第6話~お約束?~
一通りスキルの使い方がわかってきた頃、気づけばレベルが上がらなくなっていた。
「んん?ねぇ、レベルが上がらなくなったんだけど」
『あぁ、すいません。チュートリアルではレベルアップの上限があるんですよ。安全にレベリングができるからと、何時間もこもってレベル上げをする人が増えまして、対策としてある一定のレベルになると上がらなくなるんです』
「ふーん、なるほどね。まぁいいや」
申し訳なさそうな声で謝られたが、そこまで興味はないので適当に返事をしてステータスを見てみる。
PN:ヴァイオレット
LV:5
職業:弓使い
サブ職業:狩人
10,000エクス
HP(体力):35
MP(魔力):30
STM (スタミナ):45
STR(筋力):30
VIT(耐久力):30
AGI(敏捷):80
DEX(器用):45
TEC(技量):45
LUC(幸運):35
ステータスポイント25
スキル
・鷹の目LV:2
・チャージショットLV:3
・クイックショットLV:3
・立体起動LV:4
・デッドリー・スラッシュLV:2
・パワードLV:2
何分ぐらいこもってたかは分からないけど、レベルは5に、スキルもそれぞれ使いかたがわかってきた。これだけ使えればフィールドに出た瞬間に殺されるなんて事はないと思う。まぁ、トライアンドエラー、当たって砕けろってやつだ。
「お姉さん、私そろそろフィールドに出るね」
『あぁ、もう行っちゃうんですね…。久しぶりの話し相手だったのに、」
悲しい声を出すお姉さん、そういえばチュートリアルを受ける人が少ないって言ってたな。そりゃ、話し相手も少なくなるよね。…………………ちょっと、かわいそうかも。
「お姉さん、…………大丈夫、また来るよ」
『え!!本当ですか!!ありがとうございます!設定からチュートリアルのボタンを押せば、またここに来れますからいつでも来てください!ていうか、1時間ごとに来てください!いや、フィールドに出たらすぐ来てください!!でもやっぱり行かないで!!??』
「キャラ変わりすぎでしょ」
さっきまでの悲壮感は何処へやら、私の同情を返してほしい。
『だってぇ…』
「だってじゃない」
ていうか、お姉さんお姉さん言っていたけど、なんか、やっぱり……
「………犬みたい?」
『何か言いました?』
「ナニモイッテナイヨー。…それじゃあ、私は行くから。またね」
『あ、はい。またいつでも来てくださいね!』
別れの言葉を告げチュートリアルから出る。一度視界が暗転した後、再び目を開けるとそこは街だった。
「おぉ、すごい。本当に知らない街に来たみたい」
街並みは中世のヨーロッパのような感じで、自然とテンションが上がっていた。…ヨーロッパ行ったことないけど。多分こんな感じでしょ。
「さてと、まずは何からするべきかな、」
最初は防具とか装備を整えるべきだろうか?
「とりあえず、ブルークにメッセ送りますか」
『ブルーク、私も始めたよ、HWO。いまチュートリアル終わって最初の街』
『おけ。とりあえずフレンド組んでおきたいからその場を動かないで』
『りょーかーい』
返信が早い、さすがはできる男。ブルークは既に前線でトッププレイヤーとして名を馳せているらしいから、手伝ってもらおうかとも思ったんだけど、そんなの面白くないよね。強い人にキャリーしてもらってもつまらない。ブルークと会ったら一応フレンド登録だけして、その後すぐに解散する予定だ。
ブルークはどこから来るのかと街中を見渡していると、どこからどう見ても私を見て近づいてきている男二人組を見つけた。これは、と思いながらその場を離れようとするが、少し遅かったようだ。
「ねえ君、一人?装備からして、今日始めたばっかでしょ。俺らが攻略手伝ってあげるよ」
と、優しそうなことを言ってるが十中八九ナンパだろう。視線が胸へと向いている。下心が見え見えなんだよなぁ。ていうかこいつ残念そうな顔しやがった!私の胸はそんなに小さくないから!
「遠慮しておきます。これから友人と会う予定がありますので」
こういう時は注意をそらす。ブルークくんにはこの人たちのヘイトを買ってもらうとしよう。
「大丈夫だよー。友達も一緒でいいからさ」
「そうそう。いっぱいいたほうが楽しいでしょ?」
き、効かないだと!?女の子だと思っているのだろうか?
「友達と言っても男の子ですよ?」
「あぁ、そうなの?じゃあ、このまま行っちゃおうよ。そんな奴より俺らの方が上手いって」
「そうだよ、君みたいに可愛い子、俺らとやる方が楽しいでしょ?」
うわぁ、きっつぅ。自分で言うかな。ていうかブルーク、こんな人たちにそんな奴呼ばわりされてるよ。この場にブルークがいたらどうなってたか。よかったね!君たち命拾いしたよ!
それにしても随分自信があるようだけど、隙だらけったらありゃしない。手元にナイフがあったら、首を掻っ切れるのに。いやいや、良くない良くない。すっかりバトロワに脳を犯されてしまっている。ていうかいい加減鬱陶しいな。
「……はやくあっち行ってくれないかな」
「は?」
「あ」
口に出ちゃったよ。まぁいっか、これでどっか行くでしょ。
「下手に出てれば……俺らのこと舐めてるでしょ?これでも、トッププレイヤーなんだけど」
「ふっ、あなたたちがトッププレイヤーとか、レベル低すぎでしょ…。ブルークに騙されたかな」
「………舐めやがって。ガキのくせに、大人を敬えって習わなかったか?」
「ナンパしてくるチャラ男を敬えとは習わなかったかなぁ」
「ッ!!ふざけやがって!!思い知らせてやるよ、大人の怖さ。決闘!!」
男が叫ぶと同時に私と男、それぞれの目の前に青い板のようなウィンドウが現れる。
「デュエル?」
「普通、街中では戦闘は出来ないけどデュエルシステムを使えば出来るんだよ。大口叩いたからには、受けるよね?」
「うぇー、めんどくさい。あー、でも、まぁいっか。対人戦闘も体験しときたかったし」
レジェンドではブルークに負けまくっているからね。このゲームでも負けるわけにはいかない。一刻も早く対人の練習をして追いつかないと。
『デュエルの申請を承認しました』
「さて、やりますか」
「トッププレイヤーの力見せてあげるよ」
「あり?ちょっと待って、2対1?」
「別に1対1とは言ってないよ?」
「汚な!これが大人の怖さ(笑)かぁ。」
まさかの2対1、でも多分大丈夫。けど、どれだけプレイヤースキルがあろうと、レベルの差は埋めようがない。
「ちょっとめんどくさいかな?」
「あー、そんなに怖いなら誰か助っ人入ってあげてもいいけどー?」
と、男が周りを見渡すが入ろうとする人はいなさそうだった。
「なぁ、あいつらって『氷槍のオルス』と『炎剣のケッタ』だよな」
「勝ち目ないって」
「あの子、可愛いけど、強そうには見えないよな」
周りからひそひそと声が聞こえてくるが、この人たち本当にトッププレイヤーらしい。
「ひゃひゃひゃひゃひゃっ!腰抜けばっかだなぁ!まぁそりゃそうか、ここは初心者が集まる『ファステア』だもんなぁ!」
「俺らに勝てる奴なんていねぇよ!」
「ヴァイオレット?何してんの?」
と、まぁ、親の声より聞いた声が聞こえる。
「お、おいあれって」
「え!?マジ!?本物!?」
「きゃあぁぁぁぁ!ブルークさまぁ!!」
「………いや、何してんのはこっちのセリフなんだけど」