに社交は必要なのだ。


いろいろお世話になったお礼に、アルとクリス様に刺繍入りのハンカチをプレゼントすることにした。

上級生だとなかなか会う機会が無いので、たまたま見つけたアルに、クリス様の分も託ける。

クリス様のソフィア様直伝の美しく見える幾何学模様にしたが、アルにはウサギの模様にした。

耳が難しい。

難易度高めなのだ。

そこをちょっと見てほしい。

「ああ、可愛いね。よく出来ているよ」

アルがニコニコと褒めてくれた。

しかし、可愛いのはソフィア様の図面を起こす腕が優れているので、私としては刺してるほうを褒めてほしい。

特に耳を。

が、気付いてくれなかったので、自分から言った。

「耳が上手に出来てるでしょう」

ポイントを全部解説した。

自慢になってしまって、どうも謙虚さに欠ける。

「本当に上手に出来てるね」

言ってしまったので、当然だけど、アルは大層褒めてくれた。

「ちょっと意外だった」

「何が?上手に出来たのが?」

「自分で習ったのがだよ」

「習わないと出来ないじゃない」

「他の子は侍女にやらせてるんだから、君もそうするかと思ったんだよね。座ってちまちまするの苦手だろう」

そうだけど。

「もうちょっと実利を重んじるタイプかとも思っていたので」

それもそうだけど。

「アルが言ったんじゃない。王妃様になるなら、刺繍が必要って」

「そうだけど。習うのを勧めたのは、他の貴族女性が人にやらせていると知らなかったからだよ」

偉い人がそうしているなら、私もそうするかと思ったそうだ。

甘いな。私はきちんと後々のことも考えるタイプなの。

今は私に好意的なクリス様だけど、私がフィリップ殿下と仲良くなって、彼の最愛の妹のエミリアから婚約者を奪うことになっても、まだソフィア様を貸してくれるとは思わない。

自分で何とかしないといけないの。

しかし、それは言うことは出来ないので。

「刺繍は来年以降もあります。状況が変わったら困るようなことはしないんです」

「状況が変わったらというのは」

そこ訊くかな。

「学年が違うから、再来年になったらクリス様は先に卒業しちゃうでしょう」

「エミリア嬢はいるだろう。侍女もそのままじゃないのか」

だーかーらー。その時に、フィリップとエミリアが破局していたら、3年生の終りに提出する卒業制作は確実に作ってはもらえない。

「私とエミリア様は同じクラスなので、何かで対立することもあるかもしれません」

「なるほど」

アルは複雑な顔で考え込んだ。

「エミリアは人と対立するような性格ではないと思うが」

おとなしくて引っ込み思案。

でも、私はゲームの中の苛烈なエミリアを知っている。

「人は見かけによりませんよ。中に炎が燃えてるかもしれないじゃないですか」

「そうかなあ」

「そうですとも」

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