異世界転移し記憶喪失のマヨネーズ料理人が現地の料理をアレンジする!!!これさえあれば俺は最強だ!!!!!
目覚めとクリームシチュー
ここは何処だ?俺は、、、。
何故ベットで横になっている。
駄目だ。何も思い出せない。
どうやら誰かの家のようだが。
そこは現代日本とはかけ離れた作りをした部屋だった。RPGゲームに出てきそうな民家の一室。そう、まるで中世ヨーロッパの一部屋のようだ。
コンコン
「どうですか?具合の方は?、、、よかった!目が覚めたんですね!ずっとうなされてたので心配してたの。」
ノックされ開けられたドアから見えたのは少女だった。一見10〜12歳といった所だろう。
髪は金色で三つ編みで束ねてある。
顔は整っており、緑の綺麗な瞳はどこか嬉しそうだ。口にもそれが現れている。
職業は農業なのだろう。服は上下とも緑で長袖のワンピースに体の大部分を占めるエプロンを着用している。靴も厚底で茶色のブーツだ。
「すまないがここは、、、。」
「お母さん〜。起きたよ〜。」
タタタッ。
俺の話も聞かず急いで階段を少女が駆けていく。
次に現れたのは成人した女性だった。確かに親子なのだろう。似ている。あえて違うとすれば髪の束ね方だ。少女とは違い一つに束ね下ろしている。服装も殆ど変わらない。
「目が覚めたかい。あんた森の中で意識を失って倒れてたんだよ。その時通りかかった私の娘があんたをリヤカーでここまで運んできたんだ。娘に感謝しなよ。」
「それはすまなかった。ありがとう、、、えっと、、、。」
「アンよ。私の名前。」
「アン。ありがとう。」
「どういたしまして。とこでお兄ちゃん。お名前は?なんでそんなヘンテコな服着てるの?どこから来たの?何であんな所に倒れてたの?ねぇねぇ教えて。」
「こらっ!アン!今お兄ちゃんは起きたばっがっかりなんだ。もう少し静かにしな!」
「ごめんなさい。」
「いや、いいんだ。どうやら俺も何も思い出せないんだ。何処から来て何故倒れていたか。この服装のことも、名前も思い出せない。覚えているのはただ一つ。俺には大切な妹がいた。その妹を探していたことだけだ。」
「そうかい。大変だったね。まぁ色々大変だろうけど今は暫く休んでいきな。」
そう言って。母とアンは部屋を出た。
部屋にはベット、箪笥、姿見がある。体を起こして姿見の前に立つ。まだ若干のふらつきはあるがこの距離なら問題ない。黒の革靴を履き移動する。
黒髪に冴えない目付き、髪の長さはその目の少し上ぐらい。癖毛もない。身長は具体的は分からないが、先程の女性と比べると頭2つは高いだろう。
服装は上はYシャツ、下は黒のスーツか。左腕には赤いバンダナが巻き付けてある。
ポケットにはスマートフォンと、透明でチューブ状の容器に満たされた黄色い物体。スマートフォンを開こうとするがロックが掛けてあり、画面が表示された。
黒髪が腰まで伸びており、目は凛々しく俺とは似ていない。笑顔でピースをしている。制服を着ているがまだ体に馴染んでいない。
「愛莉、、、。ッッッ!!!」
頭に突如浮かび上がる光景。
「記憶がァァァァ!!!、、、蘇る!!!!!!!!!!」
両親は幼い頃に他界し唯一の肉親。俺の大切な妹、愛莉!
ロック画面には俺と妹の愛莉が並び立っていた。
だがその愛莉は今はいない。何処に?
俺は部活の大会で遅くなった愛莉を迎えに行こうとした。ここまでは思い出した。だがこの格好は?服装から察するに会社から直接迎えに行ったのか?
