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18 1年生秋 友達を作ろう。今更?2

そうして、教えを請いながら刺繍を続けた。

季節は秋に移り、私は腕を上げ、あとは学年の終わりに制作物を提出すればいいだけところまでこぎつけた。

さすがに年度の制作物なので、ハンカチなどでは通用しない。

私はテーブルクロスを作ることにした。

正方形のもので対称的に作れば、難易度のわりに見栄えが良くなるので。

意外と誤魔化しが効くのだというのはソフィア様のアドバイスだ。

「ちょっとずつ頑張れば大丈夫ですよ」

ソフィア様はにっこりとほほ笑んだ。

よく考えたら、裁縫は出来るのだから、刺繍が無理とか思ったのは、先入観のせいだった。

授業でもガンガン刺した。

ソフィア様の図案は簡単にできるところと難しいところのバランスが良くて、刺してて楽しい。

人に教えるのも上手なのだろう。

「それ、少し見せてもらってもいいかしら」

刺繍の授業中に声をかけられた。

綺麗な赤毛をくるりと結い上げている。ドレスや小物も手が込んでいて、お洒落な人だ。

話したことのない人だった。

淑女教育を通じて友達は増えたが、平民出身の私の友達は

似たもの同士というか、管理を目指しような子ばかりなので。

こういう、割といいおうちのお嬢さんで、婚約者も決まってます、みたいなご令嬢はなかなか。

でも、そういう人とも、カリキュラムを通じてお話が出来るのが、学校のよいところだ。

「私はナタリー・グレンセン。2組なの」

グレンセンというと、王都の西に大きな領地を持つ伯爵家か。

うちも国境沿いだけど、国の西側なので、行き来する時に街道を通る。

金持ち度には差があるが、爵位的には同じランクなので、気は楽だ。

ナタリーはファッションに興味があって刺繍やレース編みが好きらしい。

作りかけにの刺繍を渡すと穴が開きそうなほどチェックされた。

「見た時に、知っている方の図案に似ているなと思って。あなたのオリジナルなの?」

どうだろうか。

私のオリジナルではないのは当然として、ソフィア様が考案したものかは聞いていなかった。

刺繍は図案の本などもたくさん出ているので、そこから取ったものかもしれない。

「教本であればどの本か教えてほしくて」

「人からもらったものなので」

ソフィア様に確認しないとわからない。

「今度会ったら聞いておきましょうか」

「是非、お願いしたいわ」

そこまではと遠慮するかなと思ったのに、意外と押しが強い。

「すごく好きな方の作品に似ているの。前は刺繍の展覧会に出品していらしたりしてたのだけど

 最近は全然御見掛けしなくて」

ナタリーは王都寄りに領地があることもあって、学校に行きながらも

社交の場にも出ているらしかった。

私なんて、刺繍の展覧会なるものがあること自体を今、知った。

「ソフィア様なら詳しいかしら…」

なんとなくだけど、顔も広そうな気がする。

うっかり呟いたら、がつっと腕をつかまれた。痛い。

お嬢様って、もっと細腕じゃないんかい。

「ソフィア様って、まさかソフィア・フィルニー様とお知り合いなの」

「ええ、まあ」

「えーなんでー」

「ご紹介をいただきまして」

「私もお会いしたいです」

うるうると見上げられたけど、ここでソフィア様を売るわけにはいかない。

意外に近くにいるから、ナタリーが自分で見かけたら止めはしないけど。


「ということがあったんです。ソフィア様のファンなんですって」

「あらまあ。光栄ですこと」

一応、ナタリーのことを教えたら、ソフィア様は会ってもいいと言う。

「でも、私はエミリア様の侍女なので、勝手に出かけるわけにもいかないのですよね」

それに、生徒同士は平等という建前だが、それぞれが連れている使用人は使用人なのだ。

パパッと紹介するわけにもいかないという。

なんという面倒な。

「リリーナ様がお茶会を開かれたらどうでしょう」

はい?

