顔は整ってる
腕がらみからの脇固め、ひっくり返しての袈裟固めからの横四方固。そこからさらに縦四方固まで移行した辺りで、冒険者ギルドの受付嬢達や、端で見ていた女冒険者連中の目が、キラキラからギラギラに変わって来たので、フィニッシュにする事にする。
何か、身体の接触部分が多い程、ねっとりとした視線が注がれるんで、なるべく接触面の小さい技で決めよう。そうしよう。
良い感じに疲労困憊、息も絶え絶えな感じに成った青年を再びひっくり返して、足を絡めて両腕を掴んでゴロリと転がる。両脚両肩を極めつつ仰向けに宙に反り返らせて吊り天井に。
かなり隙の大きな技にもかかわらず、抗う気力も無い程に疲弊したらしく、されるが儘の状態。
てか、体力無さ過ぎだろうが、コイツ。
打撃技の精度の割には、寝技は出来んし、持久力も低い。典型的、才能に胡座をかいてた天才型。
こん畜生! 俺がどれだけ鍛錬重ねたと思ってやがる!!
こう言った天才型って、自分がさしたる努力もしないで出来るからって、他人が努力してるのを見て『センスがないなぁ』とかって暴言吐きやがるから、弱者の身に成って貰いたい。
おまいらこそ、出来ない人間の気持ちを慮る想像力が足らんのや!
おっと、一寸、前世の暗黒面が。
「グォ、や、止め、グゥ」
「俺は! 君が気絶するまでっ! この技を止めない!!」
「!! グギャアァァァァァ!!」
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結局ね、俺が宣言した後、すぐに気絶しやがったよ……何だっけ、青年の名前……アレゴロウ?
まぁ、良いや。取り敢えずは兵舎の地下牢に放り込んでおいた。なんでか、その場に居た受付嬢だとか女冒険者が、やけに艶々してたけどさ。後、拝まんで欲しいわ。マジで。
『【失笑】アレキサンドライトだったかと』
……あ、青年の名前の事か。そんなんだったっけ? いやいやいや、アレキサンドリアだったじゃんよ。思い出したわ。何でシレッと間違った情報流すかね。って言うかアレキサンドライトは宝石だ。
『【嘆息】アレの名前など、マイマスターが覚えている価値なんて有りませんと進言します』
覚えてる価値かぁ。うん、まぁ、確かに覚えていたとしても、何の得にもならなさそうではある。 てか、聖武器達って、才能があるやつに対しては結構寛容だったと思ったが、アレに対しては随分と辛辣だが、どうした?
『【憤懣】実力を見抜けない程度の分際で、マイマスターを侮辱するなんて、破滅させても良いと思っています』
「あ、はい」
どうやら、ファティマの御眼鏡には適わなかったっぽいな。てか、どんどんファティマの思想が過激に成ってる様な気がするんじゃが?
『【嘆息】能力の高い無能くらい、厄介なものは有りませんから。敵にしても味方にしても』
まぁ、その理屈は分からんでもないけどさ。