、、、
「行かなければ。」
衝動に駆り立てられドアから出る。
「愛莉、、、。待ってろ。」
ズルズルと壁に体を引きずらせながら階段を降りるといい匂いが立ち込めていた。
「お兄ちゃん!まだ寝てないと駄目でしょ!」
「大丈夫だ。問題ない。」
「何が問題ないよ!まだ起きたばかりでしょ!フラフラしてるしッッッ!ほら部屋に戻って!今ご飯を持っていくから!」
「この匂い、、、。シチューか?」
「そうよ。今日はお兄ちゃんの為に野菜のシチューを作ったの!私も手伝ったのよ。」
「そうか。それでエプロンを。ありがとう。だが俺は妹を探さなければ。」
「、、、分かったわよ。但し、シチューを食べてからね。そこにテーブルがあるでしょ?そこに座って。」
「分かった。」
木でできた4人がけ用のテーブルに座る。近くの窓からは農村の様な穏やかな景色が見える。
「あんた。本当に大丈夫かい?」
シチューをお盆に乗せ、気遣うアンの母と横にアンが立っている。
「大丈夫だ。問題ない。」
「まぁ、あたしらが何言っても聞かそうな顔だしね。頑張りな。はい、これ。」
コトンッ。
これは、、、。肉、じゃがいも、玉ねぎ、人参を牛乳で煮込んだ者だろう。おそらくクリームシチュー。とても美味しそうだ。
今の体にはありがたい。母とアンの優しさが伝わってくる。
「いただきます。」
スプーンで掬い、口に入れる。
「これは!」
口の中に広がる牛乳のコク、野菜の甘み、そして肉の旨味、それらを纏める塩と胡椒。
「ッッッ!!!」
頭に突如浮かび上がる光景。
「記憶がァァァァ!!!、、、蘇る!!!!!!!!!!」
ダンッ!
「どうしたんだい。急に立って!」
「ちょっと失礼。」
、、、
台所に向かい中を見るが冷蔵庫や炊飯器、電子レンジといったものは無く、あるのは洗い場と釜、調理台、食器棚と器具収納庫、そして材料を入れてあるだろう籠のみだった。
「どういうことだ?だが今は!」
目の前には鍋で作られたシチューが湯気を立たせて置いてある。
「あんた。シチューをどうするつもりだい?」
「まぁ見てろ!」
母親とアンは男の姿を見て呆気に取られた。
何故なら、、、。
ギュッ
男が左腕のバンダナを頭に締め付け、包丁を握った。
タタタッ
そう!!!男がいきなり男が料理をし始めたのだ!!!
「まずはポケットに入れたこれだ!!!」
チューブ状の容器に入った黄金色の物体を取り出す。
「そ、それは、、、!!!!!!!!!」
ガクガクガクッ
突如男が取り出した物を見て驚愕に震える母親!!!!!
ぐいぐいっ
「お母さん〜。あれ何〜???」
アンは純粋な瞳で母親を見て、裾を引っ張り尋ねる。
「この世界に伝わりし古の文献にはこう書かれていた、、、。
下の者、稀有な格好をする者なり。透き通った素材の容器に黄金の物体を入れ持つ。その物体、この世の全てとは異なり、様々な料理に入れ人々に幸福をもたらすなり、、、。」
「お母さん???言ってる事が分からないよ〜!!!!!」
「そう!!!!あの人こそ!!!あの物体こそ!!!その文献に書かれしもの!!!!!間違いないッッッ!!!!!」
「お母さんっ!、、、。怖いよ、、、。」
アンにはこの場の空気が何も理解できなかった、、、。
「あんた!最初に包丁を握って何かを切っていたが何をしてたんだい?」
「ふっ、、、。あれは何も切ってはいない。」
含んだ言い方をする男!!!更に驚愕する母親!!!クエスチョンマークが頭に浮かんでいるアン!!!
「ッッッ!!!!!常人のあたし達にはとても理解できない!!!それ程までにかの者というのは見えている"もの“が違うのかいっ!!!」
「いいから黙って最後まで見てろ!!!」
「、、、私たちはなんて人を助けちまったんだい、、、。」
立ち尽くし光景を眺めるしか母親には選択肢がなかった、、、。
「これを最後に鍋に入れかき混ぜる、、、。これで完成だ。食べてみな!」
ドンっ!
項垂れた母親にスープの入った容器とスプーンを手渡す。呆然と垂れたままだ。
「お母さん???食べないなら私が食べるねっ!」
パクッ
少女は一部始終を見ていたのにも関わらず躊躇なく食べた。
そう!!!この少女実は、、、もの凄くお腹が空いていたのである!!!