「クリストファー様からリリーナ様のお手伝いについては許可をいただいておりますの。

お茶会の手伝いをするのも範囲内ではないかと」

それで、お茶会の客であるナタリーと知己を得るということらしい。

「リリーナ様のお手伝いは、エミリア様のお世話のシフト外のところで、クリストファー様からは報酬をいただいておりますけど

たまには私にも楽しい時間をいただいてもいいのかなって」

お茶会が楽しいですか。

私は行ってニコニコするのもちょっと大変なので、開催するなんて想像の範囲外ですが。

「リリーナ様は社交のホステスとしてのお仕事も学ばれたほうがよいと思います」

ソフィア様がピシリと言った。

「普通の貴族令嬢は、母親が行うのを手伝いながら身につけるものですけど、

 失礼ながら、全く知識がないように見受けられるので」

その通りだけど。

でも、将来、役に立つことがあるのかな?と思って、我ながら驚いた。

そういえば、あまりリアリティがなかったけど、私、王妃になるんだった。

出来ないと駄目かも。

いやしかし。世界を救った後でもよくないかな。

どうだろうか。


困った時はアルに相談だ。

お茶会の主催をするかどうかについて聞いてみたい。

アルには淑女教育の知識がなかったので、女性の世界に詳しそうなクリス様も連れてくるように言った。

クリス様、いつもいつもすみません。

ここで意見が分かれた。

アルはそんな無理してまでやらなくてもいい派。

クリス様は是非ともやるべき派。

「君達は女性の社交の重要性を認識していないね」

珍しくクリス様が上から物を言った。

「紳士が社交場で仕事を進めるように、ご婦人もお茶会で物事を進めるのだよ」

クリス様の家はお母様が早くに亡くなっていて、お父様の妹にあたる叔母様がいろいろ気遣ってくれてはいるが、どうにも不十分らしい。

「それで何度か足をすくわれそうになったこともあるくらいだ」

忌々しそうに顔を歪める。何か本当に悔しいことがあったようだ。

「なので、結婚するなら、そういうことが上手な女性を選ばないとね」

それはアルに向けての言葉だったが、ご自分の奥様もそういうことが出来る人を選びたいようだ。

機会があればエミリアにもやらせたいらしい。

「エミリアがもっと積極的であればいいのだが」

大きなため息。

引っ込み思案なエミリアは、自分で主催はもちろん、あまり出席もされない。

宰相閣下であるお父上がエミリアに甘くて、無理にやらせないのが不満なようで、関係ない愚痴も聞かされた。

「エミリア様なら、本人が出来なくても執事とか侍女がやってくれるのでは?」

刺繍を侍女に任せて自分でしなくてもいいのなら、お茶会なども仕事でやってくれる人がいるはずだ。

「やらないのと出来ないのは違うよ。大きい夜会だと動くお金も大きい。

自分で理解しておかないと、使用人が経費を誤魔化したり不正の温床になるんだよ」

そういうことは女主人の仕事なのだそうだ。

もちろん、やらずに使用人にさせている貴族女性もいるが、クリス様はそれには反対だそうだ。

「エミーの侍女は厳選されている、ソフィアはしっかりした女性だよ。

 良い教師に教わる機会は逃してはいけない」

そこまで言われては、私もアルも仰せの通りと頭を下げるしかない。

クリス様は人数を増やすようにも進言してきた。

私はナタリーとソフィア様でこじんまりやればいいと思っていたけど、

練習する気があるなら、もう少しいたほうがいいそうだ。

ナタリーの友達と私も友達を加えて、あまり知己のない者同士を紹介するところまでやれと言われた。

学校にはお茶会をするようなサロンがあって、申請すると生徒も借りられて、交流をはかるのは推奨されているらしい。

ここも社交の場であるのだ。

しかし、クリス様まで鬼コーチみたいになってるのは何故?

ソフィア様も同意見だったので、ナタリーに友達を誘ってもらって私はアンナに声をかけることにした。

男爵家の令嬢で官吏を目指しているというアンナはさっぱりしていて話が合う。

淑女っぽくないところも同じだ。

なので、あれからちょっと親しくしているのだ。

ナタリーの友達2人とあわせて6人になった。

資金は私の虎の子の貯金から出した。

レベルアップの為に倒した魔物の皮とか素材を貯めていたのだ。

これまでは必要なかったが、社交に乗り出すとなるとお金がかかるかもしれない。

アルにもダンスのドレスを買うように言われていたし。

貴族社会、金がかかるな。

お茶会用の備品はトーマスの実家にお願いした。

ソフィア様についてきてもらって良かった。何を買ったらいいのかわからないところだったから。

トーマスもいてくれたので、ぼったくられもしなかったようだし。

親しくても相場は確認しろとは言われたけど。

招待状の書き方も習った。当然のように『字が汚い』との指摘を受けた。

代筆屋が流行るくらい、字の綺麗さにも需要がある。

ソフィア様は刺繍を専門に学ぶ前に、そちらの道に進むのも考えたのだそうだ。

刺繍は材料費などの元手が必要なので、代筆もいいと。

しかし、代筆は女性だけでなく男性もやるので、競争が激しい。それで刺繍にしようと判断したのだそうだ

アンナは準備もちょっと手伝ってくれていたので、その時のソフィア様の話を聞いて感心していた。

そのあと字の練習を始めていたのは偉いと思う。

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