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10 ついにきた魔法学園3

ゲーム開始したけど、説明が多いのでしばらくは毎日更新かも。

嬉しい気分は、そのあと吹き飛んだ。

具体的に言えば、フィリップ殿下たちが入場して来てから。

遅れてきた彼らは、人々の注目を集めながら一番前の席に案内された。

それを見て思い出したのだ。

私もあそこに居なければならなかった、と。


ゲームで道に迷ったリリーナは王子たちと出会う。

そのまま王子たちに送ってもらって、リリーナも他の生徒たちの注目を浴びながら入場するのだ。

その目立った行動で、エミリアを始めとする高位貴族の令嬢たちに嫌がらせをされたりするのだ。

かばってくれる王子。盛り上がる三角関係。だったはず!

盛り上がらない!

出鼻をくじかれた形になったがいつまでも落ち込んではいられない。

頑張ってリカバリーしなくては。

私の席はゲームで見た通り、教室の一番前列の左端だ。

その右側がフィリップ殿下が来るはず。

そうしたら「さっきはどうも」みたいに話しかけてみよう。。

あんな痴話喧嘩っぽい争いに巻き込まれて、さっきのことを蒸し返すのが得策かどうかはわからないけど。

どうしよっかな。

迷っていると、隣に人がやってきた。

そして、それは、殿下ではなかった。

トーマス・クレイン。明るい鳶色の髪に茶色の瞳、大手商会の三男坊である彼は、まごうことなき攻略対象だ。

ものすごく観察された。

「女の子とは思わなかったな」

小声で呟く。これは独り言なの?教えてトーマス。

「僕はトーマス・クレイン。君は?」

「リリーナ・ヴェルデガン」

「もしかしてヴェルデガン伯爵の」

おや、貴族にも詳しいね。

「伯爵とご子息2人は有名だけど、お嬢様もいらしたとは存じ上げなくて」

そしていきなり敬語に変わる。

何だい、兄は有名なのか。

と思ったけど、それはゲームじゃなく知っている。

リリーナの下の兄は騎士団でも有名な剣の名手なのだ。

それと同じくらい、跡継ぎの息子を亡くし、平民として育った甥っ子を跡継ぎに据えたヴェルデガン前伯爵のことも有名だ。

「気を遣わないで。兄のことを知ってるなら、うちが元は平民なのも知ってるでしょ」

「まあね。うちの家業としては、お嬢様のほうが付き合いがあってしかるべきなんだけど、あんまり王都にはいなかったよね」

トーマスが言うには貴族は社交シーズンには王都に出てきて、それ以外の時期は領地ですごすものらしい。

王都にいる間に、奥様方はドレスや装飾品を購入する。

クレイン商会はそれらの品物を提供するのだ。

でも、そういえば、私だけじゃなく、父も母も王都に帰っていなかった。

社交は前の伯爵である大伯父様が担ってくださっている。平民育ちの父が苦手にしているのもあるのだろう。

大伯父様は父に無理をさせる気はないらしく、次期跡取りとなる上の兄を連れて出ているようだ。

「うちは家族そろって平民だったから、領地経営を学ぶのに忙しくて」

あと、魔物退治と。

こんなに出るのかというくらい魔物が出た。

しかしどうも、退治するまでもないような小物もいたらしい。

レベルアップに活用させていただきましたとも。


「まあ、せっかく王都に出てきたんならいろいろ買ってよ」

「寮にいるのに何を買うのよ」

寮は食事も出るし、高位貴族の部屋で無ければ洗面所とかも共用だ。学問に必要なものは支給される。

制服と部屋着だから衣服もあまり必要ない。

「君だけ?王都の家にお母様とか侍女がいたりしないの」

「いないねえ」

普通はいるものなのだろうか。

聞くと、貴族の家ではなんだかんだ王都に親戚とかがいて、1人暮らしの子供のフォローをしてくれるものらしい。

そういう親戚のいない家は、母親が王都の家に滞在していたりもするという。

「そっか。残念だな。結婚前の淑女がいて、決まった出入り商人がついてない家は貴重なのに」

「淑女」

「淑女だろうよ。伯爵家のお嬢様なんだから」

うひゃあ。

田舎で誰も淑女扱いされなかったので気が付かなかったよ。

そうか、淑女か。

モテモテ人生の為に、淑女らしく振る舞うことも必要か。だって王妃になるんだものね?