朝から働き詰めでお腹はペコペコ。そこに出された食事。
先程のやりとりは純粋だからこそっ!!!意図も介せず口に運べるのだッッッ!!!!!
ガクガクガクッ
「!!!!!」
声にもならない声を出しアンの体が上下に震え出した。
「アンッッッ!!!」
母親は我に返りアンを見る。だが遅かった。
アンの体が消えたのである!!!
「アンッッッ!?!?!?」
辺りを見回すが居ない。
いやっ、、、居た!!!!天井に突き刺さらんばかりの跳躍したアンの姿!!!腰を抜かしそうになるが娘の為にも踏ん張る。
「あんた!!!何をしたんだいッッッ!!!」
「それはアンに聞いてみな。」
クイッ
親指で差した方にはアンが元の場所に着地していた。
「アンッッッ!!!いったいどうしたんだい!?!?!?」
「あのねっお母さん、、、。このスープ、、、。今までのどのスープ、、、。
ううん!!!どんな料理よりもすごく美味しいんだよ!!!体がビックリしちゃってつい飛んじゃった。
これ凄く美味しいよ。お兄ちゃん。」
「そうだろう。、、、あんたもどうだい?」
抵抗はあった、、、。
娘のあの反応尋常ではない。通常の人間ではあり得ないほど高く飛び、それをなんでもないかの様に美味しいと勧めてきた。
何よりこの母親、、、。
そうっ!!!アンと同様とてもお腹が空いていたのである!!!!!
今までの男の数々の奇行により母親の体力、精神は疲弊しきっている。そこに目の前の食事!!!
娘の跳躍のことなどどうでもいいほどに思考は低下しておりスプーンを手に取る。
「あっ、、、。あッッッ、、、。」
パクッ!!!
「んっ!はわッ!?はわわわわわッ!!!」
ガクガクガクッ!!!!!
口に入れた途端、母親の体は声を上げながら痙攣し出し、泡を噴いて倒れた。
ブクブクブクッ、、、
「お母さんっ!!!」
アンは母親に駆け寄り顔を見た。
「ハッ!!!お母さんの顔が、、、顔が、、、今までに見たことのない顔をしてるっ!!!でもなんだかとても、、、幸せそうな顔。」
「アン。その顔はな、恍惚の笑みっていう表情だ。」
男が母親に話しかける。
「どうだ?美味いだろう?まぁその顔見るに聞くまでも無いが。」
母親がゆっくりと体を起こしながら返答した。
「あんた、、、。美味しいってもんじゃないよ、、、これ、、、。その黄金色の物は一体全体何なんだい???」
「さぁな。俺にもよくわからない。言える事はこれはそういう物だったということだ。それを思い出しただけさ。、、、ところでおかわりもあるが、、、どうする?」
にやっ
『食べるっ!!!』
『食べますっ!!!』
パクパクパクッ、、、。
バンダナを解き腕に巻き直す。そして2人の食べる姿を見て男は静かに微笑えんだ。
、、、
「やっぱり本当に行くのかい。寂しくなるねぇ。」
「あぁ。手掛かりはあったしな。」
「あの噂かい?まぁ確かに似てるといえば似てるけど。」
「そうだ。村人が隣の村で見たと言っていた人物。奇妙な格好をした若い女性。この辺ではあまり見ない長髪で黒髪の人物。間違いない。愛莉だ。」
「そうだね。そうであると願ってるよ。達者でやっていくんだよ。」
「お兄ちゃん。また来てね!ご飯すっっっ!!!!ごく美味しかったよ〜!!!」
2人の声を背に手を振る。
俺はどうやら料理人だった様だ。そしてこの世界は今ままでとは違う世界。異世界だ。妹の手掛かりを掴んだ俺はポケットの中の容器を握りしめ、次の村へ歩き出す。
手掛かりを頼りに隣の村まで来た俺。無事妹と再会するが妹も全ての記憶を無くしていた。
村人たちが俺を励ますためにしてくれたのは村の名物カレーライスという料理を食べさせる事だった。
パクッ
「ッッッ!!!」
頭に突如浮かび上がる光景。
「記憶がァァァァ!!!、、、蘇る!!!」
カレーライスという料理を思い出した俺!そしてアレンジをし、村の人々を驚愕させる。妹の記憶は戻るのか?
次回
再会とカレーライス