教室の後ろ側がドッと沸いた。フィリップとエドワードと数人の取り巻きだ。

トーマスが静かな目で眺めている。なんとも言い難い微妙な表情だ。

「どうかした?」

「いや。殿下の席はあのあたりかと思ってね」

「席が気になるの?」

トーマスが当然のように頷いた。

「近くだったら、親しくなれるかもしれなかったのにな」

ああ。気持ちはわかる。

私もそのつもりだったので。

おそらく、そういう人は多いのだろう。

出遅れてしまったよ。

しかし、フィリップ殿下はメインヒーローなので、今後、素敵なイベントが目白押しだ。

これから挽回することは可能だろう。

それよりも。もっと重要な問題がある。


クラスに魔術師がいない。

攻略対象のうち、商人トーマスの他にも、王子と騎士と魔術師は同じクラスのはずなのに。

それに、クラスにはリリーナと仲良くなってアドバイスをくれる、お助けキャラの女友達もいたはずなのに、それっぽい子がいないような。

メインキャラがいないと本気で困るんだけど、どうしたものか。

ゲームのことは時々思い出すけど、割と、顔を見たらスチルが浮かぶ、みたいな連鎖なので

名前とビジュアルはともかく、家柄なんかはぼんやりしている。

『いない』に比べたら、席が遠いくらいなんでもない。


そうして始まった学園生活で、魔術師の謎は解けないまま。

私は順調にトーマスと仲良くなった。

トーマスは気のいいやつだ。そして、とても博識だ。

私はゲーム設定上の都合で成績をキープしないといけないので、必死に勉強をしているのだが、

トーマスはそれだけじゃなく雑学的なものにもとても詳しいし、なんというか機転が利く。

商売人だけあって、人当たりもとてもいい。

他にも何人か友達はできた。まあ、そうはいってもトーマスの友達だけど。

だって、しょうがないではないか。

成績順に分けられたこのクラスは、フィリップ殿下を筆頭に、割とガチ目に高度な教育を受けた高位貴族のご子息ばかりだし、数少ない女子生徒も公爵令嬢とか侯爵令嬢とかその取り巻きとかだ。

その雲の上のような人たちとは仲良くなれていない。

王子様はどうも平民とはお話をなされないようだ。

私は平民ではないが、そこまで格式が高くない伯爵家で、育ちは悪い。

そこを、席が隣というアドバンテージを活かしてアタックするはずだったのに。

どうしたものかなあ。

今日もフィリップ殿下は取り巻きとともに、教室の後ろのほうで騒いでいらっしゃる。

ゲームの中では、いつも柔和に微笑んでいながら、皆と一定の距離を保っているという孤高の貴公子だったのだが。そのイメージよりは、かなり気さくなお人柄のようだ。ただし貴族に限る。

「あーあ」

ため息をついたのを隣のトーマスに見られてしまった。

「どうしたの。らしくないね」

「いやあ。王子様と仲良くなるにはどうしようかと思ってね」

トーマスとの仲は、冗談めかしてそんな話ができる程度には深まった。

「無理じゃないかな。僕はもう諦めた」

「えええ。トーマスともあろうものが」

「だって、貴族以外は目に入ってないだろう」

「だよねえ」

「よっぽど、おおうって感心させるようなことができればともかく」

感心させることか。

それはやはり、テストイベントか。

木漏れ日が美しい大きな木の下。前期テストの成績が貼り出された掲示板。

1位はヒロインで、2位がフィリップ王子。

掲示板のすぐ横で、フィリップ王子はヒロインを呼び止める。

「なかなかやるね」

涼しい顔をしているものの、王子の内心は穏やかではない。

王子は次期国王としての自らに他者より秀でることを課している。

平民として暮らしていたような少女に後れを取るなど、あっていいことではない。

しかし、そのライバル意識は、一緒に勉強をすることにより、お互い高めあえる関係として進展していくのだ。最終的には恋として。

なので、実は、私はそこまで焦ってもいない。

序盤に親しくなるのはトーマスで合っている。

商人のトーマスと親しくなることで、お金が儲かり、装備が買える。

これは、現実世界では、いい店を紹介してもらうことで実現している。

なので、王子と親しくなるのは試験の後ではないだろうか。

ただ。

そのためには、なんとしてでも1位を取らないといけない。

ゲームの強制力で勝手に1位になったりしないかな、と思うものの、あまり都合のいい世界でないのは、これまでの7年でわかっている。

魔物に襲われたら死亡エンドでGAME OVER(多分)になるように、勉強しないと1位はとれない。

あああ。大変だ。

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